2026年

2026年4月27日 和田憲一郎のビリビリ!とくる話

2026年、SDVからAIDVに移行へ

昨年末に、「2026年はソフトウェア定義型車両(SDV:Software Defined Vehicle)から、AI定義車両(AIDV:AI Defined Vehicle)への転換点となる可能性が高い」ことをコラムにて指摘した。

この背景には、中国の新興自動車メーカーであるXpengが、世界に先駆けてAIDVを搭載した「P7+」を発表し、AIDVが今後の主流技術となるとの立場を明確に示した、「すでに起こった未来」の現象がある。中国では、これをきっかけとして、多くの自動車メーカーがSDVからAIDVへと移行し始めている。

こうした状況下、4月14日、日産自動車は経営再建計画「Re:Nissan」の先を見据えた長期ビジョンを公表し、その中でAIDVを今後の中核技術として位置づける方針を示した。AIDVを唱えるのは日本の自動車メーカーで日産自動車が初めてである。

日産自動車のAIDVは、AIドライブ技術とAIパートナー技術を統合することで、移動体験そのものを高度化し、移動時間をより価値の高い体験へと転換することを目指すとしている。しかし、AIドライブ技術については、E2E型の自動運転技術を実装した次世代プロパイロットとして市場投入する計画が示されている一方、AIパートナー技術の具体像は依然として明確ではない。

その間にも、中国市場では市街地NOAや車載AIエージェントが急速に進展し、多くの車両が高度なAI機能を備えるに至っている。厳しい見方かもしれないが、今回の発表は、中国メーカーの先行事例を追随する段階にとどまっており、現時点では技術的・市場的に追いついているとは言い難い。

日産自動車をはじめ日本の自動車メーカーがAIDV領域に参入することは、今後の競争力強化に向けた重要な一歩であるが、更なる技術開発と市場展開に期待したい。

<ご参考:アイティメディア/MONOistコラム:2025年12月24日>
中国自動車メーカーが目指す知能化とスマート化、2026年からAIDVの競争が始まる
https://monoist.itmedia.co.jp/mn/articles/2512/24/news020.html

2026年3月23日 和田憲一郎のビリビリ!とくる話

欧州にてPHEV淘汰の危機

欧州において、PHEVが重大な転換点を迎えている。以前より、PHEVの公称CO₂排出量と実際の走行時排出量との乖離が指摘されてきた。ベルギーを拠点とする環境NGOであるT&Eは、この乖離が最大で5倍に達するとしている。

こうした指摘を受け、欧州委員会は車載燃料消費量監視装置を用いて約60万件の実走行データを収集し、詳細な分析を実施した。その結果、依然として平均3.5倍の乖離が確認された。つまり、PHEVでありながら充電を行わず、エンジン主体で走行する利用者が多数存在することが明らかとなった。

この実態を踏まえ、欧州委員会は実走行データを重視した規制体系への移行を決定し、PHEVのCO₂排出量算定方法の見直しを段階的に導入した。第一段階は2025年1月以降の新型車を対象とし、第二段階は2027年1月以降の新型車に適用される。両段階において、EV走行割合を評価するユーティリティファクター(UF)が再定義された。T&Eの試算によれば、公称値35 g/kmであったPHEVのCO₂排出量は、2025年の第一段階で81 g/km、2027年の第二段階では114 g/kmへと大幅に増加する見通しである。

この数値は、2027年時点でPHEVがガソリン車やHEVとほぼ同等、あるいは一部の車種ではHEVを上回るCO₂排出量と評価される可能性がある。結果としてPHEVは環境対応車としての優位性を失ってしまう。

欧州自動車業界は、2025年規制については既に施行済みであるため変更は困難と認めつつ、2027年規制については「凍結」を要望している。しかし、法制化が完了している現在、その実現性は難しいであろう。このまま規制強化が進めば、PHEVは欧州市場における環境車としての位置づけを失い、事実上の淘汰に向かう可能性が高い。

