2016年

2016年12月19日 和田憲一郎のビリビリ!とくる話

先週、過去のエアバック搭載に匹敵するのではと思われるほど、大きな規制が米運輸省 高速道路交通安全局(NHTSA)にて公表されました。車車間通信、英語ではV2V(Vehicel to Vehicle)と呼ばれるものです。

その内容は、自車のロケーションとスピードを政府保有のクラウドにあげ、それを相互にチェックすることで、モニター上で相互の位置関係を確認できるとともに、前方で見えにくい場所からの飛び出しに対しても、注意が容易となるなど、大幅な交通事故削減が期待されるものです。

法規制は、今後90日間のパブコメを経て、2019年からの搭載を予定しており、フェーズ・インにてその4年後には全車に装着を促す内容となっています。

本件は、数年前からNHTSAが仕掛けて話題に上っていたのですが、全米となると、年間の新車約1700万台に対して、瞬時に相互の情報やり取りを行う方法や、将来も含めたサーバーの大きさ、さらにはセキュリティの信頼性など、本当に実現できるのかなと懐疑的な声も多数ありました。

多くの疑念をも克服し、今回、NHTSAが規制公表に漕ぎつけたことに、大いに敬意を表したいと思います。米国にていよいよ発進することなるのですが、これははたして日本でもできるのでしょうか。

正直、あまりにも膨大なシステム構築が必要なことから、米国の本気度が判るとともに、他国では極めて難しいとも思ってしまいます。

しかし、クルマ相互の位置関係を把握することは、自動運転車を実現しようとする場合の基本であり、これなしに自車のカメラやセンサーのみで周囲を把握しようとしても限界があります。

つまり、米国の新規制は交通事故大幅削減であるとともに、自動運転車を将来実現するための基盤を作っているとも言えるのではないでしょうか。そして、彼らの考え方は、V2Vが先で、自動運転車は後であると。

今回、米国NHTSAの実行力にビリビリ!とくると共に、このような戦略的な思想が見えない日本は、大丈夫なのかと心配になる年末です。

2016年11月16日 和田憲一郎のビリビリ!とくる話

覚えている方も多いかもしれないが、約1週間前の11月7日(月)、日経朝刊一面に「トヨタ、EV量産計画へ」との記事が掲載された。

一部の方からガセネタではとの声もあったが、私としては月曜日の日経朝刊一面ははめ込みが多いことから、これはガセネタではなく、仕組まれた記事と考えていた。

以前に、大きな記事は1週間程度寝かせておいてから考えるほうが良い、とアドバイスいただいたこともあり、今回公表した理由を考えてみたい。

まず、デメリットから考えると、これは燃料電池車(FCV)陣営にとどめを刺すおそれがある。これまで、次世代自動車はFCVであるとアナウンスしてきた先導役の自動車メーカーがEVの量産化に向けて開発を進めるとアナウンスすることで、FCVの充填インフラを支援していた業界が、今後力を入れなくなる恐れがでてくる。

理由として、EVの充電インフラは設置が容易であるが、FCVは設置費用が高額であること、各種申請などが煩雑で、設置までに長期間要することなど、不利な点が多い。これまで、2020年以降には上向くのではと何とか頑張ってきた業界であるが、この公表はかなりの冷や水となるのではないだろうか。

逆にそれらを考慮しても、今回公表に踏み切った理由はなんであろうか。
一言でいうと、「もはや、切羽詰まってきた!」ということであろう。
主に3つの理由があると思われる。

1つは、マツダ、富士重工への配慮。
両社とも、米国ZEV規制、特に2018MYからの新規制に対して、どう対応するのかが喫緊の課題となっている。類似の規制である中国NEV規制もある。これらに対して、両社は対応方針を示す必要性に迫られていた。しかし、両社が例えEVを量産すると言っても、単独ではなかなか現実味がない。つまり、基本技術をどうするか、誰がキープレイヤーとなって開発するかを明らかにする必要があった。

2つ目は、トヨタ系サプライヤーへの配慮。
トヨタは2016年11月8日、2017年3月期の連結決算を、売上高予想△8.5%減の26兆円、純利益予想は、1000億円上積みしたものの、△33%減の1兆5500億円になると公表した。頼みの米国販売が低迷しており、またHEVの成長が止まったことや、FCV販売も上手くいっていないことから、傘下のサプライヤーに対して、不安を打ち消し、今後の進む方向性を示す必要が出てきたのではないだろうか。

