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2025年2月25日 和田憲一郎のビリビリ!とくる話

日本の自動車産業は「前門の虎、後門の狼」なのか

日本の自動車産業に著しく閉塞感が漂ってきたように思える。
内燃機関からEVシフトへの移行が遅れており、これを取り戻そうとした大手自動車メーカーの経営統合も破談に終わった。結局、海外勢から立ち遅れていた日本の自動車産業は挽回が難しいのであろうか。

内燃機関車は次第に包囲網が狭められている。世界的な環境規制が厳しくなり、例えば、欧州では、2025年から企業平均燃費(CAFE)規制が94g/kmに強化される。このCAFE規制では、CO2排出量が基準値を1g超過するごとに、販売台数1台当たり95ユーロ(約15,000円)の罰金が課される。どの日系自動車メーカーも、対策に悪戦苦闘している。

また、米国の企業平均燃費基準(CAFE)に関しては、第2次トランプ政権発足と同時に、バイデン政権時代に策定した内容の見直し方針が出された。今後緩和が予想されるが、日系自動車メーカーにとっても厳しいことに変わりはない。

一方、ではEVシフトに対してうまくいっているかと問われれば、OTA、e-Axle、ギガキャストなど、革新的技術を素早く導入できす、米国や中国に差をつけられている。

さらに、自動運転技術に於いても、テスラが提唱した生成AIによるE2E(End to End)では追随できていない。逆に、中国の新興自動車メーカー小鵬汽車(シャオペン)などではE2Eを標準搭載すると表明している。追い打ちをかけるように、中国発の生成AIであるDeepSeekでは、公開後、多くの中国自動車メーカーが搭載を公表した。残念ながら日本勢は生成AIの動きに全くついていけてない。

このように、日本の自動車産業は、前門の虎、環境規制など内燃機関を縮小させる動きに対応できておらず、EVシフトを進めようにも、後門の狼、つまり、中国勢、米国勢が進める新技術に対応できていないのが現状ではないだろうか。

今後どうすべきか。このような閉塞感を感じている時は、脚下照顧の如く、今一度、現状を冷静に見つめなおすことが大切のように思えてならない

2025年1月27日 和田憲一郎のビリビリ!とくる話

孫正義氏は虎の尾を踏んだのか

自動運転車の分野では、生成AIの飛躍的進化により、E2E(End to End)と呼ばれる新技術が誕生している。この技術は、カメラなどのセンサーから得た情報を生成AIが判断し、ステアリング、アクセル、ブレーキなどの出力制御を行うものである。

この分野の先端を行くのがテスラであり、同社は100億ドル(約1.5兆円)の投資を表明している。また、イーロン・マスク氏自身も「xAI(エックスエーアイ)」というAI企業を設立し、自らAIのリーダーであるとの自負を持っている。

しかし、2025年1月21日、ソフトバンク、オープンAI、オラクルのトップがトランプ政権を訪問し、「スターゲート」と名付けた共同事業について、今後4年間で合計5000億ドル(約78兆円)を投入すると公表した。

この案件に対して、マスク氏はスターゲートに対して公然と批判を開始している。例えば、ソフトバンクはそれほど資金を持っていない、またオープンAIのアルトマン氏とは訴訟中であり、元々そりが合わないなどである。

以前に、マスク氏は自身がアスペルガー症候群であることを公表しており、この症状はこだわりが強く、感覚の偏りがあるとされている。このようなことから、マスク氏はファイティングポーズを取り始めたのではないだろうか。

そもそも、スターゲートは事前にマスク氏に相談されていなかったようにも思える。そうなると、第2次トランプ政権にて新設された「政府効率化省(DOGE)」のトップであるマスク氏がどのような対応を取るのか。また、トランプ氏とさえ握っていれば良いと考えた孫正義氏は、虎の尾を踏んでしまったのではないだろうか。

今後のバトルが楽しみである。

2025年12月24日 和田憲一郎のビリビリ!とくる話

三菱自動車は経営統合にどのように参加すべきか

12月23日、ホンダと日産自動車は、持ち株会社の設立を目指して経営統合の協議に入ると発表した。2025年6月までに最終的合意を目指し、持ち株会社を2026年8月に設立して、傘下に両社が入る。また、三菱自動車の合流については2025年1月末を目途に判断するようだ。

では、三菱自動車はどうすれ良いのであろうか。おそらく三菱自動車は、消極的参画と積極的参画の2案を検討するであろう。

消極的参画の場合、2025年1月末の回答として、2年ほどは経営統合の成果を見極めたいと宣言する。そのため、技術提携などは行うものの、三菱自動車の自立が先決なので、当面は自社の経営力向上に集中するという考え方である。

