2024年

2024年4月22日 和田憲一郎のビリビリ!とくる話

PHEVのCO2排出量に疑問符か

欧州委員会が先般発表したPHEVのCO2排出量に関する報告は衝撃的である。実際に走行したデータを集めた結果、ガソリン車やディーゼル車のCO2排出量は認証値と+20%前後の差しかなかったが、PHEVの場合は3.5倍も上回った結果となったとのこと。

欧州委員会の調査からは、PHEVはEV走行比率をユーティリティファクターとして、70~85%と想定したにも関わらず、実際は個人ユーザーで45~49%、社用車では10~15%しかEV走行していない。

これでは何のためにPHEV化したのか分からなくなってしまう。欧州委員会は、この結果から、今後、ユーティリティファクターの基準を改訂し、PHEVのCO2排出量の見直しを行うようだ。

最近、BEVの減速に関連して、HEVやPHEVの販売台数増加が報道されているが、今回のPHEVの実態調査は、基準設定に対してさらに厳しい目が向けられるのではないだろうか。

https://smart-mobility.jp/_ct/17695637

2024年3月18日 和田憲一郎のビリビリ!とくる話

EVの反転は近いのでは

今年に入ってハイブリッド(以下HEV)復活の声が多いが、私から見ると、そろそろ
EVの反転が近いのではと思う。

ではなぜそう思うかと言えば、きっかけは、やはりBYDである。今年2月に入ると、BYDは「ガソリン車よりも安い電気自動車」をキャッチフレーズに低価格戦略を打ち出した。中国では、BYD 24年モデルにて「秦PLUS EV」が10万9800元(約225万円)から、PHEV「秦PLUS DM-i」は7万9800元(約165万円)からと一気に価格を下げてきた。

これを受けて、テスラを含め他のEV自動車メーカーも価格を下げざるを得ず、ある意味「チキンゲーム」の様相を見せている。これにはガソリン車、HEVを売っている日系自動車メーカーも大きな打撃を受けるであろう。

4月に入ると、BYDの大攻勢により新エネ車(BEV、PHEV)の販売が急拡大する。これは中国の話であるが、世界最大の自動車販売国である中国の動きは無視できず、特にドイツ自動車メーカーはこれまでの市場を失わないために、新エネ車に力を入れざるを得ない。

さらに、4月25日より北京にて「オートチャイナ2024(北京モーターショー)」が開催される。これも新エネ車一色になるであろう。世界で最も大きな自動車見本市としてメディアでも大きく取り上げる。

3月15日に日産・ホンダがEVで戦略的パートナーシップの覚書を締結したことは、すぐではないがEV反転の狼煙とも思える。

2024年の新エネ車販売台数は昨年に比べ300万台多い、1680万台前後と予想する調査会社もある。さて、どうなるであろうか。
https://36kr.jp/277454/

2024年2月19日 和田憲一郎のビリビリ!とくる話

                                             ”The time is now”

先日、スウェーデン大使館主催の持続可能な社会を目指す活動「Pioneer the possible」に参加した。今年で3回目となるサステナビリティサミットである。

なぜスウェーデンなのかと思われるかもしれないが、スウェーデンは本国のみならず、日本に於いてもカーボンニュートラルゼロを目指す活動を続けている。日本企業と協力することで、グリーントランスフォーメーション(GX)を加速することができると考え、開催を続けているようだ。

当日はスウェーデン大使館関係者を始め、約100名の来場者が参加していた。開催挨拶で、駐日スウェーデン大使のペールエリック・ヘーグベリ氏は、地球温暖化を 1.5 度に抑えるチャンスを得たいなら、今後8年間でCO2排出量を半分に削減する必要があると力説し、もうあまり時間がない、「The time is now」と各企業に行動を呼びかけた。

その後、スウェーデン発祥の日本企業や、日本から中央官庁、地方自治体、企業から発表が相次いだ。中には、商用として各社の電気自動車を活用している例もあり、使用してみてのメリットや課題なども発表された。

それにしても、在日の大使館が継続して活動を行っていることに驚かされる。それだけ、日本政府や企業は追い込まれている証左ではないだろうか。

2024年1月15日 和田憲一郎のビリビリ!とくる話

 2024年、EVシフトは踊り場を恐れるな

最初に、能登半島地震および羽田空港事故により犠牲となられた方々に心よりお悔み申し上げるとともに、被災された方々に心よりお見舞い申し上げます。

さて、昨今、EVシフトについては、ポジティブとネガティブなニュースがある。

ネガティブな面で言えば、米国に於けるBEVの販売台数が、2023年10-12月はわずか1.3%増にとどまった。また米国インフレ削減法(IRA)では、2024年1月1日から控除を受けられる車種が、2023年の43モデルから19モデルに減少した。

理由として、2024年から重要鉱物および部品に対する適用割合がそれぞれ10%引き上げられたことによる。この結果、日産リーフも対象から外れた。控除対象から外れた車種は、年々引き上げられるハードルに対し、必死に要件を満たすよう努力するであろう。

さらに、欧州委員会は2023年10月4日、中国からEUに輸入されるBEVについて、相殺関税の賦課を視野に入れた反補助金調査を開始した。今後、比亜迪(BYD)、吉利汽車、上海汽車集団の中国EV大手3社に調査員を派遣すると報じている。

このような状況から、EVシフトは曲がり角を迎えた、もしくは減退していくと考えるのは早計ではないだろうか。もし日系企業にてEVシフトへの対応をスローダウンさせようと考えるならば、挽回のチャンスを失うのではと危惧する。

これまで、EVシフトは50%UP、100%UPなどと年々大幅な伸びを示してきた。しかし、2024年はややスローダウンする、いわゆる「踊り場」の年と考えることが望ましい。踊り場とは、再上昇のための準備期間である。

証左として、ポジティブな面では、中国2023年のBEV/PHEV販売台数は950万台となり、約38%の伸長となった。2024年も好調を維持し、20%増の1150万台が予想されている。欧州での2024年のBEV/PHEV新車販売台数は20%増の300万台と予想されている。

言うまでもなく、欧州「2035年の内燃機関車の新車販売禁止」規制や、バイデン政権によるIRA法案の旗は降ろしていない。EVシフトへに対しては、短期ニュースに対して、一喜一憂することなく、どう踊り場に対応するかを考えることが望ましい年となろう。