3つ目は、自動運転車への対応。
レスポンス性などを考えると、自動運転車はEVでなければ実現できないことは自明である。他社が自動運転とEVを組み合わせた商品展開を進める中、自動運転技術をいくら開発しても、乗せるクルマがなければ実用化には結びつかない。これら開発陣の葛藤を受けて、アナウンスに踏み切ったと考えるのが妥当であろう。

しかし、EVを量産するにはこれまでの財産(HEV用電池設備、モーター設備等)が活用できず、新たな巨額の設備投資に踏み切らなくてはならない。これは量産設備だけでなく、試験設備、そして何よりも技術陣の体制も同様である。

今後、社内外でも葛藤はあると思うが、巨艦が方向転換することにエールを送りたい。

2016年10月25日 和田憲一郎のビリビリ!とくる話

過日、ご縁があり「太陽光発電協会」のシンポジウムにてお話をさせていただきました。

EV/PHEVなどの電動車両と太陽光発電は、一見、関係がなさそうですが、今冬発売のトヨタプリウスPHVが、駆動用バッテリーに充電できる車載用ソーラーパネルシステムを、搭載するなど、ここにきて関連性が出つつあります。

当日は、このトピックだけに留まらず、自動運転車との関わりについても少しコメントをしました。というのは、自動運転車は、レーザースキャナ、カメラ、ミリ波レーダー、赤外線レーダーなど多くの電子機器を搭載し、かつ常時作動させなければならないので、電源がますます必要となってきます。

実証試験であれば、多くの別バッテリーと搭載すれば良いのですが、量産となると、駆動用バッテリーからDC/DCコンバータを介して12Vバッテリーに電気を補充する方法だけに頼ることは厳しくなります。つまり、新たに電力を生み出す機能が必要となってくるのではと問題提起しました。その意味で、将来は車載ソーラーパネルの必要性が高まってくるように思っています。

なお、当日参加された方々は、ソーラーパネルは固定という意識が強く、可動体に設置することも将来可能性があるのではとの意見に、とても関心を呼んでいました。

さらに、車載ソーラーパネルは、単なる充電機能のみならず、V2Hとしても活用できる可能性があることから、今後もますます広がっていくのではと思っております。

今回は、日頃のクルマ業界だけではなく、違った業界に顔を出すことで、意見交換することも出来、とても刺激になった次第です。

2016年9月30日 和田憲一郎のビリビリ!とくる話

9月27日(火)に「自動車100年塾」x「リアル開発会議」x「日経BP社」の3社コラボによる「自動車産業改造計画」の公開コンサルティングを行いました。

これは8月29日の「事前説明会」に参加された企業が、その後、社内にて検討し、もう少し踏み込んだ具体的なビジネスとするために開催したものです。

当日は、「開発の鉄人」と呼ばれ、これまで3000件の開発テーマに携わってこられたシステム・インテグレーション代表取締役社長の多喜義彦氏が、各企業と1対1にて現在の事業や課題、そして今後の提案ついて、参加者の前で公開コンサルを行いました。

当日は、秘匿性が高いことから、開始前に参加者全員に守秘義務にサインしていただき、その後、開始となりました。

当日の参加者は自動車部品メーカーの方々が多かったのですが、1対1の公開コンサルを進めていく中で、開発の鉄人からのアドバイスは本当に驚くものでした。詳細は秘匿事項のため記載できませんが、電動化コンサルタントの私が聞いていても、えっ、そういうアイデアもあるんだ、そんなことで困っている人や分野もあるんだと、思わず、何度もビリビリときてしまった次第です。

よくビジネスは困っている人を助けることにヒントがあると言います。これまで、どちらかと言えば、自動車メーカーからの受注にてビジネスを展開してきた自動車部品メーカーの方には、自分達が主体性を持ってビジネスを展開できることの可能性に自信を深めたのではないでしょうか。

11月からは、開発計画ステージとして、事業性などの検討とチームビルディング(新たな参画企業の募集:例えばIT企業)などを約半年間行い、その後、本格的に開発着手予定となっています。

