2018年

2018年12月19日 和田憲一郎のビリビリ!とくる話

 自動車100年塾の基調講演から学ぶ

私どもは2015年4月から、3ヶ月に1度の割合で勉強会「自動車100年塾」を開催してまいりました。昨日開催の「第15回自動車100年塾ワークショップ」では一般財団法人 日中経済協会 専務理事の杉田定大様から、「米中経済冷戦を見通す」というテーマにて基調講演を聞く機会を得たので、その内容についてご紹介します。

私の知る限り、杉田様は中国事情について最も詳しい方であり、昨日の講演でも、プレゼン資料は130ページに及び、驚きの内容でした。

かなり際どい内容も多かったのですが、頭に残ったキーワードが2つあります。
1.今回の冷戦激化は、2018年10月4日ハドソン研究所にて行われたPENCE副大統領による「対中政策全面見直宣言」が発端となっている
2.米中ハイテク冷戦が始まり「中国エマージング技術に対する対中シフト」が強化される

グループディスカッション後に、では今後、日本はどうすれば良いのかとの質問が出たところ、杉田様は「日本政府は米中間をうまく取りなす器用なマネはできない。それを前提にした上で、民間は知恵を出さなければならない。日本は現在、自動車1本足打法であり、早く他の産業を育成していかないと危ない」とのコメントをいただきました。

私自身はこれを聞いて、ビリビリ!と米中冷戦の深刻さを感じるとともに、日本は「したたか」な対応が必要ではと思ったものです。粘り強く、そう簡単には圧力に屈しない、しぶとさがこの時代に求められるのかもしれません。

2018年11月28日 和田憲一郎のビリビリ!とくる話

中国:雄安新区は未来の都市像であろうか

かねてより行きたかった中国雄安新区に、今週訪問することができた。ご存じない方のために少し説明すると、雄安新区は北京の南西150kmに位置し、北京首都機能の一部を補完することや、新たなイノベーションを集積した街として2017年に公表された新区である。

当初の人口は100万人、面積は長期計画として1770km2を想定とのことである。しかし、筆者が見たところ、新区があまりにも広大で、構想の1%も出来ていないように見受けた。今回はかなりゆっくりとしたスタートなのであろうか。

一番の目玉は、何と言っても、自動運転車しか街中を走行出来ないことである。新区近くの駐車場で止められ、EVシャトルバスに乗り換えて、新区の中に入ることができた。新しく出来た雄安新区市民サービスセンターの周囲では、自動運転車のアポロプロジェクトや、自動荷物運搬車のNEOLIXなどが実証試験を行っている。

ただ、筆者の印象として、初期で100万人、2035年頃には200万人を超えると想定している割には、都市計画は、オフィスビル、住宅地、碁盤目状の道路というように普通である。

私見であるが、せっかく世界の最先端テクノロジーを集めて、新しい街を作るのであれば、街の中に自動運転車や自動運転バスが走るだけでなく、もっと人の大量移動を可能にする新たな高速トラムや移動体がなければ、北京以上の渋滞になってしまうのではと危惧する。

より辛口に言わせていただくと、新区構想は素晴らしいものの、モビリティに関しては、EVや自動運転車など、今ある技術、もしくは延長上の技術を集めて、新しい都市を創ろうとしているように見受けた。

このため、かなりビリビリ!とくるのではと期待して行ったのであるが、出発前に観た映画「ボヘミアン・ラプソディ」のほうがよっぽどビリビリ!ときた次第である。いずれにしても、雄安新区は着手したばかりであり、どう変化していくのか再度訪れてみたい。

2018年10月23日 和田憲一郎のビリビリ!とくる話(特別編)

一般社団法人 自動車100年塾 海外視察のご案内

今回は特別編として、自動車100年塾海外視察のご案内をさせていただきます。

一般社団法人 自動車100年塾では、かねてからご案内のとおり、初めての海外視察を 計画しました。今回は訪問先として中国を選びました。大きなイベントに合わせて、中国の今を 見ることができる良い機会と思いますので、ぜひともご参加賜りますようお願い申し上げます。

なお、会員でなくとも参加可能です。
自動車100年塾にご参加の方は昨日案内が届いており、重複となることご容赦願います。

詳細は以下の自動車100年塾HPをご参照ください。

リンク先:
http://www.auto100y.org/

2018年10月11日 和田憲一郎のビリビリ!とくる話

CASEはMaaSではない

ソフトバンクとトヨタとの記者会見が話題となっているが、筆者がとくに気になったことについて述べてみたい。

近年、自動車メーカーは、独ダイムラーのツェッチェCEOが提唱したCASE、つまりC(Connected)、A(Autonomous)、S(Shared)、E(Electric)が将来の進むべき方向を示唆すると受け止め、トヨタもこの路線で動いている。

