ワイヤレス給電に関するワイトリシティとクアルコム
電気自動車関係者にとって、興味深いニュースが2019年2月11日に流れました。 米ワイトリシティ(WiTricity)が米クアルコム(Qualcomn)のEV/PHEV向け ワイヤレス給電事業「Qualcomn Halo」を買収すると発表したことです。
これについては、以前から噂になっていましたが、いよいよ現実になったようです。 あまりご存じない方のために紹介すると、ワイトリシティとクアルコムは近年 ワイヤレス給電の国際規格化で激しい争いを続けていました。各陣営とも自動車メーカー、 部品メーカーも巻き込み、さながらVHS vs.ベータのような様相でした。
筆者は以前に、米国ボストンのハーバード大学西側に位置するワイトリシティを 訪問したことがあります。ワイトリシティはMITから技術者がスピンアウトして独立した ベンチャー企業であり、ワイヤレス給電の原理原則の開発、ロイヤリティビジネスを メインとしています。会議室や廊下には、それまで取得したパテントが所狭しと掲げられて おり、あまりの多さに驚かされたものです。
一方、クアルコムは、元々ワイヤレス給電装置のチップビジネスを狙っており、自社では ワイヤレス給電機器は作らないと表明していましたが、ニュージーランド大学の研究者が 開発した「HaloIPT」を買収したあたりから、心変わりしたように思っていました。 今回の買収では、ワイトリシティが技術やライセンス権、1500件に及ぶパテントも全て 譲り受けるとのことで、これでEV/PHEVのワイヤレス給電規格争いにも終止符が打たれ、 普及に弾みがつくのではないかと思われます。
筆者の勝手な考えでは、新エネ車の伸展が著しい中国からワイヤレス給電が普及すると 見ており、第14次5か年計画(2021年~2025年)には、充電インフラ国家目標に、 ワイヤレス給電数も盛り込まれるのではないでしょうか。
電気自動車を開発していた頃、ワイトリシティのワイヤレス給電試作機を見て驚いた 経験があり、いよいよ実用段階を迎えるのかと思うと、感慨深いものがあります。