テーマは公共性も高く、これまで自動車部品メーカーでは考えたこともなかった分野が多く、今後の展開がとても楽しみな状況です。

さて、終了後には、「自動車100年塾」「リアル開発会議」「日経BP社」3社にてフォロー会を行い、今回とても好評だったことから、11月を目途に「自動車産業改造計画 第二弾」を開催することで一致いたしました。

今回、関心がありながらも参加できなかった企業も、もし可能であれば、参加していただければと思います。詳細は追って連絡させていただきます。

2016年9月6日 和田憲一郎のビリビリ!とくる話

ときどきニュースを見ていると、思いもよらぬことでビックリすることがあるものですね。先日、米国のベンチャー企業ヌートノミーが、シンガポールで世界で初めて自動運転のタクシー公開試験を開始したと聞いたときでした。

そのビデオを見てみると、なんと三菱自動車のi-MiEVにて公開試験をしているではありませんか。そして、シンガポールの方から、とても好意的なコメントが寄せられていました。

これを見た瞬間、この公開試験ビデオは、i-MiEVのプロモーションビデオと良く似ており、また、場所がi-MiEVの発売前に複数回、実証試験車を持ち込んで試乗会やプレゼンを行ったシンガポールであるだけに、懐かしいと同時に、思わずビリビリ!ときてしまいました。

サンケイビズのコラムでも書いていますが、シンガポールはとにかく新しいことに対して関心が高く、i-MiEVの時も、実証試験車であったにも係らず、ぜひ一番にシンガポールで導入して欲しいと頼まれたものです。

その精神は、ベンチャー企業であるヌートノミーにも伝播しているのかもしれません。当時、i-MiEVでは、実証試験とプレゼンを行うため、シンガポール以外に、米国、香港、ブルネイ、オーストラリア、ニュージーランド、フランス、ドイツ、イタリア、ポルトガル、スイス、オーストリア、オランダ、ベルギー、イギリス、ノルウェー、スウェーデン等々、本当に多くの国々を回りました。その中でも、最も熱く迎えてくれたのが、シンガポール、ニュージーランド、ノルウェーでした。

おそらく、地域の人々が熱い思いを持っていると、相乗効果で何か新しいモノがが生まれてくるのかもしれません。日本は少し体温が低めでしょうか。我々がもう少し高めにしないといけないのではと思っています。

<ヌートノミーの記事>
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/1608/26/news048.html

2016年8月8日 和田憲一郎のビリビリ!とくる話

 Dream come true!

昨年4月に任意団体として「自動車100年塾」を立ち上げた際、将来はきちんとした団体にしたいと思っておりました。この度、本年6月6日に「一般社団法人100年塾」として登記を行い、先日、その社団法人化記念ワークショップを開催することができました。

参加者人数もこれまでの最高を記録し、また基調講演では、株式会社アクアビット代表取締役の田中栄様から、「未来予測2016-2030 ~過去の延長線上に未来はない~」と題して、将来をどう考えるべきかを示唆していただき、とても感慨深いものとなりました。

本当に皆さまのおかげで、ここまでこれたことに感謝するとともに、ビリビリ!ときた次第です。

また、日経BP社編集長の狩集様も駆け付けていただき、「自動車100年塾xリアル開発会議x日経BP社」のコラボについても説明の場を持つことができました。

一般社団法人自動車100年塾は、まだまだスタートしたばかりですが、皆さまのご期待に沿えるよう、今後の活動を取り進めていく所存です。

なお、自動車100年塾では法人会員、個人会員を募集しております。
ご希望の方は下記リンク先よりダウンロードしていただき、申込書をFAXにて送付していただけると幸いです。本年12月までにお申込みの場合、入会金は免除となっておりますので、よろしくお願い致します。

<法人会員、個人会員申込案内HP>
http://www.auto100y.org/

2016年7月12日 和田憲一郎のビリビリ!とくる話

「自動車100年塾」x「リアル開発会議」x「日経BP社」がコラボ!