一方、自動車業界にとらわれることなく、公共交通機関、バス、タクシー、カーシェアなどをシームレスに繋ぎ、予約と決済ができるモビリティのサービス化、いわゆるMaaS(Mobility as a Service)が欧州を中心に進展してきた。

今回の会見を聞いていて、トヨタはCASEの話をしたがり、逆に言えばMaaSの話は避けたく、ソフトバンクはMaaSの話をしたかったが、トヨタの意向を理解して抑えていたような印象を受けた。

話は逸れるが、9月中旬にコペンハーゲンにて開催された第25回ITS世界会議に筆者も参加した。ある発表者が、世の中にはMaaSと自動運転車やライドシェアをごっちゃにする人がいるが、MaaSの定義は「さまざまな形態の輸送サービスを、アクセス可能な単一のモビリティサービスに統合したもの」であり、自動運転車やライドシェアなどと区別する必要があると説いていた。European MaaS Allianceも同様な定義の位置づけである。

そして、話を今回の記者会見に戻せば、トヨタがMaaSの話をしようとすれば、マスター(主)とスレーブ(従)の関係が生じることを説明しなければならない。今回設立の新会社が、もしソフトバンクを中心としたMaaSプラットフォーマーになるのであれば、セカンドレイヤーとしてライドシェア企業などが位置し、クルマを提供するトヨタはサードレイヤーの位置付けになる。

さらに言えば、セカンドレイヤーとなるライドシェア企業の代表格である滴滴出行、UBERなどもソフトバンクが大株主であり、結果的にトヨタは2段階下に位置する構図となる。このような状況は説明しにくく、トヨタは意識してMaaSの話を避けたのではないだろか。

ただ、将来はMaaSプラットフォーマーが自動車も含めたMobility全体をコントロールすると予想されている。そのような中、記者会見の際に、握手したソフトバンク孫正義会長が自信あふれる姿に見え、トヨタの豊田章男社長が(ここで握手して良いのであろうかと)やや不安げに見えたのは筆者だけであろうか。

2018年9月27日 和田憲一郎のビリビリ!とくる話

 ITS世界会議からMaaS世界会議へ

デンマークのコペンハーゲンにて9月17日より開催された第25回ITS世界会議に出席しました。数多くの自動車ショーは参加したことがあるものの、正直申せば、この会議は初めてなのである。

しかし、今回は「モビリティのサービス化」を示すMaaSに関連する案件が数多く、発表されると聞き及んで参加したことが背景にある。

さて、それにしても、ビックリ!である。当会議はITSのみならず、自動運転、環境対応、輸送ネットワークなど約200あまりのセッションが開催されたが、その中でもMaaS関連は50を超えて議論された。

会議形式は、1つのセッションが、3~4人の発表者と1人のモデレーターで開催することが多く、90分にて個々の発表や議論を行うものであり、内容の濃いものが多かった。

参加者は、企業関係者、大学の先生、それに各国や市の産業振興、都市計画などの官僚が多かったように思える。参加国は約100カ国に及び、これだけ産官学の人が集まり、MaaSに対して議論する姿は圧巻であった。

もはや、ITS関連と同じくらいセッションが多いことから、ITS世界会議というより、MaaS世界会議と独立した会議に設定しても良いのではと思ったものである。

印象に残った言葉として、発表者の一人が最後に、「MaaSはこれまで作り上げたきた世界を ”REINVENT”する」と結論づけたときである。これはMaaSの進展が、モビリティに留まらず、都市交通、都市計画までも拡大し、現在の世界を再発明するとの予見であり、思わず、ビリビリ!ときた瞬間であった。

今回の会議にて確信したことは、まもなく日本にもMaaSの大波が押し寄せてくるであろうということである。さて、我々はこれに立ち向かうことができるであろうか。

2018年8月29日 和田憲一郎のビリビリ!とくる話

交通渋滞はなくならないと思っていないだろうか

先般、中国の杭州市にて、アリクラウドの「ET都市ブレイン」を導入し、これまでの激しい交通渋滞をほぼ解消したとのニュースが流れました。

杭州市といえば、上海の南西に位置し、中国では古都と呼ばれているところです。筆者も何度か訪れたことがありますが、日本で言えば京都のような場所でしょうか。その半面、交通渋滞がひどく、あまりのクルマの多さに閉口した記憶があります。

