日系自動車メーカーは中国でオズボーン効果を回避できるのか
日産自動車は中国にて江蘇省の自動車工場を閉鎖し、中国の生産能力を1割減らすと公表した。またホンダは、広州汽車集団(GAC Motor)との合弁会社「広汽本田汽車(広汽ホンダ)」が、全従業員の14%にあたる約1700人に対して、大規模な人員削減を進めていると公表している。
理由は、極端な販売不振である。新エネルギー車の低価格化によって、ガソリン車も苦境に陥った。日系自動車メーカーはこの4月、5月で対前年比2割減少となった。
具体例として、BYDは2024年2月「ガソリン車よりも安い電気自動車」というスローガンを掲げ、低価格戦略を発表した。BYDの2024年モデルにてPHEV 「秦 PLUS DM-i栄耀エディション」は7万9800元(約165万円)から、2024年モデルにてBEV 「秦 PLUS EV」は10万9800元(約230万円)からである。
またBYDの王伝福董事長は、中国自動車市場の合弁ブランドのシェア44%は、向こう3~5年の間に10%まで落ちると言及している。現在日系は14.4%のシェアであるが、そうすると3~5%まで下落であろうか。
そこで思い出すのが、オズボーン効果である。1983年、オズボーン・コンピュータ社は未完成だった次世代のコンピュータを発表し、これらが現在の商品を大きく上回っていることを強調した。このためユーザーの間で買い控えが起き、オズボーン社の売上は急落した。その結果、キャッシュフローと収益を悪化させ、結果的にオズボーン社は倒産した。つまり、早すぎる新製品発表と、新商品投入の遅れにより、企業収益を悪化させる現象が「オズボーン効果」と呼ばれている。
日産自動車やホンダなどの日系自動車メーカーも、中国市場にて2027~2028年頃には新エネルギー車を多数投入すると公表している。しかし、スピードの早い中国市場では、この段階で日系自動車メーカーの販売はさらに落ち込んでいると予想される。
日系自動車メーカーは、どちらかと言えば、欧米市場を重視してきたが、世界最大の市場で淘汰の憂き目にあうことは、屋台骨が危なくなると言える。やはり、優先度を高め、市場投入を早めることが生き延びる策ではないだろうか。