一方、積極的参画の場合は、2025年6月の最終合意に三菱自動車も参画し、2026年8月には上場廃止して、統合会社の傘下に入る案である。

あくまで筆者の個人的な考えであるが、ここまでくると積極的参画のほうが望ましいのではないだろうか。というのは、今後の車種ラインナップを考えるとき、PHEVを考えざるをえないが、2社のみでは成立しない。BEVやPHEVをどう展開するかと考えた時、最初から三菱自動車が入っているほうが、2年後に参画するより望ましい形でまとまるように思われる。

まだまだ不確定で見通せない状況であるが、米国で現地生産工場を持たない三菱自動車にとって、3社のアライアンスを有効活用することで可能性が広がるであろう。経営統合の基本は自立であるが、現時点でどの企業も自立の確証がなく、そのための経営統合であろう。

2024年11月18日 和田憲一郎のビリビリ!とくる話

 イーロン・マスク氏の特異性

米国の次期大統領にトランプ氏が選挙で選ばれたことで、大統領選で支持し、巨額の献金を行ったテスラのイーロン・マスク氏が連日話題になっている。

特に新設の「政府効率化省(DOGE:Department of Government Efficiency)」を率いることになり、多くの政府関係者は戦々恐々としているようだ。

そこで思い出すのが、マスク氏は以前に「アスペルガー症候群」であると告白したことがある。アスペルガー症候群とは、自閉症スペクトラム障害のうち、知的障害および言語障害をともなわない人々をいうようだ。

次のような特徴があるとのこと
・社会的コミュニケーションが困難
・対人関係が困難
・こだわりが強い
・感覚の偏り

特に、ある分野への強いこだわりを示すことが多く、世の中の視点と全く異なる視点を持つことが多いと聞く。確かに、マスク氏はこれまでの一般常識的な視点ではなく、別の視点から物事を見てきたように思われる。

歴史的にはトーマス・エジソンや二コラ・テスラも同様の資質を持っており、異端児と言われながらも、世の中にないものを生み出してきた。

しかし、政権の指導者は、どちらかと言えば、協調性を重視した方が多く、このように特異性を有する方がトップとなるのは珍しいのではないだろうか。

多くの軋轢を生むと思うが、その混沌とした中でどのようなことが生まれるのか、ある意味楽しみにしている。

2024年10月28日 和田憲一郎のビリビリ!とくる話

米国で新エネ車は意外にも堅調!

昨今のニュースでは、「EVシフト減速」の文字が躍ることが多い。例えば欧州にてVW工場閉鎖の話題、米国ではGMやFordによるピックアップトラックEVの投入見直し、トヨタによる2026年EV生産台数を150万台から100万台への見直しなどであろう。

一方では、最近公表された米国の2024年1~9月まの新エネルギー車(BEV+PHEV)新車販売台数は、約117万台、対前年比8.6%増、販売比率は10%に達したとのこと。

あれっと思われるかもしれないが、実態の販売はそれなりに健闘しているともいえる。米国の場合、テスラの販売台数は減速しているかもしれないが、逆にGMのBEV「ブレイザー」やフォード「Fシリーズ」など米国系メーカーなどが伸びているようだ。

まもなく米国大統領選挙を迎えるが、筆者はEVシフトに関してあまり影響を受けないのではないかと考える。

というのは、最も環境規制の厳しい米国カリフォルニア州のZEV規制は、2026年の35%~2035年には100%となるが、ZEV法は州法であり、以前にトランプ大統領の時代も手を出せなかった経緯があることから、ほぼこのまま実施されると思うからである。

このため、どのような大統領になろうとも、大手自動車メーカーはEVシフトの手を緩めるどころか、ますます強化していくように思えてならない。さて、EVシフトに関し、日本では選挙結果により何か変わるのであろうか。

2024年9月26日 和田憲一郎のビリビリ!とくる話

BYDを研究すべし!