それが、杭州市とアリクラウドが連携して「ET都市ブレイン」を導入し、AIが全ての信号と約3600台の交通監視カメラを管理してるとのこと。つまりAIが交通量と信号の点滅時間を制御して、交通渋滞をほぼ解消したようです。

さらに、交通事故が発生した場合は、救急車が迅速に走れるよう、AIが救急車が行く先々で信号が自動的にグリーンになるよう変更を行い、到達時間を半減したとか。なお、アリクラウドは中国のみならず海外でも展開予定のようです。

このような話を、本日、アカデミアの先生と話をした際、なぜ日本では出来ないのかとの議論になりました。確かに国の違いや人権の問題もあるが、日本に於ける最大のネックは行政、民間も含めて縦割り意識が強く、情報を他に渡さない風潮があるのではとの結論になりました。

確かに、例えば、高速道路では多くの走行記録が残っているにも係わらず、結局それらを活用することもなく、捨ててしまっていることが多いようです。

我々はなんとなく、渋滞などなくならないと思ってしまいがちですが、一方ではAIを活用して解消しようとしているところもあります。これまで当たり前と思っていたことが、ひっくり返される、そんな時代になっていると、思わずビリビリ!ときた次第です。

2018年7月30日 和田憲一郎のビリビリ!とくる話

日中共同による急速充電新規格について

本日リリースのコラムにも書きましたが、日中共同にて急速充電の新規格を検討しています。それも従来の50kW程度のものではなく、超高出力と呼ばれる350kW以上を目指しているようです。実現方法としては、DC充電ピンサイズの拡大や、ピンを中空にして液冷とするなど技術的革新も考えているとのこと。

確かに、昨今は空飛ぶ自動車であったり、大型EVバス、大型EVトラックなどが話題にのぼっており、よくよく考えると商品のみならず、それらへの充電はどうするのか、両輪として配慮しなければなりません。

今回の取材を通して、以前に私が携わっていたEV初期段階から、EV化が空飛ぶ自動車や、大型EVバス、大型EVトラックなど、これまでとは異なる別次元に引き上がっていく時代がきたのかと、思わずビリビリ!きてしまいました。

せっかく日中共同で新規格を作るのであれば、パートナーを増やし、世界標準となるよう目指していただきたいものです。以下にコラムを記載しますので、ご一読いただけると幸いです。

日中共同による急速充電新規格は、世界標準となるのか :
http://monoist.atmarkit.co.jp/mn/articles/1807/30/news007.html

2018年6月26日 和田憲一郎のビリビリ!とくる話

過熱気味なEV投資にブレーキ!

直近の報道によれば、中国ではEV投資熱が過熱していることから、新たに厳しい管理規定を作って、EV製造事業への投資熱を抑えようとしているとのこと。

その背景には、今年1月~5月までの新エネ車販売台数が、対前年比142%と驚異的なペースで推移していることや、ここ2~3年で過大な設備投資を計画しているため、少し頭を冷やす必要があると思ったのかもしれません。

2017年に於ける新エネ車販売台数は約78万台まで伸びましたが、この調子でいくと、2018年は予想を遥かに上回る数値になるように思えます。新エネ車のためにいろいろと政策を打っても、なかなか伸びない日本とは好対照となっています。

また、販売が伸びるほど、補助金も膨大になることから、補助金政策の調整を計画しているとのこと。EV走行距離はこれまでの100kmから150kmへ、電池のエネルギー密度は90Wh/kgから105Wh/kgへ変更とのことです。

しかし、今年の2月に事前アナウンスがあったとは言え、突然の補助金政策変更には戸惑った自動車メーカーやプロジェクト責任者も多かったのではないでしょうか。プロジェクトを経験した私にとっても、基本構造の変更まで関係する突然の政策変更にはビリビリ!というより、無力感を感じたように思えます。

中国では、スピードを加速させたり、減速させたりして、計画された産業目標に到達するようにコントロールするだけに、今回のEV投資過熱も、どこで減速させ、またいつ加速させるのか、注目していきたいと思います。

