日米の非関税措置の見直しは、テスラ優位に働くのか
日米間の関税交渉において、自動車分野の非関税措置に関する見直しが発表された。筆者の見解では、今回の変更は米国のBEVメーカー、特にテスラにとって有利な内容であると考えられる。
まず、日本の電動車に対する補助金制度については、これまでBEV:最大90万円、PHEV:最大60万円、FCEV:最大225万円と設定されていた。これに対し、米国通商代表部(USTR)は、FCEVへの補助金が他の車種と比較して著しく高額である点を問題視し、日本政府は制度の見直しに同意した。
今後の詳細は未定であるが、おそらくFCEVのみの補助金見直しとはならないであろう。参考となるのは、米国のインフレ抑制法(IRA法案)において、車両価格が55,000ドル以下であることを条件に、BEV・PHEV・FCEVは、いずれにも最大7,500ドル(約110万円)の控除が適用されている。
当該法案はトランプ政権により撤廃予定であるものの、考え方としてこれが参考となるのではないか。そうなれば、日本でも補助金はカテゴリーに関わらず統一される可能性が高くなる。その場合、テスラおよび2026年に軽EV発売を予定しているBYDなどが従来以上に恩恵を受けることが想定される。
加えて、充電インフラの補助金制度についても見直しが検討されている。現状、日本国内では急速充電器の約90%以上が「CHAdeMO」規格に対応しており、汎用性の高さから補助金の対象となってきた。
一方、テスラの「スーパーチャージャー」は同社の車両専用であることから補助の対象外となっていた。
しかし、今回の合意により、テスラの車両に加え、今後日本に導入される「NACS(北米充電規格)」対応車両にも補助金が適用される見通しとなった。この改正も、結果的にテスラに有利に働くものであると考えられる。
米国では、トランプ大統領とテスラのイーロン・マスク氏との間に対立が報じられているものの、今回の交渉結果を見る限り、実質的にはテスラの事業展開を後押しする方向でまとめられたと言えるのではないだろうか。