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2021年7月19日 和田憲一郎のビリビリ!とくる話

織り込み済みのメーカーとサプライズのメーカー

欧州委員会は7月14日、ガソリン車など内燃機関の新車販売について、2035年に禁止する包括案を公表した。

これに対して驚かれた方も多いと思う。また欧州自動車工業会は「特定の技術を禁止することは合理的でない」と表明し反発している。

しかし、筆者から見ると、欧州委員会は、法案提出権を持つ実質の行政執行機関であり、このような重要法案に対して、事前に水面下で欧州連合理事会や、各国の市民代表である欧州議会に対して根回しをし、ほぼ法案通過の見込みがついたこと、また包括案の準備が整ったことから、公表に踏み切ったとみることが妥当ではないだろうか。

つまり欧州委員会は数か月前から事前交渉していたのであり、欧州自動車工業会はガソリン車業界に配慮して反発のポーズをみせているものの、VWなど大手自動車メーカーに表立った動きはない。本案は既に織り込み済みなのである。

ひるがえって、日系自動車メーカーはニュースに驚き、戦略の見直しを迫られている。欧州環境規制は、環境への配慮の面と、地域への戦略的な産業振興という面もある。包括案にて規制の前倒し競争は終止符が打たれ、一気にEV化が加速していくと思われる。

2021年6月28日 和田憲一郎のビリビリ!とくる話

 Tesla『シルクロード』スーパーチャージャー・ルート

最近驚いたことの一つに、Teslaが構築した『シルクロード』スーパーチャージャー・ルートがある。

これは、5000kmにおよぶシルクロードに、27か所のスーパーチャージャーを設置し、移動可能にしたとのこと。

歴史的ランドマークであるシルクロードに、中国でもなく、ドイツでもなく、米国の自動車メーカーが最初に設置したことで、その構想力や実行力に驚かされた。

計画ではこれに留まらず、最終的には上海からロンドンまでスーパーチャージャーを繋ぎ、『マルコポーロ』スーパーチャージャー・ルートを完成させるとのこと。

1200年代後半、マルコポーロが24年かけて旅をし、「東方見聞録」を完成させた道を、今度は現代人がクルマ(EV)で旅することができるのであろうか。なんとも夢のある話である。

Tesla China silk road PV
https://www.youtube.com/watch?v=A8UZhpifmfc

2021年5月17日 和田憲一郎のビリビリ!とくる話

 街作りやプラント作りにはプロセス開示も大切では

インターネットの発達により、COVID-19環境下でも、海外の街作りやプラント建設状況が公開されており、日本に於いても見ることができる事例が多くなってきました。

例えば、2018年末に訪問した北京南西に位置する新都市の雄安新区では、当時は地域全体の計画を示す展示場しかありませんでしたが、現在では巨大な雄安駅や、無数のオフィス・住居ビルが次々と建設されています。

また、プラントでは、テスラの独ギガベルリンや、米国ギガオースティンなどもリアルタイムではありませんが、かなりの頻度で状況公開しています。

ということは、これらの街作りやプラント建設は、単に進捗状況を知らせるだけでなく、投資家や、今後ここで働くことになる多数の人々にイメージをもってもらうことも目的としているのではないでしょうか。また言うまでもなくファンづくりの意味もあります。

ひるがえって、日本では何か新しい街づくりやプラント建設があったとしても、完成まで公開することはほとんどありません。静岡に建設中のトヨタWoven Cityなども同様です。

ここ数年、日本が他に後れを取ってきていることと、このように情報公開をためらい、殻に閉じこもっている考え方が影響しているように思えてなりません。

ご参考に、代表的な事例を2つ紹介します。

雄安新区:
https://www.youtube.com/watch?v=qqfoa98yQN4&t=276s

Tesla Giga Berlin:
https://www.youtube.com/watch?v=dM3C1Ay7qzs

2021年4月21日 和田憲一郎のビリビリ!とくる話

欧州発によるPHEVの終わりの始まりか

 実は、4月17日ロイターの報道に驚かされました。グリーンファイナンスに関するEU規則草案にて、2025年以降メーカーがPHEVを「サステナブル投資」に分類することを禁じるため、投資意欲を減退させる可能性があると報じたものです。

 まだ草案段階にも係わらず、これを報道することに驚かされるとともに、もし実現するとPHEVにとっては致命的になると思ったからです。

 欧州自動車メーカーは反発しているものの、2028年までの欧州製造計画では、EVが86車種製造される予定であるのに対し、PHEVはわずか28車種に減っているとのこと。現在、販売比率が50:50であることを考えれば、欧州自動車メーカーは草案を見通して、既に軸足をPHEVからEVに移しているようにも見えます。

 思い返せば、昨年9月に米加州のニューサム知事が、2035年に州内で販売される新型車は「ゼロエミッション車」を義務づけると発表した時、これで多くのガソリンスタンドが廃業となることから、結果的にPHEVも減るのではと思いました。

 しかし、それは米国の話であり、欧州ではまだ大丈夫との思いがあったのですが、まさかCO2規制やLCAではなく、サステナブル投資にてPHEVが規制の対象になるとは予想もしませんでした。まさに、欧州発によるPHEVの終わりの始まりなのでしょうか。

 欧州の動きを受けて、中国はもともとPHEV比率が少ないことから、NEVのPHEVクレジットを下げるなど、PHEVの価値(ポジション)を下げるかもしれません。

 日本では、これからPHEVだと思っている自動車メーカーもあると思いますが、世界は想像以上のスピードで動きつつあり、必死にくらいついていかないと生き残れないような気がします。

2021年3月22日 和田憲一郎のビリビリ!とくる話

米国のEVに対する新政策

 EVに関する報道が多いので、日頃それほど驚かないが、先日、米国上院議員で院内総務を務めるチャック・シューマー氏が、メディアのインタビューで明らかにしたことに驚かされたので、少し紹介したい。

 骨子は、バイデン政権にて、エンジンからバッテリーへの動力源の転換を目的とした「Cash for Clunkers 2.0」が実施されるかもしれないとのこと。”Clunkers”とはとはポンコツ車を意味するもので、2009年には既に
「Cash for Clunkers」(燃費の悪い旧式車から低燃費車への買替補助制度)が行われた実績を持つ。

 大きな柱は以下3つのようだ。
・EVの購入者に現在適用されている税控除額は7500ドル(約81万6000円)を上回る。
・内燃エンジンの製造を段階的に取りやめ、EVを生産するために工場や施設を
 改修する企業に、170億ドル(約1兆8500億円)を支給する案を盛り込む。
・充電インフラに450億ドル(約4兆9000億円)を投資する。