欧州のPHEVに対する規制強化は、米国、中国、日本などにも飛び火し、PHEVに対する見方が厳しくなるのではないだろうか。

2026年2月24日 和田憲一郎のビリビリ!とくる話

中国政府による格納式ドアハンドル禁止に激しく同意

今回は中国政府による規制について述べたい。中国工業情報化省は2026年2月、自動車に搭載される格納式ドアハンドルの使用を禁止する方針を発表した。格納式ドアハンドルとは、テスラが最初に広めた構造であり、車体と一体化するデザインが特徴で、スタイリッシュさが売りとなっている。

現在では、テスラのModel Y・Model 3、XiaomiのSU7・YU7、BMW iX3、NIO ES8、Li Auto i8など、販売上位モデルの約6割までが同仕様を採用している。

新規制は段階的に導入され、新型車は2027年1月1日以降、既存の認可済みモデルは2029年1月1日以降、規制に適合したドアハンドル設定が義務付けられる。

この決定の背景には、中国国内で発生した2件のXiaomi製EVの火災事故がある。いずれも電源喪失によりドアが開かず、乗員が脱出できないまま死亡に至った。このため、メディアでの関心は一気に高まり、格納式ドアハンドルの安全性に対する疑念が広がった。

今回の規制は中国国内向けではあるものの、中国は新エネルギー車の主要輸出国であるため、国際市場への影響は避けられない。また、テスラ車でも過去10年間で格納式ドアハンドルに関連する死亡事例が15件報告されており、米国運輸省道路交通安全局(NHTSA)も調査を進めている。

これまで世界の安全規制を牽引してきたNHTSAがまだ検討段階にある中で、中国政府が先に禁止に踏み切ったことは、相当な葛藤があったのではないだろうか。それでも死亡事故のリスクを前に「これ以上放置できない」と判断に傾いたと考えられる。

車のデザイン性より安全性を優先し、自動車メーカーに短期間で大幅な構造変更を迫る今回の規制に対して、筆者は激しく同意したい。おそらく、今回の事案を契機に、新エネルギー車の安全基準においては、米国だけでなく中国も主導的な役割を果たしていくのではないだろうか。

2026年1月27日 和田憲一郎のビリビリ!とくる話

AIが作り出すワークスロップ(Workslop)の弊害

テスラや中国自動車メーカーなど、AIを活用した自動車開発の事例が増えてきた。一方で、AI活用にまつわる困った話も海外では報告されている。その代表例が、昨年末から海外で広まっている言葉「ワークスロップ(Workslop)」だ。

ワークスロップとは、AIが生成した質の低いコンテンツを指す造語である。slop は「粗悪な混ぜ物」や「家畜のエサ」を意味し、それに work を組み合わせることで、「見た目はそれらしく整っているが、中身が伴わず価値のないコンテンツ」を揶揄する言葉として使われるようになった。実際、最近はレポート、プレゼン資料、作成画像など、表面だけ整ったコンテンツが増えている印象を受ける。

先日も、ホワイトハウスより、トランプ大統領がグリーンランドでペンギンと歩いている画像が投稿された。しかし、ペンギンは南極にしか生息しないため、世界中から総ツッコミを受けた。
https://www.chunichi.co.jp/article/1198389

ワークスロップは、スタンフォード大学ソーシャルメディアラボとBetterUp Labsの研究者が2025年9月に発表した論文で定義された概念であり、ビジネス誌Harvard Business Review(HBR)に掲載されたことで一気に世界へ広まった。

ワークスロップが企業にもたらす弊害は小さくない。体裁だけ整った資料が提出され、上司が再チェックや修正に追われることで時間が奪われるほか、チーム全体の信頼性低下にもつながっている。

その背景には、アウトプットを検証せずAI結果をそのまま提出してしまうことや、スピード重視の評価制度のため、とりあえず報告書を提出しがちであること、さらには課題や解決策をAIに丸投げしてしまい、人間が思考停止に陥っていることなどが指摘されている。

日本でも今年流行すること間違いなしのワークスロップ。心当たりがあり、少しドキッとしている人も多いのではないだろうか。