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2023年3月20日 和田憲一郎のビリビリ!とくる話

 「バッテリーパスポート」にて日本側対応に懸念

欧州にて実施しようとしている「バッテリーパスポート」に注目が集まっている。

ご存じない方のために補足すると、欧州を中心とする官民アライアンスである「グローバル・バッテリー・アライアンス(GBA)」が主催・推進しており、バッテリーに関する材料原産地、材料生産者、セル生産者、バッテリー重量、製造時の炭素排出量など、多くの指標をバッテリー毎に明記して、デジタルプラットホームとして管理しようとする動きである。

このアライアンスには、欧州自動車メーカーのみならず、テスラ、寧徳時代新能源科技(CATL)など現在120以上の企業・団体が加わっている。しかし、なぜか日系自動車メーカーや日系電池メーカーは加わっていない。

これまでも、欧州では私的なコンソーシアムや小規模のアライアンスから、次第に格上げし、法案の骨子が固まった頃には、修正しようとしても時既に遅しとなったことが多い。残念ながら、日系企業の場合、素案の段階では時期尚早として「待て」をしてしまうことがある。

近年、欧州発の規制は、あっという間に世界規格となることが多く、今回に関しても、事前の段階から参画していく姿勢が大切ではないだろうか。

GBA members:
https://www.globalbattery.org/about/members/

2023年2月27日 和田憲一郎のビリビリ!とくる話

トヨタが2026年に新プラットホームで新型BEVに落胆

最近、トヨタの次期社長である佐藤恒治氏は、事業改革構想を発表し、2026年に新プラットホームでレクサスの新型BEV(電気自動車)を商品化すると公表している。

しかし、今年はまだ始まったばかりである。3年以上先の世界では、テスラや中国企業であれば、今から企画しても、全くの新型BEVを2026年に発売可能であろう。たいへん申し訳ないが、これで世界で戦っていけるのであろうかと心配してしまう。

折しも、2022年に於ける「世界のBEV+PHEVブランド別販売台数TOP25」が公表されている。第1位は180万台以上を販売したBYD、第2位は130万台以上販売したテスラ、第3位は90万台のVW Groupと続く。しかし、日系企業では、第10位にルノー・日産・三菱連合、第23位にトヨタとなり、他の日系企業は圏外である。

筆者の勝手な予測かもしれないが、中国、米国、欧州の新序列は今後10年間も同様な形で推移するのではないかと思ってしまう。つまり、なかなか日系企業は上位に食い込めないであろう。

その最大の理由は、e-Mobility新時代に対して危機感が乏しいこと、スピードに対する希薄さ、コロナ終了で利益が回復していることへの安堵感ではないだろうか。

世界の主要な自動車業界が既に変わり始めており、まだ大丈夫と思っている日系企業はどうしても出遅れてしまっていると思えてならない。
https://www.ev-volumes.com/

2023年1月23日 和田憲一郎のビリビリ!とくる話

 ノルウェーのEV販売比率に驚愕!

2023年の年明けて、最も驚いたニュースの一つがノルウェーに関することである。

ノルウェー道路連盟によれば、2022年の同国の乗用車販売に占める電気自動車(BEV)の販売比率が79.3%に達したとのこと。これは2021年の64.5%を大幅に上回る記録的な数字である。あくまでBEVのみであり、PHEVは含まれていない。

ノルウェーはもともと、BEVには熱心であったが、それほど販売比率が高かった訳ではない。筆者がノルウェーを訪れた約10年前には約3%レベルであった。それから僅か10年あまりで驚異的な飛躍を遂げたことになる。

いろいろな分析があるが、カギは主に2つとされている。
一つは、政府が電動化への重要なインセンティブを導入したこと。BEV普及を後押しするため、通行料の無料化、駐車場、免税などのインセンティブを導入した。

もう一つは、充電インフラの充実である。国は大規模な充電ネットワークを展開し、南北1,700 キロメートルにわたって5600台を超える急速充電器を設置した。人口540万人に対して驚くべき数値である。人々の意識改革も加わったであろう。

ひるがえって、日本では2022年のBEV新車販売比率は1.7%に過ぎない。軽自動車EVも登場して健闘したが、まだまだである。しかし、日本でも、意識改革や有効な政策を打つことで、変革が起こる可能性もあるのではないだろうか。

2022年12月12日 和田憲一郎のビリビリ!とくる話

海外から熱視線!