 まだ未確定のためか、それほど大きな記事ではなかったものの、上院議員で院内総務を務めるシューマー氏が言い始めることで現実味を持つ。トランプ政権とは異なり、一気にEV化を推し進めようとする政権としての意気込みであろうか。それにしても、掛け声だけの日本はどうするのだろうか。

2021年2月15日 和田憲一郎のビリビリ!とくる話

アップルカーの条件

 アップルが販売する、いわゆるアップルカーについて、話題のためか、意見を求められる機会が多い。筆者は当事者でないので、真偽は不明であるが、もし2024年~2025年に販売しようとすれば、少なくとも本年度中に相手先を決め、取り掛かる必要があるように思えてならない。

 そのため、もし筆者がアップル自動車事業の責任者だった場合、どのような条件を考えるのか、彼らの頭の中を想像してみた。

 まず、アップルはクルマに関して、調査・研究はしているものの、実際にクルマを開発・製造したことはない。このため、iPhoneのように、自社開発し、製造はEMS大手の鴻海精密工業(フォックスコン)などに製造委託するという訳にはいかない。

 つまり、候補となる自動車メーカーは製造委託というより、ある意味、共同開発のパートナーとして扱う必要があるのではないだろうか。その場合、ジョブシェアや責任範囲など、調整に相当時間を要すると推察される。

 では、候補自動車メーカーを考える時、どのような条件を設定するのであろうか。筆者は少なくとも下記3つの項目は必須と考える。

1.EVに関する量産経験を有すること
 これはとても大切である。アップルは初年度でも10万台、数年後にはテスラに匹敵する年間50万台以上を想定しているであろう。そのため、少量しか生産経験がない自動車メーカーでは、経験不足とみるのが妥当ではないだろうか。

2.自動運転で数多くの知見・経験を有すること
 アップルは当初は完全自動運転でないにしても、将来は自動運転を視野に入れていると思われる。その場合、アップルが元自動車エンジニアを集めて調査・研究していても、やはりクルマとしての挙動など、どうしても自動車メーカーとのタイアップが必要となる。そのため、自動運転に関する知見・経験があることを求めるのではないだろうか。これは自動車メーカーとの共同開発エリアになろう。

3.電池供給を自らの判断でコントロールできること
 実はこれが最も重要かもしれない。アップルはモノ作りは自ら手掛けないため、電池メーカーからの供給を受けるであろう。しかし、EV化が急激に進展するにつれ、世界的にどの電池メーカーも余裕がなくなってきている。

 つまり、優先的に電池を確保し、コスト的にも安価で抑えようとすれば、自動車メーカーにて電池ボリューム、価格をコントロール出来ることが望ましい。そう見渡すと、例えば、自動車メーカーでありながら、元々電池メーカーであったり、電池部門を社内カンパニーとして内包していたが、現在は外部に出して独立させているところもある。いずれも自ら電池生産ボリュームをコントロール可能とみるべきであろう。

 このように考えると、世界中で候補となる企業は限定されるのではないだろうか。ただし、これはアップルの思惑だけで決まるものではなく、候補企業の考え方にもより、これからどのような選択となっていくのか、楽しみである。

2021年1月18日 和田憲一郎のビリビリ!とくる話

日本型スマートシティの未来とは

 最近、スマートシティについてたびたび聞かれる。しかし、聞かれるたびに、特に日本型スマートシティは「なんだかなぁ・・・」と思ってしまうのである。

 世界中でスマートシティと呼ばれるプロジェクトは40以上と言われている。有名なところでは、中国の北京南西に位置する「雄安新区」であろう。また米国オハイオ州コロンバス市は全米のスマートシティコンテストに優勝し、一躍有名となった。

 コロンバス市は訪問したことがないが、雄安新区は以前に訪問したことがある。当時は展示場など数か所の建物だけであったが、最近のニュースによれば、雄安新区駅もほぼ完成し、駅のプラットホームは高鉄(日本の新幹線)路線が約20本もあるとか。上海虹橋駅並みの巨大な駅である。

 さて、筆者が思うスマートシティは、最初に都市計画と都市交通がセットで計画されるべきと思っている。雄安新区などは、都市計画のグランドデザインを描いた上で、空港、高鉄、高速道路、地下鉄など、最新の都市交通システムを載せている。

 とろこが、日本で進めるスマートシティは、土地の狭さもあるのかもしれないが、そのようなことはほとんど反映されていない。静岡で進める「Woven City」でも、あくまで実証試験都市という位置づけのためか、そこにたどり着く都市交通は配慮されず、域内で運行するモビリティ、IoT、MaaSなどが検討されているのみである。

 他のスマートシティ、例えば、東京港区竹芝地区で進めるスマートシティも、浜松町の駅が隣接するためか、IoT、ビッグデータ、ネットワークの拡張に主眼が置かれている。

 結局、日本で行っているものは、スマートシティというより、スマートタウン、町内という意味でのスマートブロック、もしくはスマートビルに留まっているように思えてならない。冒頭「なんだかなぁ」とつぶやいたのはその理由である。

 日本でも過去に大きな都市創造は行われた。例えば、長岡京から、平安京への遷都である。長岡京が設立10年で度々の水害にみまわれ、急遽、東側に平安京を遷都実施した。中国長安をモデルに設計され、条坊制(いわゆる碁盤目状)を本格的に施行したことは有名である。

 このように考えると、各地に複数のスマートシティ実証試験都市として創るよりも、東京付近ではなく、少し離れたところに、人口20~30万人程度が住める都市構想をぶち上げてはどうだろうか。

 地方は疲弊しており、活性化も含めて、実際に日本型スマートシティをリアルワールドとして創ることで、見えてくる課題や未来形もあるのでないだろうか。

2020年12月21日 和田憲一郎のビリビリ!とくる話

出し惜しみなのか、出せるネタがないのか

 昨日、第14回日中省エネルギー・環境総合フォーラムの「自動車の電動化・スマート化分科会」に出席した。

 日中省エネルギー・環境総合フォーラムは、省エネや環境問題に対して、日中が毎年相互に開催しており、昨年は東京開催だったので、今年は北京開催の番であった。新型コロナの影響もあり、主催者は中国側であるものの、初のオンライン開催となった。

