米国自動運転に関する規制緩和の動きを考える
米国運輸省道路交通安全局(NHTSA)は2025年6月、ハンドルやブレーキペダルなど、従来の運転操作装置を持たない自動運転車の導入に向け、規制の緩和を進める方針を発表した。
この発表の背景には、2022年3月にNHTSAが「自動運転システムに関する連邦自動車安全基準(FMVSS)」について最終規則を交付し、ステアリングホイールやペダルのない車両でも量産可能であると判断を示していた経緯がある。
ただし、こうした自動運転車の実際の導入には、FMVSSの「個別適用除外申請」が必要とされており、手続きには数年を要する可能性も指摘されていた。今回の規制緩和は、これらの申請手続きを簡素化し、数カ月以内での承認を目指すものとされている。
この動きは、第2次トランプ政権が推し進める環境規制の撤廃や電気自動車への補助金削減といった政策方針とは異なる動きである。筆者が思うに、NHTSAはトランプ政権の政策的スタンスとは別に、自動運転システム(ADS)を革新的かつ推進すべき技術として捉えているのではないだろうか。
過去においても、NHTSAはシートベルトやエアバッグといった安全技術を世界に先駆けて導入してきた実績がある。2026年に公開が予定されているテスラの無人タクシー「サイバーキャブ」の登場を見据え、ADSの社会実装を後押しするための適切なタイミングと判断したのではないだろうか。