12月5日スウェーデン大使館主催の「スウェーデン・日本サステナビリティサミット2022」にパネリストとして参加した。その時感じたことを述べてみたい。

この会合は、スウェーデン大使館が主催し、政府高官や産業界の関係者を招いて、エネルギー、モビリティ、サーキュラリティの3つの分野に焦点を当て、ディスカッションを行ったものである。

モビリティ分野では、なぜ日本がEV化に慎重で進まないのかと議論になった。2022年の新車販売では、欧州は電気自動車やプラグインハイブリッド車が約20%前後で推移している。しかし、日本では軽自動車のEVが発売され健闘しているものの、その販売比率は約4%前後に留まっている。

このため、海外からみれば、日本はEV化に遅れており、内燃機関車に固執していると思われているようだ。小職からは、10年前に世界に先駆けて三菱・日産から電気自動車を発売したが、その後、本格的に取り組まなかったことで、時流から乗り遅れてしまったこと。充電インフラに対しても、文化的な違いもあり、取り組みが遅れたことなどを説明した。

それに対し理解を示すものの、日本はなぜ勇気をもってチャレンジしないのかと疑問の声もあった。日本にいると、日本の論理だけで過ごしてしまいがちである。しかし、今回のように海外から改めて指摘を受け、熱視線を浴びることで、やはり自ら変革できるようにならなければと、ひしひし思ったものである。

2022年11月9日 和田憲一郎のビリビリ!とくる話

米国「インフレ抑制法」は生煮えだったのか

それにしても、バイデン大統領が2022年8月16日に署名したた「インフレ抑制法」は何だったんだろうと思ってしまう。

本来なら米国の法律であることから、海外からはとやかく言うことはあまりないが、今回は海外から言いたい放題のようだ。

欧州連合は、控除要件が「最終組み立ては北米で行われること」と規定されていることに対し、欧州から輸出する電気自動車や電池のほか、関連機器はカナダとメキシコの製品と同等に扱うよう要請を出した。これでは、米国の法律として意味をなさなくなる。

また、韓国政府は、インフレ抑制法は、外国のEVメーカーにマイナス影響を与え、韓米自由貿易協定(FTA)や世界貿易機関(WTO)などの国際通商ルールにも違反する恐れがあると強調した。その結果、韓国製EVにも同一の税額控除を適用したり、税額控除の施行に3年の猶予期間を設けることなどを要請している。

珍しく、日本も負けじと「1.北米地域以外からの輸入完成車が税控除の適用除外となったこと、2.バッテリー材料の調達・加工要件が米国または米国の FTA締結国に狭く限定されていること、3.バッテリー部品の北米での製造・組み立て要件が導入されたこと」に懸念を示し、日本メーカーのEVも優遇を受けられるよう意見書を提出している。

このように、ここまで海外からボコボコに叩かれる法案は珍しいのではないだろうか。やはり、突貫工事で作成した法案のため、NHTSAやCARBのように細部を詰めて出てきた法案とはとても思えない。

ある意味、選挙対策としての「インフレ抑制」法案だったのかもしれないが、逆にあまりにアメリカファーストを謳うことで、関係国との協力関係にひびが入らないか、気になるところである。

性急な法案は周辺国に混乱を招くという、良い例のように思えてならない。

2022年10月24日 和田憲一郎のビリビリ!とくる話

政府リスキリング認定対象分野があまりにも狭いのでは

岸田政権は先般、成長産業への労働移動を促す「リスキリング支援」に今後5年間で1兆円を投じる方針を表明した。

これは、日本で出遅れている産業に対し、新たな知識を身に付けることで、労働生産性を向上させ、既存の人材を再活用する方策であろう。

では、どのような分野が対象となるのであろうかと、政府HPを検索してみると、「経済産業政策局 産業人材課」が窓口となっており、その中に、「第四次産業革命スキル習得講座認定制度」が設定されている。

https://www.meti.go.jp/policy/economy/jinzai/reskillprograms/index.html

それによれば、リスキリング認定対象分野は次の3つである。また注記※にあるように1および2項の基礎・初級のITレベルは除く条件となっている。

1.AI、IoT、データサイエンス、クラウド
(デザイン思考、アジャイル開発等の新たな開発手法との組み合わせを含む)
2.高度なセキュリティやネットワーク
3.IT利活用(自動車モデルベース開発、自動運転、生産システムデジタル設計)
※1、2について、基礎・初級のITスキルは除きます。

