2025年

2025年4月21日 和田憲一郎のビリビリ!とくる話

米国車の「非関税障壁」指摘を考える

メディアでは米国車の「非関税障壁」が話題になっているが、何だか分かりにくい。そこで、米国商務省が3月末に発表した「2025年版:外国貿易障壁報告書」を紐解くと、米国車に関する「非関税障壁」事例が列挙されている。これについて考えてみたい。

・米国連邦自動車安全基準認証が日本の自動車安全基準と同等の保護レベルを提供しているものとして認められていない。
⇒国交省が定める「輸入自動車特別取扱制度」への言及であろうか。具体的な指摘がないので、交渉に多くの時間を要するのではないか。

・リモートキーレスエントリーやタイヤ空気圧モニタリングシステムを含む短距離車両通信システムの周波数が、世界的な整合化に合致していない。
⇒これに関しては、2025年2月、日本は電波法施行規則を改正し、世界的な周波数である433.92MHzに改めている。

・ZEVへの補助金で外国車差別を指摘。主に日本のメーカーが最も恩恵を(例:FCEVに対して最大255万円の補助金)を受けている。
⇒輸入車に関しては、米国車のみなずBYDなどでも課題となっている。

・充電ステーションへの急速充電に関する補助金支給は、日本独自のCHAdeMO規格への準拠を義務付けている。
⇒CHAdeMO規格の急速充電器は、多様な車種にも充電できるため補助金を交付されている。スーパーチャージャーはテスラ車にしか充電できないことから、汎用性を欠くという観点であろうか。

・高速道路のサービスエリアには、CHAdeMO規格の急速充電器が設置されており、他規格(テスラのスーパーチャージャー)は、高速道路から出なければならないこと。
⇒国土交通省は、2023年以降、充電を希望するEV所有者が2時間、高速道路から無料で退出および再進入できる取り組みを実施している。

これらの規制緩和を行ったとしても、米国車の販売増加に繋がるかは疑問である。第2次トランプ政権は成果を欲していると思われるので、筆者の勝手な意見かもしれないが、輸入車(主に米国車)を公用車として適用拡大してはいかがであろうか。

2025年3月24日 和田憲一郎のビリビリ!とくる話

BYD「スーパーeプラットフォーム」は充電インフラの起爆剤となるのか

BYDは3月21日、BEVの充電速度をガソリン車の給油速度と同じにする「油電同速」を実現するために、「スーパーeプラットフォーム」を発表した。

この新プラットフォームの詳細は明らかになっていない点もあるが、新型バッテリーにより最大1000Aの充電電流と10Cの充電レートを実現し、5分間で最大400km分の充電が可能となるようだ。

BYDはこれに合わせて、中国全土で4000か所以上に新型バッテリー対応のメガワット級フラッシュ充電ステーションを展開するとしている。

思い返せば、昨年3月には、ガソリン車よりも安い電気自動車「電比油低」というスローガンを掲げ、低価格戦略を発表ことが思い出される。この戦略により、他のBEV/PHEVメーカーのみならず、ICEやHEVの合弁ブランドも大打撃を受け、販売台数が大幅に減少した。

約1年経った今、BYDが「油電同速」のスローガンを掲げたことは、今年は、BEVの充電時間を解決する新技術を、新戦略として打ち出す意図であろう。

今回の発表でも、バッテリー寿命への影響や充電インフラの設置基準など不透明な点も多いが、BYDが自信を持って発表したことは脅威である。

日本の自動車メーカーでも、既存の方法に満足せず、充電インフラに関して新たな方法を模索することが急務となるのではないだろうか。

2025年2月25日 和田憲一郎のビリビリ!とくる話

日本の自動車産業は「前門の虎、後門の狼」なのか

日本の自動車産業に著しく閉塞感が漂ってきたように思える。
内燃機関からEVシフトへの移行が遅れており、これを取り戻そうとした大手自動車メーカーの経営統合も破談に終わった。結局、海外勢から立ち遅れていた日本の自動車産業は挽回が難しいのであろうか。

内燃機関車は次第に包囲網が狭められている。世界的な環境規制が厳しくなり、例えば、欧州では、2025年から企業平均燃費(CAFE)規制が94g/kmに強化される。このCAFE規制では、CO2排出量が基準値を1g超過するごとに、販売台数1台当たり95ユーロ(約15,000円)の罰金が課される。どの日系自動車メーカーも、対策に悪戦苦闘している。

また、米国の企業平均燃費基準(CAFE)に関しては、第2次トランプ政権発足と同時に、バイデン政権時代に策定した内容の見直し方針が出された。今後緩和が予想されるが、日系自動車メーカーにとっても厳しいことに変わりはない。

一方、ではEVシフトに対してうまくいっているかと問われれば、OTA、e-Axle、ギガキャストなど、革新的技術を素早く導入できす、米国や中国に差をつけられている。

さらに、自動運転技術に於いても、テスラが提唱した生成AIによるE2E(End to End)では追随できていない。逆に、中国の新興自動車メーカー小鵬汽車(シャオペン)などではE2Eを標準搭載すると表明している。追い打ちをかけるように、中国発の生成AIであるDeepSeekでは、公開後、多くの中国自動車メーカーが搭載を公表した。残念ながら日本勢は生成AIの動きに全くついていけてない。

このように、日本の自動車産業は、前門の虎、環境規制など内燃機関を縮小させる動きに対応できておらず、EVシフトを進めようにも、後門の狼、つまり、中国勢、米国勢が進める新技術に対応できていないのが現状ではないだろうか。

今後どうすべきか。このような閉塞感を感じている時は、脚下照顧の如く、今一度、現状を冷静に見つめなおすことが大切のように思えてならない

2025年1月27日 和田憲一郎のビリビリ!とくる話

孫正義氏は虎の尾を踏んだのか

自動運転車の分野では、生成AIの飛躍的進化により、E2E(End to End)と呼ばれる新技術が誕生している。この技術は、カメラなどのセンサーから得た情報を生成AIが判断し、ステアリング、アクセル、ブレーキなどの出力制御を行うものである。

この分野の先端を行くのがテスラであり、同社は100億ドル(約1.5兆円)の投資を表明している。また、イーロン・マスク氏自身も「xAI(エックスエーアイ)」というAI企業を設立し、自らAIのリーダーであるとの自負を持っている。

しかし、2025年1月21日、ソフトバンク、オープンAI、オラクルのトップがトランプ政権を訪問し、「スターゲート」と名付けた共同事業について、今後4年間で合計5000億ドル(約78兆円)を投入すると公表した。

この案件に対して、マスク氏はスターゲートに対して公然と批判を開始している。例えば、ソフトバンクはそれほど資金を持っていない、またオープンAIのアルトマン氏とは訴訟中であり、元々そりが合わないなどである。

以前に、マスク氏は自身がアスペルガー症候群であることを公表しており、この症状はこだわりが強く、感覚の偏りがあるとされている。このようなことから、マスク氏はファイティングポーズを取り始めたのではないだろうか。

そもそも、スターゲートは事前にマスク氏に相談されていなかったようにも思える。そうなると、第2次トランプ政権にて新設された「政府効率化省(DOGE)」のトップであるマスク氏がどのような対応を取るのか。また、トランプ氏とさえ握っていれば良いと考えた孫正義氏は、虎の尾を踏んでしまったのではないだろうか。

今後のバトルが楽しみである。