株式会社 日本電動化研究所
04月

2016年4月25日 和田憲一郎のビリビリ!とくる話

三菱自動車の燃費不正問題について

メディアにて既報のとおり、4月20日に三菱自動車から燃費不正の問題が公表されました。ちょうど筆者は海外出張に出ていた週であり、最初に聞いた時は軽自動車4車種に燃費不正が判明したと報道されました。

これだけでもビリビリ!ときたのですが、その後、4月22日になるとそれ以外の車種、特に私の関わっていたi-MiEVまでもがその対象であると報道されました。

これはまさに驚天動地、思わず「ホントなのか!」と今の今まで知らなかったことに本当にショック!を受けたものです。

通常、車両の開発期間は実験部門と連絡を密にしています。i-MiEVでの約5年の開発期間中も、数えきれないぐらい実験部門に出向き、走行試験に立ち会ったり、時には高速周回路や波状路を自ら運転したりして、一緒に改良を続けてきました。

また、実車の衝突試験にも幾度も立ち会い、完成度合、安全性を確認してきました。このため、実車試験には恣意的な要素は何ら入る余地はないと思っていました。

しかし、振り返ってみても、私の記憶では一度もこの走行抵抗試験に立ち会ったことがないのです。試験項目は何百とあるため、専門的であったためでしょうか。

それにしても、今回の事件は考えれば考えるほど、摩訶不思議です。

なぜそのような不正をやる必要があったのでしょうか。燃費の焦りなどと報道されていますが、客観的に見ても、軽自動車ではトップにかなり差をつけられており、プラットホームの違いもあって、そう簡単には追いつけそうにもありません。

またi-MiEVでは、先行車がない中で、燃費(電費)うんぬんよりも、信頼性、安全性の高いクルマを作ることが最優先されてきました。

このため、燃費向上のために行ったとは到底思えません。

さらに、たとえ部長がこのような指示をしたとしても、コンプライアンスに問題のある指示であれば、課長、主任、担当がそう簡単に納得したとも思えません。

どうしても何か別の動機があるように思えてしまうのです。

一つ引っかかっているのが、走行抵抗を計測する際に、道路運送車両法で規定されている「惰行法」でなく、なぜ米国で規定されている「高速惰行法」を採用したかです。

惰行法では、20km/h、30km/h、40km/h、50km/h、60km/h、70km/h、80km/h、90km/hからギアをニュートラルで指定速度、例えば90km/hを+5km/h上回る速度で走行させます。その後、試験の測定は95km/h(つまり+5km/h)から85km/h(つまり-5km/h)まで減速する時間を測ります。

また、試験は往路3回及び復路3回行い、その平均をとると規定されています。

ここで一つ疑問が生じます。

低速での試験は良いのですが、高速、例えば90km/hの条件にて試験を行おうとすれば、95km/hまで加速する平坦路が必要であること。さらにそこから惰行減速させることから、相当長い平坦の試験路が必要ではないかと思えることです。

岡崎のテストコースは1962年に出来たこともあり、かなり小さく、直線の平坦路は1km程度しかありません。はたして、この惰行法には適した試験場所だったのでしょうか。

逆に高速惰行法は急ブレーキを踏み、1秒毎の減速変化を測ります。つまり、試験場所はそれほど長い平坦路が必要ありません。

三菱自動車は、栃木県に喜連川研究所があり、岡崎より数倍広いテストコースがありました。しかし、2003年1月にダイムラー資本が入り、三菱ふそうトラック・バスとして独立しています。

また、北海道には1周10km以上にも及ぶ広大な十勝研究所を有しています。しかし、ここまで車両を運ぶのもかなりの費用と時間、労力を要します。

今回の件は、背景に試験設備・試験場所の不都合があったのではないか、あくまで私見ですが、そんなことを考えた次第です。

現在調査中とのことなので、その結果を待ちたいと思います。