 筆者も自動車メーカー在籍時は、北京開催の時に講演した経験がある。参加者は自動車の専門家であり、どのような発表を日中で行うのか、お互いに関心をもっている会合である。

 さて、今回の分科会は中国側5人、日本側5人が講演したが、筆者の印象では、日本側が何となく出し惜しみしているように感じた。

 中国側は、EV用電池で世界最大となった寧徳時代新能源科技(CATL)の創業者で、現在は副董事長を務める李平氏が、CATLが考える将来の電池の方向性などを説明したり、ZTEの子会社が、テスラモデル3の統合ECUに匹敵するAIチップを開発して、量産化したなど、多くの力作があったように思えた。

 一方、日本側はトヨタが新型ミライFCVの開発経緯について発表があったものの、全体として乏しいように思えた。会合が終わってから、これは出し惜しみなのか、それとも出せるネタがないのだろうかと思ってしまった。

 自動車や関連するIT、AI、エネルギー、都市交通など、中国側は急速に力をつけてきており、日本から学ぶものがないと思うと、この分科会も次第にすたれていってしまう。そんな危機感をもった会合であった。

2020年11月4日 和田憲一郎のビリビリ!とくる話

テスラ モデル3のプロジェクトマネージャーに敬意

 先週、テスラ モデルSとモデル3の分解を視察する機会があった。時系列でいえば、モデルSが先に発売され、モデル3が後に出たクルマとなる。

 この2つのクルマを見比べて、改めて驚かされたことがあった。一言でいうと、モデルSは手作り品、モデル3は50万台製造を前提にした完全なる工業量産製品という感じである。

 紙面の関係で詳細に説明できないが、電池パックの統制された考え方や、これまで60~70個あったECUを3つのECUに取りまとめたこと、さらには自動運転に対応した統合ECUの採用など驚きの連続である。

 もし私がテスラ モデル3のプロジェクトマネージャーであれば、このようなことが実施できたかと自問すると、あまりにもリスクが大きいことや、取引先との関係が破壊されてしまうこと、統合ECUはAIへの技術完成度に対する不安などによって、モデルSからの一部改良に留まってしまうように思えてならない。

 しかし、現実にはモデル3にて、これまでの自動車エンジニアでは躊躇してしまう大胆なアイデアを多数搭載しており、その見識と実行力に敬意を表さずにはいられない。

 おそらく、開発中も、設計・実験部隊から「ムリだ!」「出来ない!」「利益が出ない」「日程に間に合わない!」など突き上げることが多く、胃に穴が開くような状態だったのではないだろうか。そのような中で、多くの隘路を上手く差配しながら、量産に漕ぎつけた力量は驚きである。

 テスラの将来性はどうかという人がいるが、テスラの強みは、このような優れたプロジェクトマネージャーを採用し、育成していることかもしれない。

2020年10月7日 和田憲一郎のビリビリ!とくる話

クルマが先か、インフラが先か

 最近、燃料電池車(以下FCV)の将来性について聞かれることが多い。背景には、米国で二コラという会社が、FCVトラックを開発し売り出しそうとしているだとか、中国にてFCV開発企業に奨励金を出すなど、状況を気にしている人が多いようだ。

 しかし、ガソリン車と違って、EVやFCVはクルマ単独のスタンドアローンでは済まない。EVが出現した時も、クルマが先か、充電インフラが先かの議論があった。当時は、いくら試作車を見せても、充電インフラ企業はなかなか投資に踏み切れず、結果として日本では、クルマが先、インフラが後となった。もしくは自動車メーカーが自ら設置していった。

 一方、欧州などでは、i-MiEVやLeafが発売されたことを見て、充電インフラに関する年次計画を立て、インフラが先、クルマは後とした国が多かったように思える。

 さて、冒頭の話であるが、筆者は、FCVに関して、日本のみならず海外の国々でも、クルマうんぬんより、水素ステーションのインフラが先でないと発展しないのではないかと伝えている。というのは、EVであれば、家でも充電できるが、FCVでは水素ステーションがないと、どうにもならない。また経路充電(充填)のように、移動ルートにピンポイントにあっても不十分であろう。

 もし日本で普及させるためには、現在のように100箇所あまりではなく、例えば、EV向けのチャデモ式急速充電器が現在約8000基あることを考えると、少なくともその半分、4000基程度を2030年ぐらいまでに設置することが必要ではないだろうか。

 問題は、それを誰が設置し、どのようにして事業として運営し続けられるかであろう。筆者の勝手な考えでは、これもFCVを販売する自動車メーカーの領域のように思えてならない。

2020年9月14日 和田憲一郎のビリビリ!とくる話

もはやEVビジネスは資金力が決め手か

 報道によれば、米国ベンチャー企業のルーシッドモーターズが2021年にもEVセダン「エア」を発売するようだ。それほど有名ではなかったが、近年、モデルSで開発を指揮したピーター・ローリンソン氏をCEOに迎えて、開発を加速してとのこと。

 以前に幾度か、日本で新型EVを開発する場合、ベンチャー企業であれば、どれくらいの技術者と開発費が必要かと問われたことがあった。その時、あくまで、うどんで例えれば、素うどんレベルのEVで良ければ、技術者100人、開発費200億円と答えていた。

 なぜ日本でEVベンチャー企業が育たないのかと良く聞かれるが、日本では出資を募っても、10億円~20億円レベルがせいぜいであろう。しかし、これでは数ヶ月で使い切ってしまう。結果として、クルマは完成しない。日本でも、EVを開発してみたいと相談に来る人がいるが、技術者や開発資金についてそのように説明している。

 時代は変わり、最近のEVはパワートレインだけでなく、自動運転やIoTとの連携も必要となってきた。テスラのモデル3レベルのEVを開発するとなると、素うどんではなく、鍋焼きうどんレベルとなる。そして、EVベンチャーとして成功するためには、技術者500人、開発費1000億円以上を揃える必要があるように思う。

 今回のルーシッドも、どうやって開発費を捻出したのかと思っていたら、サウジアラビア系のファンドから10億ドル超の出資を受けているとのこと。さもありなんである。

 最近のEVはますます高度化しており、開始前に資金や高度な技術者をどうやって集めるかが鍵となる。このため、自動車メーカーを除いて、ベンチャー企業で存続出来るのは、ファンド、エンジェルなど巨額の資金が集まり、かつ高度技術者が募集しやすい米国と、政府系支援が受けられる中国に限られるのではないかと思ってしまう。もはやEV開発はそんな時代になったのであろうか。