BYDの躍進が止まらない。2023年、BYDはBEVとPHEV合計で302万台を販売し、2024年は販売目標360万台に対し、販売好調のため400万台に上方修正している。400万台と言えば、2023年の日産自動車344万台を超え、ホンダ410万台レベルとなる。

振り返ると、2024年2月、BYDは「ガソリン車よりも安い電気自動車(電比油低)」というスローガンを掲げ、新エネルギー車の低価格戦略を発表した。例えば、2024年モデルにてPHEVモデル「秦 PLUS DM-i栄耀エディション」は7万9800元(約165万円)から、BEVモデル「秦 PLUS EV」は10万9800元(約230万円)からという具合である。

これに端を発し、中国にて一気に値下げ競争が激化した。テスラ始め他EVメーカーも、BYDに対抗するには値下げせざるを得ない。その結果、新エネルギー車の販売は、一気に上向きかけている。直近の2024年8月では、新エネルギー車販売110万台、対前年比30%増、新車販売比率は45%にまで高まっている。

筆者は以前にBYDの深セン本社を複数回訪問したことがある。その中で、1度、王伝福董事長と意見交換する機会があった。その時の印象は、夏場であったためか、開襟シャツにて出てきており、偉ぶらず、温和で、我々の質問に対しても丁寧に答えていただき、中国の有名な経営者の一端を垣間見た気がした。

しかし、そこはBYDの創業者である。多くの中国の戦略を参考にしているのではないだろうか。ここからは筆者の推論であるが、「孫子兵法」に次のような名文がある。「勝兵は先ず勝ちて、しかる後に戦いを求め、敗兵は先ず戦いて、しかる後に勝ちを求む」という。つまり、事前に十分準備し、勝利する態勢を整えてから戦う者が勝利を収め、戦いを始めてから慌てて勝機をつかもうとする者は敗北に追いやられるという意味である。

おそらく、王伝福氏は、今回の「電比油低」という価格破壊の革命的戦略を実施するに当たり、相当な準備をしてきたのではないだろうか。その上で、製造原価をどこまで下げることができるのか、また販売台数をどこまで伸ばせば、企業としての収益は維持できるかを考え、その絶妙なバランスの上での戦略であると推察する。他自動車メーカーがBYDの値下げ攻勢に対して、準備もなく単に追随するのであれば、あっという間に収益が悪化し、経営不振に陥るであろう。

なお、直近の中国メディアによれば、BYDの総従業員数は90万人を超え、技術研究開発部門も11万人を上回っているとのこと。世界展開を見据えて、人員規模を拡大し、準備に取り掛かっているようにもみえる。

筆者は、テスラよりも現実的な成長軸としてBYDが世界的にトップレベルに躍り出るとみており、日本の自動車産業にとっては、徹底した研究対象とすべきであろう。

2024年8月26日 和田憲一郎のビリビリ!とくる話

中国自動車販売、新エネ車の割合がついに50%突破

近年、多様なニュースが報じられている中で、中国の新エネルギー車(NEV)販売比率が2024年7月に50%を突破したというニュースには驚かされる。ちなみに日本では、7月の新エネルギー販売比率は3%弱である。

全国乗用車市場情報連合会(CPCA)によれば、2024年7月の中国におけるNEV販売台数は前年同月比36.9%増の87.8万台に達し、自動車販売全体に占めるNEVの割合は51.1%に達したとのこと。

BYDは今年2月、「ガソリン車よりも安い電気自動車」というスローガンを掲げ、低価格戦略を発表した。その際、王伝福董事長は「中国新車市場のNEV比率は今年中に単月で50%を超える」と予言していたが、これは7月に達成されたことになる。

この現象は、日系自動車メーカーなど合弁ブランドのシェアが低下していることも意味している。王伝福董事長は、合弁ブランドのシェアが現在の44%から今後3~5年の間に10%まで低下すると予測していたが、これも早まったのではないだろうか。

日産自動車やホンダは人員削減や工場閉鎖のニュースが報じられているが、この傾向はさらに加速する可能性がある。筆者の懸念は、日系自動車メーカーがこの販売減少を受け入れた後、再度中国市場にNEVを投入することを検討しているが、中国のスピード感からして、中国市場がその時まで待ってくれるかどうかである。

2024年7月22日 和田憲一郎のビリビリ!とくる話

水素エンジン車に関する規制はどうなるのか

気になるニュースが流れている。
米オートモーティブニュースによれば、トヨタ自動車など複数の自動車メーカーが水素を燃料に使うエンジン車を開発しているが、カリフォルニア州はこれをゼロエミッション車(ZEV)と見なさない見解とのこと。

まだ最終確定ではないかもしれないが、理由として、カリフォルニア大気資源局(CARB)は、水素エンジン車は二酸化炭素(CO2)はほとんど排出しないものの、窒素酸化物などの汚染物質が発生するため「ZEVの定義に当てはまらない」という見解を示しているようだ。

ではZEV規定に当てはまらないのであれば、内燃機関車の一部となるのであろうか。カリフォルニア州は、2026年から始まる新たな規制「Advanced Clean Cars II」を定めており、対象車は電気自動車、燃料電池車、プラグインハイブリッド車のみである。