2018年5月10日 和田憲一郎のビリビリ!とくる話

観光都市の機能保全とは

GWは久しぶりにパリを訪問しました。そこで改めて気がついたことがあります。

最初のパリ訪問、約10年前のことですが、オートリブと呼ばれるカーシェアリングがまだ計画段階の時に、パリ市役所の方は、大気汚染などで美術館などの外観が傷んでおり、ゼロエミッションを普及させることにより、観光都市としての機能を保存したいと切実に言っていたことを思い出しました。

そして、今回改めて、ルーブル美術館など多くの美術館を見てみると、外壁部の上側に歴代の皇帝やキリスト教司教などの像が数多く飾ってあるですが、これが黒ずんで、かつかなり傷んできていることが伺えます。

以前は、美術品など室内にあるため、大気汚染の影響などそれほどないのではと、あまり気にしていませんでしたが、今回そのような視点で眺めると、パリ市の危機感が現実になってきていることを実感します。まさにビリビリ!ときた瞬間でした。

昨年、フランスはガソリン車・ディーゼル車の廃止を2040年までに実施すると公表した後、パリ市のアンヌ・イダルゴ市長は、それでは遅い「時は迫っている」として、2024年までにディーゼル車を、2030年までにガソリン車のパリ市内乗り入れを禁止すると、フランスに先駆けて規制を強化することを表明しています。

欧州には、パリ以外にも多くの観光都市が存在し、早かれ遅かれ同じような活動を展開していくのかもしれません。この流れは止められないように思えます。

2018年4月25日 和田憲一郎のビリビリ!とくる話

やはり滴滴出行(ディディチューシン)だったのか

かねてより、自動運転車やライドシェアサービスが普及すると、これまでの自動車メーカーを頂点とするピラミッドから、その上に1stレイヤーとして君臨する企業が現れるのではと思っていました。

その候補企業は、Google、Apple、百度(Baidu)、Tencent騰訊を想定していましたが、4月24日思いもかけないことが公表されました。ライドシェアサービス大手の滴滴出行(ディディチューシン)が、世界の大手自動車メーカーや部品メーカーなど31社をまとめあげ、洪流連盟(Dアライアンス)という企業連合を作るとのこと。

日本からはトヨタ自動車、日産自動車、三菱自動車も参画しています。洪流連盟(Dアライアンス)の目標として、2020年には100万台のEVを利用し、2030年には1000万台にまで増やすとのこと。

また、滴滴出行は、利用者が求めるニーズを詳細に把握し、製造コスト半減の専用EVも共同開発するとアナウンスしています。

これは取りも直さず、滴滴出行が取り決める仕様にて、自動車メーカーがEVを作ることを意味します。つまり、自動車メーカーにとっては、滴滴出行がカスタマーであり、自らは自動車メーカーではなく、2ndレイヤーとして自動車製造メーカーに転落する可能性があるのではないでしょうか。

私自身も、いつ誰がこのアクションを採るのであろうと思っていましたが、まさか滴滴出行とは思いませんでした。このニュースを聞いてビリビリ!ときた次第です。

ところで、滴滴出行は、ライドシェアサービスにて2017年だけでも約74億人が乗車し、世界400都市に展開しているとのこと。また、今年初めには、契約女性ドライバーが230万人に達したことも公表しています。男性も含めると契約ドライバーは1000万人を越えるのではないでしょうか。

さらに、企業方針として、単にライドシェアサービス会社で終わるのではなく、「自動車と交通業種の変革を牽引する世界トップの科学技術型会社を目指す」を掲げており、今後の自動車産業を左右するキーカンパニーとなるのかもしれません。今後も注目していきたいものです。

2018年3月19日 和田憲一郎のビリビリ!とくる話

中国は深センから捲土重来か

この3月上旬、深センを訪問した。これまで深センといえば、BYDが一強で、あとは中小の集まりのような印象があったが、6年ぶりに訪れた深センは全く様変わりしていた。

なんと言っても目立つのは、AIやIoT関連のベンチャー企業の躍進と、それを支える官民挙げての支援体制の充実である。例えば、深セン大学は、通常の大学ではなく、起業家養成所として起業の基礎から実践まで教えている。
まるで、ベンチャー「虎の穴」のようである。

また、政府は広大な敷地に「創業広場」と呼ばれる場所を格安にて提供し、数多くの厳選されたベンチャーを支援している。その中で、ベンチャー起業家は、まるで不眠不休の如く開発に没頭している。