2020年8月17日 和田憲一郎のビリビリ!とくる話

内部の視点、外部の視点

 COVID-19の影響により、世界各国で自動車産業が低迷しており、日本もその例にもれない。また、各国の自動車関係者も渡航が禁止されており、フラストレーションがたまる状況ではないだろうか。

 そのような中、8月に入って、中国や欧州から日本の自動車産業の現状や将来動向に関する問い合わせが複数届いている。この時期、なぜかと改めて考えてみると、自分の中では、中国、米国、欧州に比べて、日本の自動車産業はそれほど大きくない位置づけである。東京モーターショーにも、ドイツメーカー以外はほとんど参加していない。

 しかし、新車販売台数を国別でみると、2019年は、中国、米国についで第3位である。その後に、ドイツ、インド、ブラジル、フランスなどが続く。

 少子高齢化が進む日本であるが、海外からはまだ世界第3位の新車販売台数国である。言うまでもなく、海外での生産車両も多い。このため、特に日本の市場動向や技術動向に関して、まだまだ耳目を集めているのではないだろうか。

 COVID-19にて、日本の自動車産業は燦々たる状況にあるが、一方、海外は日本がどのように復活しようとしているのか、見つめていることも忘れてはならない気がする。外部の視点からは、まだまだ期待している声があるからであろう。

2020年7月20日 和田憲一郎のビリビリ!とくる話

今、日産新型EV「アリア」発表の意味とは

 日産自動車は先週の7月15日、オンライン(Youtubeも配信)による新型クロスオーバーEV「アリア」の新車発表会を行った。昨年の東京モーターショーでもコンセプトカーが展示されていたので、「あれっ、もうなの?」と思ったものである。

 しかし、聞いてみると発売は2021年半ばからとのこと。発表から発売まで1年もあることに驚かされた。一般的に、自動車会社はあまり早く新型車を発表することはリスクを伴う。デザインの陳腐化や、車両のスペック・新技術の内容をある程度公開せざるをえないからである。

 そのため、出来る限り発表と発売を近づけようとする。但し例外もある。量産型EVである三菱「i-MiEV」や日産「リーフ」の場合、早くから発表して、かつ発売時期を公表していた。というのも、EVという知名度を高めるとともに、これまでにない充電インフラ(普通充電、急速充電)の準備を進めるため、多くの企業の支援や期間が必要であったからである。

 しかし、既に充電インフラがほぼ整った現在、日産がこのように早く発表したのは、お家の事情があるのではないだろうか。前期の大赤字、また今期も新型コロナの影響で経営環境が厳しくなる中、花火を打ち上げて、世の中にアピールするとともに、日産社内、取引先に対しても、日産の意気込みを示す必要性に迫られてのことだと推定する。

 発売1年前ということは、まだ試作車段階のレベルであろう。開発目標(コスト、重量、電費、航続距離、冷暖房時の熱損失、各部品の信頼性など)は高く、かつ新機能がてんこ盛りため、達成度の多くは未達と思われる。

 そして、これから量産に向けて各部を詰めれば詰めるほど、マイナスの要素が増えてくる。またコスト・重量と、要求機能の向上など、二律背反なども増えてくるであろう。

 しかし、自動車会社は、失った信頼は、新しいクルマで取り返すしかない。今回、経営陣も不退転の決意で発表しており、開発陣も死にものぐるいで対応しているのではないだろうか。筆者の経験でも、二律背反は、新たなアイデアや小さな改良の積み重ねにより乗り越えられることも多い。

 新型EV「アリア」が、全世界の自動車会社からみて、「これこそ第二世代のEVだ、お手本だ!」と思えるようなクルマに、ぜひとも育てていただきたいと願わずにはいられない。

2020年6月22日 和田憲一郎のビリビリ!とくる話

ChaoJi(チャオジ)に中国は本気だ!

 先週金曜日の6月19日、「日中合同による次世代超高出力充電規格に関するイベント」に出席した。これは中国電力事業者連合会とチャデモ協議会が、日中共同にて開発中の次世代超高出力充電規格(プロジェクトコード:ChaoJi/チャオジ:中国語で超級)に関して、ChaoJi白書およびCHAdeMO3.0の発行を記念して行ったものである。

 当日は、新型コロナの影響も反映して、日中間によるオンライン発表であった。それにしても驚かされたのが、中国側は主催者である中国電力事業者連合会だけでなく、中国最大の電力会社である国家電網の幹部も多数参加して、意見を発表されており、このChaoJiに対する並々ならぬ意気込みが感じられた。

 なぜここまで気合が入っているのかと考えた時、背景としては以下であろう。現在、世界の急速充電規格は主に5つに分類される。日本発で国際規格となった「CHAdeMO」規格、このCHAdeMOと類似した中国の「GB/T 20234.3」規格、欧米にて採用が進む「CCS(Combined Charging System)」規格、ルノーなどが推奨しているAC急速充電規格、最後に米Tesla社が設定した「Supercharger」規格である。

 そして、今回のChaoJiは、日中だけでなく、他の規格もChaoJiにハーモナイズする可能性があるからではないだろうか。中国にとっては、名前を中国語で超級とつけた経緯もあり、将来の世界統一規格を意識して、関係者の熱い思いとなったのではないかと思われる。

 日本にとっても、ChaoJiが拡大する市場は、おそらく中国が多いであろし、ビジネスチャンスとして日中共同開発にて進める価値は高いように感じた。

2020年5月25日 和田憲一郎のビリビリ!とくる話

米国大手レンタカー会社の破綻

 新型コロナの影響により、多くの企業が苦境に陥っているが、5月23日米国大手レンタカー会社「ハーツ・グローバル・ホールディングズ」(通称Herts)が米連邦破産法11条の適用を申請し、経営破綻となったことには驚かされた。報道によれば、米政府支援も得られなかったとのこと。

 筆者は、Herts #1Club Goldメンバーだったこともあり、米国出張時によく利用したものである。筆者の印象では、他のAVIS、Alamo、Budgetなどと比較して、若干高いものの、車種が豊富であり、サービスも迅速で、高評価していた。

 特に空港に着いた後、Hertsの巡回バスに乗ると、自分のカードを見せるだけで、借りた車両番号がバス内に表示され、Herts駐車場に着くと、その番号に行けば既にクルマのキーと借用書が置いてあり、そのままパーキングでチェックを受けるだけで、外に出て行けるなど本当に便利であった。

