09月

2019年9月10日 和田憲一郎のビリビリ!とくる話

 クルマのLCA規制について

 最近、欧州にて2030年にCO2排出量を評価する手法として、LCA(Life Cycle Assessment) 規制が検討されていることが話題となっている。LCAをご存じない方のために若干補足すると、 LCAはクルマであれば、エネルギーの生成過程、部品の製造過程、自動車の生産、 ユーザーの走行距離、廃棄、それに再利用まで、まさにクルマの上流から下流まで 全ての工程にてCO2を算出し、評価する手法である。

 私はこれを聞いて、別に反対はしないが「なんだかなぁ?!」と思ってしまったのである。 というのは、自動車メーカーに務めていた時、電気自動車のLCAを算出しようと試みたときがあった。 しかし、当時どれだけ分析してみても、なかなか確信が得られなかったのである。

 たとえば、電力構成は国によって異なる。もしくは他国から購入している場合もある。 自動車部品は、ほとんどの自動車メーカーが要求仕様図にて依頼しており、要求仕様を満たせば、 どの国で生産してもかまわない。 実際、最初は日本で生産していたが、途中から中国へ、その後ベトナム、タイ、カンボジアなどに 移設することは多々ある。そのような時、製造過程でどれくらいCO2を排出していたのか 把握することは極めて難しい。

 さらに、算出したLCAに対して5%削減しようとした場合、誰がその削減の責任を持つのであろうか。 おそらく参加者は勝手に、電力会社だ、部品メーカーだ、自動車メーカーだ、ユーザーだ、廃棄業者 などと言い出し、収拾がつかないであろう。極端なことを言えば、計算をやり直すことで、5%ぐらい 変動することは簡単である。

 このように、対象範囲が広く、関連企業が多くなればなるほど、誰も責任を取らないシステムがはたして有効なのかと思ってしまう。関連する全ての企業がブロックチェーンによりデータを 紐付けできるのであれば可能かもしれないが、中小企業、海外生産も考えると、それも 現実的でないと思えてしまう。やはり、なんだかなぁと思ってしまうのである。