また規制は2026年に35%から始まり、その後、毎年要求比率が増加し、2035年には100%と定まっている。もし、当該ZEV規制の対象外となることは、開発している自動車メーカーにとって、意義を大きく損なうであろう。

さらに、欧州委員会が最終合意した「グリーンディール」政策の環境規制、つまり「ガソリン車、ディーゼル車、ハイブリッド車、プラグインハイブリッド車も含めた内燃機関車の新規販売を2035年に禁止する法案」に関しても影響を及ぼす。今後、欧州でも水素エンジン車の対応について議論が起こるのではないだろうか。

既にBMWなどは水素エンジンに見切りをつけ、BEVもしくはFCEVに舵をきっているが、水素エンジン車は今後どうなるのか、その規制動向について見守りたい。

2024年6月24日 和田憲一郎のビリビリ!とくる話

日系自動車メーカーは中国でオズボーン効果を回避できるのか

日産自動車は中国にて江蘇省の自動車工場を閉鎖し、中国の生産能力を1割減らすと公表した。またホンダは、広州汽車集団(GAC Motor)との合弁会社「広汽本田汽車(広汽ホンダ)」が、全従業員の14%にあたる約1700人に対して、大規模な人員削減を進めていると公表している。

理由は、極端な販売不振である。新エネルギー車の低価格化によって、ガソリン車も苦境に陥った。日系自動車メーカーはこの4月、5月で対前年比2割減少となった。

具体例として、BYDは2024年2月「ガソリン車よりも安い電気自動車」というスローガンを掲げ、低価格戦略を発表した。BYDの2024年モデルにてPHEV 「秦 PLUS DM-i栄耀エディション」は7万9800元(約165万円)から、2024年モデルにてBEV 「秦 PLUS EV」は10万9800元(約230万円)からである。

またBYDの王伝福董事長は、中国自動車市場の合弁ブランドのシェア44%は、向こう3~5年の間に10%まで落ちると言及している。現在日系は14.4%のシェアであるが、そうすると3~5%まで下落であろうか。

そこで思い出すのが、オズボーン効果である。1983年、オズボーン・コンピュータ社は未完成だった次世代のコンピュータを発表し、これらが現在の商品を大きく上回っていることを強調した。このためユーザーの間で買い控えが起き、オズボーン社の売上は急落した。その結果、キャッシュフローと収益を悪化させ、結果的にオズボーン社は倒産した。つまり、早すぎる新製品発表と、新商品投入の遅れにより、企業収益を悪化させる現象が「オズボーン効果」と呼ばれている。

日産自動車やホンダなどの日系自動車メーカーも、中国市場にて2027~2028年頃には新エネルギー車を多数投入すると公表している。しかし、スピードの早い中国市場では、この段階で日系自動車メーカーの販売はさらに落ち込んでいると予想される。

日系自動車メーカーは、どちらかと言えば、欧米市場を重視してきたが、世界最大の市場で淘汰の憂き目にあうことは、屋台骨が危なくなると言える。やはり、優先度を高め、市場投入を早めることが生き延びる策ではないだろうか。

2024年5月20日 和田憲一郎のビリビリ!とくる話

ABtCに期待

2024年5月16日、一般社団法人「自動車・蓄電池トレーサビリティ推進センター」(Automotive and Battery Traceability Center:略称ABtC)より、EV用電池に関するトレーサビリティサービスを今後行うと公表された。

これまで欧州電池規制に対して、トヨタや日産自動車などでは対応可能であるものの、他自動車および電池メーカーなどは対応が厳しく、どうするのかと思っていた。

今回は自動車メーカー14社と業界団体がタッグチームを組み、最初の第一弾として電池のトレーサビリティサービスの運用を開始するとのこと。

電池のトレーサビリティは必須であり、極めて有効な第一歩と思える。特にトラッキングのために、ブロックチェーン技術を活用予定としており、この面での技術蓄積が期待できる。

これに関して、私は主に3つの課題があるのではと思っている。
1.時間軸 欧州電池規制は本格導入が2025年後半からであるが、日本からの輸出を考えると、2025年前半には体制が整わなければならないと思われる。今の時間軸で大丈夫であろうか。

2.データ収集 原材料調達から、製造時、使用、廃棄までCO2を把握しようとすれば、源流に遡るほど、把握が難しくなる。特に海外調達を介する場合はなおさらである。これをどうやって解決するか知恵が求められるであろう。

3.価格転嫁 トレーサビリティを行うことは、そのデータ収集にコストがかかることが予想される。原材料調達から、製造時、使用時、廃棄までの全工程にて発生するコストをいかに安価に抑えるかが課題であろう。

先行する欧州などを参考に、多くの課題を解決していくことを期待したい。