前回は、一般社団法人 自動車100年塾立ち上げのお話をしました。
企業の枠を超えて自動車産業の将来を考える場として設立しましたが、それだけでは勉強会で終わってしまうので、いろいろ出口戦略を考えました。

その一つが分科会活動です。
いろいろと興味ありそうな、また将来必要となりそうなテーマを募り、関係者にて突っ込んだ、またビジネスの成立性までを検討する場として設けております。

今回、その第一弾として、各種プロジェクトで実績のある「リアル開発会議」と組み、かつ「日経BP社」にもご協力いただきながら、プロジェクトを本年10月より立ち上げることと致しました。

名前は、これまた勇ましいのですが、「自動車産業改造計画」です。
本年10月からの本格的開催に先立ち、その説明会を8月29日に開催することとなりました。

勉強会だけでなく、実際の将来ビジネスに関心のある方は、ご参加いただけると幸いです。当日は複数のビジネスプランをご提案し、皆さま方のご意見を頂戴しながら、10月からの開催に備える運びとなっています。

なお、この分科会でかなり煮詰まった内容は、分科会よりスピンアウトして、当事者同士の自己責任による新ビジネスとして実施を考えております。

以下リンク先に詳細が記載されております。

・8月29日開催:自動車100年塾とリアル開発会議のコラボのご案内

http://techon.nikkeibp.co.jp/atcl/column/15/062400053/062400001/?rt=nocnt

・8月29日開催:コラボに関する申込み案内

http://techon.nikkeibp.co.jp/atcl/seminar/16/062000182/index.html

・8月1日開催:第5回自動車100年塾 社団法人化記念ワークショップ

http://www.carnorama.jp/auto100.html

2016年6月27日 和田憲一郎のビリビリ!とくる話

今日のメルマガは、私的にビリビリ!ときた話です。

このたび、人生初となりますが、一般社団法人を立ち上げることとなりました。

これは、昨年4月より任意団体として活動開始した「自動車100年塾」を、1年間の活動結果を受けて、より社会的責任と活動の幅を広げるため、6月に一般社団法人化したものです。

「自動車100年塾」は、日本の自動車産業のあり方に危機感を共有する有志が、企業の枠を超えて自動車産業の将来を考える場として設立したものであり、4回のワークショップを経て、その意をますます強くしてきました。

今回の一般社団法人化にあたっては、発起人3人にて、この塾のあり方を再考し、基本的な取組姿勢として、自動車産業の孵化基盤=インキュベーション・プラットホームとなることを目指しています。

また実際の活動は、「学びの場」「交流の場」であるとともに、「事業創造の場」と定義し、事業創造については出来る限り具体的な事業に結び付けるために、分科会活動として実行していく所存です。

                       一般社団法人 自動車100年塾   
                         代表理事  和田 憲一郎
                                  理事    鶴原 吉郎  
                           理事  宮尾 健

なお、今回の一般社団法人化を記念して、以下のとおり「記念ワークショップ」を開催することといたしました。ご都合のつく方はご参加賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。

・日時  2016年8月1日(月) 18:30~20:30
・場所  文京シビックセンター 26F スカイホール
・参加費 5000円

今回のワークショップは、自動車100年塾の今後の活動内容ご報告とともに、基調講演では、未来予測で有名な株式会社アクアビット代表取締役の田中栄様に今後どのような未来が待っているのかなど、貴重なお話を伺う予定です。その後は、従来どおり車座になって、グループディスカッションを行う段取りとなっております。

参加資格は、特に設けておりませんが、自動車産業に携わっている方、将来の自動車産業に関心のある方であればどなたでもけっこうです。

これまでご参加されている方、また自動車産業に興味を持たれた方は、下記よりお申込みいただけると幸いです。

http://www.auto100y.org/

2016年5月16日 和田憲一郎のビリビリ!とくる話

日産自動車と三菱自動車による資本業務提携について

ご承知のとおり、このニュースは日が替わった5月12日0:15頃、日経より特報として流されました。このニュースを聞いて、一瞬驚いたものの、逆に私的にはビリビリ!ときませんでした。

正直「何だかなぁ・・・」と思ったものです。確かに、三菱自動車の取引先は6000社以上あると言われており、この提携にて各企業から「倒産」の文字が遠のいたことから良かったのかもしれません。

ただ、引っかかってしまうのは、燃費不正の原因がはっきりしていない中で、あえてこのような資本提携を出すことに、どのようなシナリオがあったのだろうと考えてしまうのです。

思い返せば、ディーゼルエンジン車の排気ガス不正問題で窮地に立たされたVWがまだ原因調査中にも係らず、2015年10月13日に突然、今後の環境対応車の軸足をディーゼル車から、一気にEVに移すと公表しました。