筆者の感覚では、これは「リスキリング講座」というより、「プロフェッショナル
育成講座」のように思えてしまう。

言うまでもなく、自動車産業は日本の製造業の重要な柱である。喫緊の課題は、ガソリン車・ディーゼル車の知見・経験が主流であった自動車産業従事者を、新エネルギー車(電気自動車、燃料電池車、プラグインハイブリッド車)および開発に必要となるソフトウエア技術者を育成することであろう。

海外では、大手部品メーカーのボッシュが、世界40万人の社員に対して、今後10年間で2800億円を投じて、内燃機関技術者から電気自動車、ソフトウェア技術者に生まれ変わる計画を立てている。

そう考えると、日本のリスキリング政策は、プロフェッショナル育成のみならず、もっと大きな投網が必要のように思えてならない。

2022年9月26日 和田憲一郎のビリビリ!とくる話

中国でなぜかPHEV販売急増、これは必然なのだろうか

中国にてPHEVの販売が急増しているとのこと。思わず、えっ、と思ってしまう。というのは中国では圧倒的にBEV販売が多く、PHEVを手掛ける自動車メーカーはBYDなど少なかったからである。

しかし、9月25日付け報道によれば、8月の新車販売は、PHEVが対前年比で2.6倍増の14万4千台、1~8月の累計は2.7倍増の82万台とか。

もちろん、BEV販売は依然として多く、8月が対前年比93%増の52万台、8月までの累計では、対前年比2倍の304万台とのこと。

既にPHEVはBEVに対する販売比率27%まで迫ってきている。なぜこれほどPHEVが伸びたのかという問いに対して、中国関係者は、「中国のPHEV技術が先行者と肩を並べるまでに向上したこと」「PHEVに関する特許出願件数が全世界の約4割を占め、日本、ドイツを上回ったこと」を理由として挙げている。

また別の要因として、リチウムイオン電池などの原材料価格が高騰し、その結果、BEV価格が高価となり、手を出しにくくなってきたことも遠因であるだろう。

PHEVは日本やドイツの専売特許と思ってきたが、ここにきて中国も参入し、「三つ巴」の様相となってきた。いよいよ戦国時代の始まりであろうか。

2022年8月22日 和田憲一郎のビリビリ!とくる話

最近笑ったり、驚いた話題を2つ

イーロン・マスクがまたお茶目なことを8月17日Twitterに投稿した。”Also, I’m buying Manchester United ur welcome”。英国プレミアリーグのマンチェスター・ユナイテッドを買おうとのこと。クリスティアーノ・ロナウドが退団意向との噂があり、ここが底値と思ったのであろうか。

その4時間後、「これはTwitterで長く続くジョークだ。どのスポーツチームも買収していない」「とはいえ、もしそうするならマンUだろう。子供の頃から私のお気に入りのチームだ」と投稿。

マンU買収額は2800億円とも言われており、イーロンなら買えるかもしれないと、ニュース速報が流れたことに、思わず吹いてしまった。

もう一つが、中国ギガ上海にて8月15日、製造開始から3年で生産累計100万台を達成したことである。これには心底驚かされた。なぜかと言えば、電気自動車は自動車メーカーが生産したいと思っても、需要とそれに対応する電池供給が続かなければ、台数は大幅に増えないのである。

ちなみにアイミーブは全生産台数で約24000台、日産リーフでもこれまで約50万台強である。それを考えると、いかにテスラの販売台数の勢いがすごいかが判る。多くの自動車メーカーもEV化を推進しているが、このスピード感について行けないのではないだろうか。最近、世界と日本のスピード感が違うように思えてならない。