 実は、自動車会社から見れば、Hertsのようなレンタカー会社はとても重要であり、フリート車と呼び、市場で売れない場合、もしくは売れ残ってしまったクルマを大量に流す受け皿の役割を担っていた。しかし、今回Hertsが破綻し、他のレンタカー会社も同様であろうから、自動車会社にとっては、受け皿がなくなり、経営的に販売不況とともにダブルで苦境に陥ると思われる。

 IATA(国際航空運送協会)によれば、国際線の需要回復は2024年になるとの見通しも出ており、レンタカー会社、自動車会社も当面我慢の時期が続くのではないか。

2020年4月20日 和田憲一郎のビリビリ!とくる話

コラムと映画のシンクロニシティ

 長年あたためていた内容を、4月17日にアイティメディアより「電気自動車とはいったい何なのか、今もつながるテスラとエジソンの因縁」(下記参照)というタイトルにてコラム寄稿しました。

 これは、ニコラ・テスラとトーマス・エジソンによる、電力システムは交流か直流かという、いわゆる「電流戦争」の題材を扱ったものであり、ニコラ・テスラが現在の電気自動車に多大な貢献と影響力を及ぼしていることを書いたものでした。

 しかし、なんという偶然でしょうか。最近知ったのですが、二人の電流戦争については、ちかじか映画の公開があるのです。元々、映画そのものは2017年秋に収録されたものの、創業者がセクハラで訴えられるなどの騒動があり、再度一部を撮り直して、米国では2019年10月に「THE CURRENT WAR」というタイトルで公開されました。

 日本では2020年4月公開予定だったのですが、新型コロナのため、現在延期となっています。映画ではエジソンvs.テスラではなく、エジソンvs.ウェスティングハウスとなっている点も面白いところです。テスラでは、あまり馴染みがないと思われたのかもしれません。

 おそらく、今の状況では6月頃でしょうか。電気自動車および電力関係者にとっては見逃せない映画となりそうです。

<ご参考>
映画:エジソンズ・ゲーム
https://edisons-game.jp/

アイティメディアコラム:
電気自動車とはいったい何なのか、今もつながるテスラとエジソンの因縁
https://monoist.atmarkit.co.jp/mn/articles/2004/17/news007.html

2020年3月18日 和田憲一郎のビリビリ!とくる話

黄州寒食詩巻(こうしゅうかんしょくしかん)

 7年前より書道を習っており、日本で最大規模の書道展である第82回謙慎書道会展に出品したところ、初めて「褒状」をいただいた。ちなみに、謙慎書道会展では、下から「入選」「褒状」「秀逸」となっており、その上は少数の「特選謙慎賞」や「推薦顧問賞」がある。昨年入選だったため、一つ上がった結果となった。

 先生から無謀だと言われながらも書いたテーマは、蘇東坡(そとうば)の「黄州寒食詩巻」の一部である。ご存じない方のために少し紹介すると、蘇東坡は宋時代の著名な政治家・詩人・書家であり、人生の中で、時の政権と意見が合わず、幾度も左遷や追放の身となった経験を持つ。

 そのような中にあっても、希望を失わず、明るく、持ち前のエネルギーにて、数多くの優れた書を書いたようだ。「黄州寒食詩巻」も、1082年、黄州(現在の湖北省黄岡県)に左遷された時に書いたものであり、逆境の中、秘めたる闘志が発露したと言われている。

 考えてみると、テーマ選定時は、新型コロナウィルス発生前であり、まさか現在のような状況になるとは夢にも思わなかった。しかし、蘇東坡の如く、どんな逆境にあってもくじけず、勇気をもって立ち向かうことが必要であり、今の状況に相応しいのではないだろうか。

 第82回謙慎書道会展は、新型コロナの影響により中止となり、作品の完成形を見ることは出来なかったが、気を取り直して、改めてチャレンジしたい。

ご参考:蘇東坡の黄州寒食詩巻
http://y-tagi.art.coocan.jp/411.htm

2020年2月25日 和田憲一郎のビリビリ!とくる話

 山川異域 風月同天

 新型コロナウィルスはまだまだ収まる気配はないが、日本から中国に支援した物資に書いてあった言葉が、中国でたいへん話題になっているようだ。

 「山川異域 風月同天」という言葉であり、意味は「別の場所に暮らしていても、自然の風物はつながっている」とのこと。

 この言葉は、約1300年前に、大和朝廷の長屋王が中国・唐代の高僧、鑑真和上宛に送った1000着の袈裟の一部に刺繍された言葉であり、ぜひとも日本に来て仏教を教えていただきたいと願ったとのこと。

 これに感動した鑑真和上は、日本に行くことを決心した。しかし、5度の渡航を試みるも失敗し、ついには失明してしまう。それでも諦めずに、6度目にして成功して、日本の地にたどり着き、仏教を広めるきっかけとなったようだ。

 これに関して思い出すのが、ちょうど1年半前に国立新美術館にて開催された、「生誕110年 東山魁夷展」である。東山魁夷氏は、1971年に唐招提寺から鑑真和上の像を安置する御影堂障壁画を製作するように依頼され、熟考の末、それを引き受けた。展示会には、その後10年に渡って製作した数々の壁画が飾ってあった。

 解説によれば、東山魁夷氏は壁画を受諾後、数千枚に及ぶ下絵を描き構想を練ったとのこと。そして、設置場のレイアウトはよく計画されており、鑑真和上の御厨子を取り囲むように、出身地である揚州、渡航の間に滞在した桂林、そして中国を代表する黄山の絵が描かれている。これ以外にも、失明のためかなわなかったが、鑑真和上が見たかったであろう日本の海や山の数々の風景画が描かれていた。

 考えてみると、鑑真和上は艱難辛苦の末、6年の歳月を経て来日した。また時代は違えども日本を代表する東山魁夷氏が10年の歳月をかけて鑑真和上の像を安置する御影堂障壁画を製作している。まさに歴史は繋がっていると思わずにはいられない。

 知性あふれる先達、そして8文字かもしれないが、時空を超える漢字の力強さを改めて知った次第である。

ご参考:
https://www.afpbb.com/articles/-/3266316

2020年1月20日 和田憲一郎のビリビリ!とくる話

自動運転の冗長性は?