その時の私の見立ては2つでした。一つはディーゼルエンジン車から目をそらさせること。ディーゼルエンジン車をあえて昔のものと見なし、今後の新しい方向性としてEVに移行すると公表することで、不具合への注目度を下げようとしたのではと考えました。

もう一つが、欧米特有の「ゲームのルールを変える」ことです。自社に都合が悪くなったり、窮地に追い込まれたりした時は、ゲームのルールを変え、別の土俵(EV/PHEV)で勝負しようとPRしたのではないかということです。

今回は、上記2つはそのまま当てはまらないかもしれません。しかし、VWの場合と違って、燃費不正と提携の話は深い関係でもあるようにも見えるのです。

シナリオが資本提携のところまでなのか、その先があるのか気になるところです。
まだ多くが調査中とのことなので、その結果を待ちたいと思います。

2016年4月25日 和田憲一郎のビリビリ!とくる話

三菱自動車の燃費不正問題について

メディアにて既報のとおり、4月20日に三菱自動車から燃費不正の問題が公表されました。ちょうど筆者は海外出張に出ていた週であり、最初に聞いた時は軽自動車4車種に燃費不正が判明したと報道されました。

これだけでもビリビリ!ときたのですが、その後、4月22日になるとそれ以外の車種、特に私の関わっていたi-MiEVまでもがその対象であると報道されました。

これはまさに驚天動地、思わず「ホントなのか!」と今の今まで知らなかったことに本当にショック!を受けたものです。

通常、車両の開発期間は実験部門と連絡を密にしています。i-MiEVでの約5年の開発期間中も、数えきれないぐらい実験部門に出向き、走行試験に立ち会ったり、時には高速周回路や波状路を自ら運転したりして、一緒に改良を続けてきました。

また、実車の衝突試験にも幾度も立ち会い、完成度合、安全性を確認してきました。このため、実車試験には恣意的な要素は何ら入る余地はないと思っていました。

しかし、振り返ってみても、私の記憶では一度もこの走行抵抗試験に立ち会ったことがないのです。試験項目は何百とあるため、専門的であったためでしょうか。

それにしても、今回の事件は考えれば考えるほど、摩訶不思議です。

なぜそのような不正をやる必要があったのでしょうか。燃費の焦りなどと報道されていますが、客観的に見ても、軽自動車ではトップにかなり差をつけられており、プラットホームの違いもあって、そう簡単には追いつけそうにもありません。

またi-MiEVでは、先行車がない中で、燃費(電費)うんぬんよりも、信頼性、安全性の高いクルマを作ることが最優先されてきました。

このため、燃費向上のために行ったとは到底思えません。

さらに、たとえ部長がこのような指示をしたとしても、コンプライアンスに問題のある指示であれば、課長、主任、担当がそう簡単に納得したとも思えません。

どうしても何か別の動機があるように思えてしまうのです。

一つ引っかかっているのが、走行抵抗を計測する際に、道路運送車両法で規定されている「惰行法」でなく、なぜ米国で規定されている「高速惰行法」を採用したかです。

惰行法では、20km/h、30km/h、40km/h、50km/h、60km/h、70km/h、80km/h、90km/hからギアをニュートラルで指定速度、例えば90km/hを+5km/h上回る速度で走行させます。その後、試験の測定は95km/h(つまり+5km/h)から85km/h(つまり-5km/h)まで減速する時間を測ります。

また、試験は往路3回及び復路3回行い、その平均をとると規定されています。

ここで一つ疑問が生じます。

低速での試験は良いのですが、高速、例えば90km/hの条件にて試験を行おうとすれば、95km/hまで加速する平坦路が必要であること。さらにそこから惰行減速させることから、相当長い平坦の試験路が必要ではないかと思えることです。

岡崎のテストコースは1962年に出来たこともあり、かなり小さく、直線の平坦路は1km程度しかありません。はたして、この惰行法には適した試験場所だったのでしょうか。

逆に高速惰行法は急ブレーキを踏み、1秒毎の減速変化を測ります。つまり、試験場所はそれほど長い平坦路が必要ありません。

三菱自動車は、栃木県に喜連川研究所があり、岡崎より数倍広いテストコースがありました。しかし、2003年1月にダイムラー資本が入り、三菱ふそうトラック・バスとして独立しています。

また、北海道には1周10km以上にも及ぶ広大な十勝研究所を有しています。しかし、ここまで車両を運ぶのもかなりの費用と時間、労力を要します。

今回の件は、背景に試験設備・試験場所の不都合があったのではないか、あくまで私見ですが、そんなことを考えた次第です。

現在調査中とのことなので、その結果を待ちたいと思います。

2016年3月21日 和田憲一郎のビリビリ!とくる話

分科会  成果報告書完成!