さらには、1万店の電気店が集結する華強北電気街には、モノづくりのベンチャー企業を民間企業が支援している。近くにありとあらゆる部品が揃うことが強みであろうか。

また、これまで既に成長したジャイアント企業も意欲的な取り組みは衰えていない。WeChat等のモバイルビジネスで有名なテンセントは金融へと手を伸ばし、ドローンで世界シェア8割を握るDJIは、様々な形態のドローン開発に全力を注ぐ。

さらに、6年前に新エネ車でEV/PHEVの開発に着手していたBYDは、本社を訪れてみると、太陽光発電、蓄電池、さらにはモノレール開発も始めており、企業業態を拡大している。

現地にて教わった言葉に、「鼓励創新,寛容失敗(イノベーションを奨励し、失敗に寛容に)」がある。とにかくチャレンジして、その結果失敗しても、それを許す風土があるとのこと。おそらく日本のベンチャー支援体制や環境に最も欠けているものであり、この言葉を聞いた瞬間、まさにビリビリ!ときてしまった。

日本は仏教伝来が6世紀半ばと言われており、それ以外にも漢字、お茶など多くの文化を中国から習った。しかし、近年、中国は安い労働力を元に、生産基地としての役割を担っていた。ところが、ここに来て、世界規模の企業が次々と生まれている。まるで1400年の時を経て中国産業の勃興が起こったようであり、ある意味、捲土重来とも言える。

熱気溢れる深センを見て、日本企業は今後どうすべきなのか考える良い機会となった。

2018年2月5日 和田憲一郎のビリビリ!とくる話

先日講演会を行った時のことです。参加者から、EVや自動運転などが進んでくると、自動車ディーラーはどうなるのかと質問がありました。

これまで、どちらかと言えば、自動車メーカーの動向や、ガソリン系部品メーカーのビジネス変調に注目してきたため、あまり自動車ディーラーについては、正直考えたことはありませんでした。

しかし、日本の自動車ディーラーを考えてみると、少子高齢化により人口が減少すること。EV化によりオイル交換などディーラーに出向く機会が減ること。さらにはテスラなどしか採用していませんが、ソフトウェアの自動アップデートにより、今後は自動車メーカーとユーザーが直接結びつくことを考えると、自動車ディーラーは先行きが怪しいと言わざるを得ません。

米国ではアマゾン等の台頭により多くのモールが廃業に追い込まれているようです。 自動車ディーラーも電動化、IoT化により、直接店頭で販売したり、訪問販売する方法ではなく、自動車メーカーのショールームでクルマを見たあと、ネットでオーダーする、もしくはシェアリングサービスを利用するなど、自動車ディーラー対する役割が減っていくように思われます。

さらには、自動車メーカーがMaaSなどのサービス化に動き出そうとしています。このような状況を考えると、自動車ディーラーは、メーカーのアクションを待って動くというより、自らを業態変化させていく、そのような姿勢が必要ではないでしょうか。電動化、IoT化は、ガソリン系の部品メーカーのみならず、多くの業種で変革を迫られているように思えます。

2018年1月15日 和田憲一郎のビリビリ!とくる話

年明けから米国家電見本市(CES)にて、グーグルとアマゾンによるAI産業革命が話題となっています。電機、自動車ではなく、いよいよAIを武器にIT企業が名乗りを出るのが今年かもしれません。

さて、最近ビリビリ!ときた話は、日経ビジネスの「ダイソン特集」です。
ご存知のように、ダイソンはEVに参入することを表明していますが、どのように開発するのか興味を持っていました。

特集によれば、ダイソンの開発手法は極めてシンプルとのこと。
1.design(デザイン)、2.build(試作)、3.test(検証)、4.break(破壊)の4つのプロセスを行うだけのようです。

しかし、特徴はこれらの中で見つけた課題を、最初の1.design(デザイン)に立ち戻り、ループを繰り返すことにあるようです。サイクロン掃除機の開発では、このループをなんと5000回以上繰り返したとのこと。本当に驚かされます。

通常、クルマの開発でも問題点を発見し、その対策を行いますが、どうしても開発日程や開発費用のことが頭にあり、あるレベルに達すると、途中で妥協してしまうことは多々あります。徹底的に納得するまでモノを開発する、また市場に出てからも次々と改良を続ける姿勢は、日本のモノづくりの精神を、ややもすると上回るのかもしれません。

とにかく、早く効率的に開発することを優先しがちな現代のビジネスの中で、ダイソンのような企業から、どのようなEVが誕生するのか楽しみに待ちたいものです。