織り込み済みのメーカーとサプライズのメーカー
欧州委員会は7月14日、ガソリン車など内燃機関の新車販売について、2035年に禁止する包括案を公表した。
これに対して驚かれた方も多いと思う。また欧州自動車工業会は「特定の技術を禁止することは合理的でない」と表明し反発している。
しかし、筆者から見ると、欧州委員会は、法案提出権を持つ実質の行政執行機関であり、このような重要法案に対して、事前に水面下で欧州連合理事会や、各国の市民代表である欧州議会に対して根回しをし、ほぼ法案通過の見込みがついたこと、また包括案の準備が整ったことから、公表に踏み切ったとみることが妥当ではないだろうか。
つまり欧州委員会は数か月前から事前交渉していたのであり、欧州自動車工業会はガソリン車業界に配慮して反発のポーズをみせているものの、VWなど大手自動車メーカーに表立った動きはない。本案は既に織り込み済みなのである。
ひるがえって、日系自動車メーカーはニュースに驚き、戦略の見直しを迫られている。欧州環境規制は、環境への配慮の面と、地域への戦略的な産業振興という面もある。包括案にて規制の前倒し競争は終止符が打たれ、一気にEV化が加速していくと思われる。