 先週、東京ビッグサイトと青海展示棟にて開催されたオートモーティブワールド2020に参加して、はっとしたことがある。

 自動運転関係ブースの方と話をしていて、自動運転の制御システムに於いても冗長性が必要になるのではとの話になった。

 冗長性とは、ある部品や制御が壊れても、別の部品や制御にて対応できるように、最初から二重、三重の対策を講じておき、信頼性を高める方法である。

 それで思い出すのが、筆者が電気自動車の量産開発に着手した際、これまでのガソリン車とは異なることから、航空機で採用されている冗長性を詳しく検討したことがあった。

 言うまでもなく、航空機はトラブルがあっても、最悪の事態を避けるため、電源、油圧、制御系など、ありとあらゆるところに多重の冗長性が配慮されている。

 さて、自動運転車の場合、実証試験段階ではそれほどではないが、実際に量産車を考え始めると、ソフト・ハードともどこまで冗長性を考えるか、相当悩むのではないだろうか。

 冗長性を多用すればするほど、部品点数、制御は複雑となり、レイアウト成立性やシステム開発が難しくなっていく。また自動運転車のコストも大幅に上がっていく。いよいよそのような段階に来たのだろうかと、思わずビリビリ!きた次第である。

2019年12月12日 和田憲一郎のビリビリ!とくる話

自動運転時代の道路システムレベルは?

 12月8日開催の日中省エネルギー・環境総合フォーラムに出席した。この会合は東京と 北京で毎年交互に開催されるものである。基調講演のあとに開催された「自動車の電動化・ スマート化分科会」にて、中国側からの講演者内容ではっとしたことがあり紹介したい。

 中国側の講演者は、清華大学の趙福全教授である。趙教授は清華大学だけでなく、 国際自動車技術会連盟会長も務めており、中国の自動車に関する識者の一人である。

 その趙教授が、自動運転はSAEを基準に、レベル0からレベル5まで定義されているが、 同様に道路システムも自動運転に対応して、レベルの設定が必要ではないかと説いた。 確かに、日本ではクルマのレベルばかり議論されており、道路レベルの設定については 議論したり聞いたことがない。思わずビリビリ!ときた瞬間であった。

 趙教授によれば、中国では道路システムをI0(低)からI5(高)まで6段階にレベル設定 しており、実証試験をする際には、車両のレベルに対応しながら進めているとのこと。

 講演後に個人的にお話を聞くと、自動運転はクルマのみならず、道路システム、交通システム などの都市づくりと合わせて考え実行しなればならず、それは各自治体の協力如何にかかっていると解説された。なるほどクルマのみならず、日本も考えたいアイデアである。

2019年11月11日 和田憲一郎のビリビリ!とくる話

 OK Boomer!

 最近ニュースを見ていて、一番笑ったのがこの言葉であろうか。

 ご存じない方のために少し紹介すると、ニュージーランド議会で、25才の 議員クロエ・スウォーブリックさんが気候変動について説明していた。 演説では、何十年も前から気候変動問題を認識していながら、政治的駆け引きに 終始してきた世界の首脳らの対応を批判した。「私の世代、そして私に続く世代には、 もうそんな余裕はないのです。2050年には私は56歳になります。そして、 この第52回議会の平均年齢は49歳です」と続けた。

 その時、議会にいたおじさんからヤジが飛んだが、彼女は平然と「OK Boomer!」 の一言で軽く受け流し、何事もなかったように演説を続けたのである。 OK Boomer!は、SNS「TikTok」を通じて流行しており、「ベビーブーマー」と 呼ばれる年配のおじさんやおばさんの、無自覚さや上から目線の態度をからかう言葉 として流行しているとのこと。

 ちなみに「ベビーブーマー」世代とは現在の55~73才を示し、それ以下では、 「ジェネレーションX」(39~54才)、ミレニアル(23~38才)と呼ぶそうである。 日本でも、若い人から「OK Boomer!」と呼ばれる人が続出するのであろうか。 おっと私も気をつけないと・・・。

https://www.youtube.com/watch?v=OxJsPXrEqCI

2019年10月11日 和田憲一郎のビリビリ!とくる話

吉野先生、ノーベル化学賞おめでとうございます!

 思い返せば、吉野先生のお名前を聞いたのは、2005年に私が突然、電気自動車の開発責任者に任命されたときからでした。任命されたものの、電気自動車のコア部品であるリチウムイオン電池のことは全くわからず、吉野先生の書籍を購入するとともに、講演会があると聞けば、幾度となく出掛けていきお話を聞いたものです。

 また、講演会の終了後には、素人の質問にも関わらず、懇切丁寧に教えていただいたことを昨日のように思い出します。当時は、携帯電話用のリチウムイオン電池は出来ていたものの、電気自動車用の大型リチウムイオン電池はまだなく、各社が開発にしのぎを削っている段階でした。しかし、その時も、吉野先生の開発実績が全てのベースになっていたように思えます。

 日本にもこのようなすごい人がいるのだなと驚くとともに、当時からノーベル賞間違いなしと言われておりました。しかし一方では、ノーベル賞はアカデミアの人が多いことから、民間研究所出身の方は 難しいのではとも言われておりました。それから約15年、今回ノーベル化学賞を受賞されたことは、本当に素晴らしく心からお祝い申し上げます。

 なお、吉野先生が日本にてリチウムイオン電池を開発したにもかかわらず、最近では リチウムイオン電池および電気自動車とも、中国や他国に主導権が奪われています。 先達の栄光だけでは続かないことを身にしみて感じているこの頃です。

2019年9月10日 和田憲一郎のビリビリ!とくる話

 クルマのLCA規制について

 最近、欧州にて2030年にCO2排出量を評価する手法として、LCA(Life Cycle Assessment) 規制が検討されていることが話題となっている。LCAをご存じない方のために若干補足すると、 LCAはクルマであれば、エネルギーの生成過程、部品の製造過程、自動車の生産、 ユーザーの走行距離、廃棄、それに再利用まで、まさにクルマの上流から下流まで 全ての工程にてCO2を算出し、評価する手法である。

 私はこれを聞いて、別に反対はしないが「なんだかなぁ?!」と思ってしまったのである。 というのは、自動車メーカーに務めていた時、電気自動車のLCAを算出しようと試みたときがあった。 しかし、当時どれだけ分析してみても、なかなか確信が得られなかったのである。

 たとえば、電力構成は国によって異なる。もしくは他国から購入している場合もある。 自動車部品は、ほとんどの自動車メーカーが要求仕様図にて依頼しており、要求仕様を満たせば、 どの国で生産してもかまわない。 実際、最初は日本で生産していたが、途中から中国へ、その後ベトナム、タイ、カンボジアなどに 移設することは多々ある。そのような時、製造過程でどれくらいCO2を排出していたのか 把握することは極めて難しい。