2022年7月25日 和田憲一郎のビリビリ!とくる話

 BYDの日本進出は黒船来襲に匹敵か

7月21日、BYDが日本で今後3車種のEVを販売するとの発表を聞いて、いよいよ来るべきものがきたと感じた。

BYDの強みは、これまで大量のEV生産・販売の実績、社内に豊富なソフトウェアエンジニアを抱えること、自社でリチウムイオン電池を生産できることにある。

ある意味、これはテスラにも当てはまり、王伝福氏、イーロン・マスク氏とカリスマ経営者が率いているところも同じであろう。

なぜ日本進出なのかとの問いに対して、私は3つを挙げたい。

1.日本市場のEV比率がまだ極めて低いこと
 国別でみると、日本市場は縮小したとはいえ、2021年の新車販売でも、中国、米国についで第3位(約445万台)に位置する。しかし、日本では、EVのシェアは0.5%に過ぎず、PHEVを合わせても1%である。ということは、これほど低いのであれば、これから伸びる可能性があると考えたのであろう。

2.EVバスでの経験が生きた
 BYDが日本にEVバスを持ち込んで以来、観光業者は価格が安く、世界で実績のあるBYDのEVバスを数多く導入してきた。BYDは、中国製車両が品質で厳しい日本で受け入れられるのかどうか慎重に検討してきたであろう。その結果、多くの導入実績から、例え中国製であっても、EVも日本市場に受け入れられると考えたのではないか。

 しかも、今回はテスラのようにオンラインではなく、約100箇所の販売代理店を構築しサービスを提供するとのこと。日本市場の顧客の実態にあった対面販売を採用し、橋頭保ではなく本腰を入れた戦略なのであろう。

3.日本の部品メーカーへのアプローチ
 もう一つ隠れた目的として、日本の部品メーカーへの関係深度があると思われる。BYDといえども、IGBTなど多くのパワエレ部品は日本企業に頼っている。ここでEVバスに続いてEV乗用車に進出することで、不足気味である半導体に関して、これまで以上に日系部品メーカーと繋がりを深めることができる、と考えたのではないだろうか。

 ひるがえって、日系自動車メーカーは、BYDの3つの強みに対する対応力が乏しい。BYDの正式価格はまだ公表されていないが、商品力は十分あり、リチウムイオン電池が自社生産であることから、意欲的な価格で攻め込んでくると考えられる。まさに、黒船来襲に匹敵するようなインパクトをもたらすのではないだろうか。

<ビーワイディージャパン株式会社のプレスリリース>
https://byd.co.jp/news/2022_0721_94.html

P.S.
乗用車の販売ならびに関連サービスを提供する100%出資子会社として、「BYD Auto Japan株式会社」の設立が同時に発表された。代表取締役社長に東福寺 厚樹氏が就任とのこと。東福寺さんとは三菱自動車時代に一緒に仕事をしたことがあり、この発表に驚かされた。

2022年6月27日 和田憲一郎のビリビリ!とくる話

 自動車産業の常識 vs.テスラの常識

最近話題になっていることの一つに、テスラがCCC(キャッシュ・コンバージョン・サイクル)で2021年度に初めてマイナスになったことが報じられた。

CCCとは、商品や原材料を仕入れてから、生産・販売して代金が手元に入るまでの平均期間を示したもので、テスラは2021年度に-15日になったとのこと。

自動車産業の平均CCCは日本で約55日、米国でもほぼ同様、中国は約75日とやや長めである。

私自身もこれまで、自動車産業は、材料手配から、生産・販売までを考えると、かなりの日数が必要なのは当たり前と思っていたことから、テスラがCCCで-15日になったことに驚かされた。

過去を紐解いてみると、テスラは2014~2015年にCCCで54日であり、その後、努力して低下させてきたようだ。

他社で強烈な企業はアップルであり、CCCは-74日とのこと。1996年は+70日であったが、スティーブ・ジョブズやティム・クックがCCC低減に向けて指示を出し、年々低下させてきたようだ。-74日ということは、仕入れ先に支払うはるか前に販売代金が入金されていることを意味する。

今まで自動車産業はCCCが長いことが常識であり、またCCCをマイナスにするよう目標を打ち出したことも聞いたことがなかった。

しかし、世界の優良企業はこれも目標を立てて取り組んできた。商品開発のみならず、このような別の指標に対しても行動してきた結果が、大きな差異となったのであろうか。