›
›
09月

2026年9月28日 和田憲一郎のビリビリ!とくる話

習近平氏の訪米とBYD董事長・王伝福氏不同行を考える

習近平氏の訪米に先立ち、CATL、シャオミなど中国大手企業の経営者が同行するのではと言われていた。その中で注目されていたのが、BYD董事長の王伝福氏である。仮に同行が実現すれば、中国EVメーカーの米国市場への本格参入を示唆する重要なシグナルとされていた。それだけに、同行が見送られたことは残念である。

これまでトランプ氏は、中国自動車メーカーが米国内に工場を建設し、米国人労働者を雇用するのであれば、市場参入を認める可能性を示唆していた。それに反して、米国自動車業界や一部議員からは強い反発の声が上がっていた。

筆者が推測するに、2つの理由から、BYD王伝福氏の同行を見送ったのではと考える。

一つ目として、今回の訪米は国賓訪問という外交上極めて重要な機会であり、双方とも関係改善や友好醸成を優先し、不必要な摩擦を避けようとした可能性がある。あくまで両国間の政治的アジェンダの中で会談を収めようとしたのではないだろうか。

二つ目として、仮に王伝福氏が同行した場合、「BYDが工場建設か!」と話題が沸騰し、その内容が会談の中心となる可能性がある。しかし、過度な注目を集めれば、米国内の反発を招き、結果として首脳会談そのものが混乱するリスクもあった。そうした事態を回避するための判断だったとも考えられる。

さらに、米国中間選挙に向けて、ディールを欲するトランプ氏に対して、あえて加点させる必要はないと判断したのかもしれない。(加点はパンダ2頭で十分だと)

筆者はこれまで、トランプ氏が大統領就任当初から掲げてきた「米国内の雇用創出」という政策を踏まえると、中国自動車メーカーによるBEVの米国現地生産を容認する可能性は十分にあると、セミナーなどで指摘してきた。いわゆる中国版テスラの逆バージョンである。今回、王伝福氏の同行は実現しなかったものの、中国メーカーによる米国生産構想そのものが消えたわけではないだろう。

むしろ、トランプ政権の残る任期の中で、中国自動車メーカーによる米国生産案が再び議論の俎上に載る可能性は十分にある。EV産業を巡る米中関係の変化は、今後も引き続き注視していきたい。