 さらに、算出したLCAに対して5%削減しようとした場合、誰がその削減の責任を持つのであろうか。 おそらく参加者は勝手に、電力会社だ、部品メーカーだ、自動車メーカーだ、ユーザーだ、廃棄業者 などと言い出し、収拾がつかないであろう。極端なことを言えば、計算をやり直すことで、5%ぐらい 変動することは簡単である。

 このように、対象範囲が広く、関連企業が多くなればなるほど、誰も責任を取らないシステムがはたして有効なのかと思ってしまう。関連する全ての企業がブロックチェーンによりデータを 紐付けできるのであれば可能かもしれないが、中小企業、海外生産も考えると、それも 現実的でないと思えてしまう。やはり、なんだかなぁと思ってしまうのである。

2019年8月20日 和田憲一郎のビリビリ!とくる話

東京モーターショー、コンセプトの見直しが必要では!?

 第46回東京モーターショーは、10月24日~11月4日まで開催予定となっている。 しかし、最近の報道によれば、海外主要自動車メーカーは、メルセデス・ベンツ、 スマート、ルノーのみとのこと。 これではとても国際自動車モーターショーと言えず、国内モーターショーの位置になってしまう。 モーターショーが不振なのは東京に限らず、シカゴ、パリ、ジュネーブ、フランクフルトなど、 これまで盛況であった自動車ショーが軒並みローカルモーターショーになりつつある。

 理由はいろいろあるが、多くの人がクルマを購入から利用へとシフトしていることや、 クルマそのものの魅力、他社との違いなどが少なくなってきたこともあるであろう。 筆者の勝手な考えかもしれないが、1954年から65年間続けてきた東京モーターショーも そろそろ衣替えの時期に来ているのではないだろうか。

 その場合、もし「ショー」というものを今後も継続するのであれば、自動車のみならず、 サービスとして幅を広げることも一案であろう。XaaSと言われるものは、MaaS、IaaS、 SaaS、PaaS、DaaSなど、ほとんどAからZまであると言われている。

 これまでの慣習にとらわれず、モビリティ、XaaS、IoTなどの総合フォーラムを企画する ぐらい変貌しなければ、2021年には消滅してしまうのではないかと危惧する。 自動車は100年に一度の大変革期と言われるが、同様にモーターショーも大変革を求められている、 その時期ではないだろうか。

2019年7月29日 和田憲一郎のビリビリ!とくる話

荒天の予感と、中国のNEV修正案にビックリ!

 先週、三菱自動車工業、日産自動車、さらにはダイムラーなどの2019年第1四半期 決算発表があった。いずれも営業利益が大幅減少している。ダイムラーは排ガス対策 などで1600億円の赤字となったようだ。予想されていたとはいえ、かなりビックリ した方も多かったのではないだろうか。まさに荒天の予感である。

 そのような中、中国政府は2021~2023年までのNEV規制修正案を発表した。 これまで確定していた2019年、2020年に対して、多くの要素を変更する案である。 筆者が最もインパクトが大きいと思ったのは、新エネ車のクレジット変更である。

 これまで、例えば走行距離200kmのEVであれば、3.2クレジット/台得ることが出来たが、 今回の改訂では1.6クレジット/台と半減している。 PHEVは2割減少、FCVも半減しており、このような車両1台あたりの突然のクレジット変更は 自動車メーカーの企画担当者や開発担当者のやる気を一気に削ぐような気がしてならない。 年もまたぐと、クルマの価値が半減してしまうようなものである。

 NEV比率は2021年(14%)、2022年(16%)、2023年(18%)とこれまで同様に2%上昇を 提案しており、もし新エネ車の普及拡大を意図するのであれば、このレベルを上げても 良かったのではないかとも思える。 中国の自動車販売台数は今年上半期で対前年比12%減となっているが、一方、新エネ車は 53%増で推移している。

 何か政策担当者は、新エネ車の伸び率をどうすべきか迷いがあっての 提案のように見受ける。NEV修正案は8月9日までに意見を受け付けるとのことであり、 今後、年末の決定まで激しい議論が続くのではないだろうか。

2019年6月5日 和田憲一郎のビリビリ!とくる話

中国の貴州省訪問でビックリ!

 先週、中国の貴州省を訪問する機会がありました。中国の貴州省は重慶市や四川省の 南部に位置し、山が多く、中国の中でも最も貧しい省と言われてきました。 しかし、2014年に貴州省の貴安新区が中国唯一の「ビッグデータ新区」として 指定されると、急激に風向きが変わります。

 今では経済成長率が中国でも常に ベスト3に入るようになり、最も発展が著しい地域となってきました。 今回訪問の目的も「中国国際ビッグデータ産業博覧会」が開催されたことから、 展示会や関連設備を視察するためです。

 訪問して驚かされたことが大きく2つあります。 一つは、貴安新区には中国最大規模のデータセンターが多数設置されています。工事中で あったテンセントやファーウェイのデータセンターは、巨大な山を買い占め、その中腹に 多数のトンネルを掘り、中に数万台のサーバーが設置できるようにしています。 これは貴安新区が高原地帯のため、夏冬通して涼しく安定していること。また山岳地帯 で水が豊富であることや、カルスト地形で地震が少ないことなど、地の利を生かしたものです。

 このため、冷暖房のエネルギーは不要で、ファンによる送風だけで冷却しています。 日本のデータセンターとは比べものにならないくらい、巨大でかつ省エネルギーなデータセンター に驚かされました。

 2つ目は、ビッグデータを扱う「データサイエンティスト」の緊急育成システムです。 ビッグデータを集めても、それを分析し、切り分ける、いわゆるデータの料理人がいないと 話になりません。 このため、貴安新区では「大学城 双創園」を作り、省内12大学のデータ関係学部を集め、 18万人の学生・教員により「データサイエンティスト」を緊急育成するシステムを創っている とのこと。

 日本でも長崎大学にて学生130人を集め、データサイエンティストを育成する学部を新設する動きが報道されましたが、まさに桁違いの活動が既に行われています。

 スイスの有力ビジネススクールIMDの調査による「2019年の世界競争力ランキング」では、 日本はビッグデータの活用で調査国最下位と報道されました。今回訪問で、大規模な 取り組みを既に実行に移している姿を見て、ビリビリ!ときた次第です。

2019年5月15日 和田憲一郎のビリビリ!とくる話

CATLは中国の技術と生産設備で

 私どもが主催している一般社団法人 自動車100年塾のワークショップは、昨日 第17回目となり、基調講演には、新エネ車用電池で世界最大となったCATL (Contemporary Amperex Technology Co., Ltd.,寧徳時代新能源科技)の 日本法人 取締役社長である多田直純様を迎えました。

 基調講演で印象的だったのは、CATLがTDKの子会社ATLからスピンアウトし、その後 2011年に設立されたことから、私自身は、日本の電池技術や日本の生産設備を使用して いるのかと思っておりました。しかし、創業8年目にして技術者が約5,000人となり、 全て自前の技術開発をしているとのこと。

 さらに、生産設備もセルオーダー後18ヶ月で完成・評価まで行うため、全て中国製の生産設備を 用いており、日本メーカーから設備導入の要望があるものの、スピードについていけないため 参入できていないとのことでした。

 想像を超えた展開に、まさにビリビリ!ときた瞬間でした。他にも多くの気づきがありましたが、 2019年に50GWhを越える生産能力となり、2024年には300GWh以上を目指す企業に対し、 日系自動車メーカー、日系電池メーカーはどう対応すべきなのか考えさせられた講演となりました。

 スピードにスピードで対抗するのか、はたまた異なる方向性を目指すのか、戦略の見直しを 迫られること必須だと思った次第です。

2019年4月25日 和田憲一郎のビリビリ!とくる話

多くの人は、見たいと欲する現実しか見ていない

 上海モーターショーから戻ってまいりました。今回の上海モーターショーを見て 真っ先に思い浮かんだのが冒頭の言葉です。 ご存知かもしれませんが、塩野七生さんが「ローマ人の物語」にて紹介し有名になりました。 古代ローマ帝国を築いたユリウス・カエサルの言葉として伝えられています。

 今回の上海モーターショーは、私なりにエポックメイキングなショーであったと思っています。 これほど数多くの量産車のEV・PHEV、さらに2年以内に上市となりそうな多数の コンセプトカーが展示されたことは過去になかったかと思います。 特に、中国大手自動車メーカー、中国新興メーカーによる斬新な切り口のEV投入、 ドイツ勢による、これまでとは打って変わった怒涛のEV・PHEV展示が印象的でした。

 ひるがえって、日系自動車メーカーといえば、一部にEV・PHEVを展示するものの、 その多くは既販車の展示でした。そのような状況の中で、日系自動車メーカー幹部、および 開発責任者は何を思ったのでしょうか。 冒頭の言葉ではありませんが、もし自分の都合の良いように物事を見て、見たくない現実 から目を背けて報告するなら、上層部は判断を見誤るのではないでしょうか。

 今回一番ビリビリ!きたこと。それは日系自動車メーカーが2年前の上海モーターショーと 比べて、あまり代わり映えしないと思ったのは私だけでしょうか。

2019年3月15日 和田憲一郎のビリビリ!とくる話

多産多死を許容する社会だろうか

 先週、中国浙江省の杭州を訪問し、数多くのスタートアップやベンチャー企業と 交流する機会を得ました。それにしても驚いたことがあります。杭州には多くの スタートアップがあるのですが、それに対し国や省が巨大なビル施設を準備し、 彼らはその中で活動を行っていることが多いのです。

 IoT、FinTech、AI、VR、ヘルスケア、バイオなど、ざっと訪問しただけでも、 それぞれが100から200のグループがあり、浙江省全体では1000を超えるスタート アップが活動しているのではないでしょうか。 昨年訪問した深センもそうでしたが、昨今の中国では、まるで「虎の穴」のように、 数多くのスタートアップが寝る間も惜しんで、新規ビジネス開発に取り組んでいます。

 ということは、中国政府からみると、数万のスタートアップがあっても、その中で、 アリババやテンセントのように、幾つか優れた企業が出てくればそれで良い。スタート アップは多産多死であることを前提に、許容する社会や国としての考え方で 取り組んでいるように思えます。

 なお、AIやVR向けビルを訪問した隣に、まだ実用化されていないにも係わらず、 隣に5G専用の巨大なスタートアップ用ビルがほぼ完成間近となっていました。もう 巨大な投資をしているのかと思うと、思わずビリビリ!と来てしまった次第です。 チャレンジしない日本、しにくい日本との差が広がっていくように思えます。

2019年2月18日 和田憲一郎のビリビリ!とくる話

ワイヤレス給電に関するワイトリシティとクアルコム

 電気自動車関係者にとって、興味深いニュースが2019年2月11日に流れました。 米ワイトリシティ(WiTricity)が米クアルコム(Qualcomn)のEV/PHEV向け ワイヤレス給電事業「Qualcomn Halo」を買収すると発表したことです。

 これについては、以前から噂になっていましたが、いよいよ現実になったようです。 あまりご存じない方のために紹介すると、ワイトリシティとクアルコムは近年 ワイヤレス給電の国際規格化で激しい争いを続けていました。各陣営とも自動車メーカー、 部品メーカーも巻き込み、さながらVHS vs.ベータのような様相でした。

 筆者は以前に、米国ボストンのハーバード大学西側に位置するワイトリシティを 訪問したことがあります。ワイトリシティはMITから技術者がスピンアウトして独立した ベンチャー企業であり、ワイヤレス給電の原理原則の開発、ロイヤリティビジネスを メインとしています。会議室や廊下には、それまで取得したパテントが所狭しと掲げられて おり、あまりの多さに驚かされたものです。

 一方、クアルコムは、元々ワイヤレス給電装置のチップビジネスを狙っており、自社では ワイヤレス給電機器は作らないと表明していましたが、ニュージーランド大学の研究者が 開発した「HaloIPT」を買収したあたりから、心変わりしたように思っていました。 今回の買収では、ワイトリシティが技術やライセンス権、1500件に及ぶパテントも全て 譲り受けるとのことで、これでEV/PHEVのワイヤレス給電規格争いにも終止符が打たれ、 普及に弾みがつくのではないかと思われます。

 筆者の勝手な考えでは、新エネ車の伸展が著しい中国からワイヤレス給電が普及すると 見ており、第14次5か年計画(2021年~2025年)には、充電インフラ国家目標に、 ワイヤレス給電数も盛り込まれるのではないでしょうか。

 電気自動車を開発していた頃、ワイトリシティのワイヤレス給電試作機を見て驚いた 経験があり、いよいよ実用段階を迎えるのかと思うと、感慨深いものがあります。