私はドラッカー「マネジメント」研究会に所属しておりますが、当研究会では 定例の研究会の他に、以前から分科会活動として3期、5つの分科会活動を行って きています。

2014年からの第4期活動としては、「少子高齢社会」および「商品開発とベンチャー ビジネス」をテーマとして選び、小職は商品開発のチームリーダーとして分科会活動を 推進してきました。

当該活動は2014年3月18日にキックオフを行った後、2ヶ月に1度のペースにて分科会活動を行い、成果物としては、2015年4月21日に報告書第1版を作成した後、内部レビュー会、 及び識者によるレビュー会を経て、この度、最終報告書として完成することができました。

改めて見てみると、当該報告書はA4x280ページもあり、内容が濃いため、読むだけでも5~6時間いやもっと要するかもしれません。まさにビリビリ!ときた瞬間です。

特に、小職の担当した「商品開発とベンチャービジネス分科会」では、初期段階にてドラッカーが著者として発行した全31冊の本を、各メンバーに分担し、商品開発とベンチャービジネスに関する事項を抽出したことに特長があります。

このように、全てのドラッカーに関する文献を一堂が読み返すことにより、ドラッカーがどのようなことを示唆しようとしていたのか、全体を把握することに努めました。

その後、最終的な論文の取り纏めに当たっては、「フレームワーク」と「企業研究」の2つに分類しています。フレームワークでは、これまで判りにくかった商品開発の進め方を整理するとともに、ロジック的に見える化を図りました。また企業研究のテーマでは、公開に支障の出ない範囲にて、出来る限り具体的に記載するように心掛けています。

足掛け2年に及ぶ分科会活動であることから、参加されたメンバーの方々には厚く御礼を申し上げたいと思います。なお、当該成果報告書の内容は5月21日開催のドラッカー総会にて発表の予定です。
       

2016年2月21日 和田憲一郎のビリビリ!とくる話

第4回 自動車100年塾の開催について

2016年3月7日(月)に「第4回自動車100年塾」を開催致します。

この自動車100年塾は、昨年4月に有志3名にて立ち上げ、将来の自動車産業はどうあるべきか、また我々は何をしなければならないのかを考える場として、活動を続けてまいりました。

昨年3回開催されたワークショップでは、お招きした講師の方々からガツン!となるような叱咤激励、薫陶を受け、たいへん好評を得ることができました。またぜひとも来年も行って欲しいと、多くの要望を受けました。

本年2年目を迎えるにあたり、この自動車100年塾はどうあるべきか検討を重ねてまいりました。そして、第4回はその新たな取り組みについて、皆さまにご提案させていただきたいと考えております。

また本塾の特長である、チームメンバーによる自由闊達な時間も設けております。

私どもの思いは、本塾を従来の企業枠を超えた場、さらには新たなビジネスを生み出す孵化基盤に育てていきたいと思っておりますので、自動車に関心のある方はぜひともご参加賜りますようよろしくお願い申し上げます。

ご参加される方は下記リンクよりお申込みお願い致します。

http://www.carnorama.jp/auto100.html

2016年1月14日 和田憲一郎のビリビリ!とくる話

2016年1月13日「Automotive World」の基調講演を聞く機会がありました。
基調講演は4人のスピーカーだったのですが、最後に講演されたTesla Motorsの電池責任者カート・ケルティ氏が言ったことで気になったことがありました。

彼とは2013年6月に来日の際、取材したことがあるのですが、相変わらず元気な様子でした。さて、気になったことの一つがソフトのアップデートです。

テスラのモデルSでは2~3ヶ月に1度の割合で、ソフトのアップデートを行っているとのこと。その中の一つに、最高スピードもUPさせることができるとのこと。思わず「えっ!」と言ってしまいました。

私はソフトのアップデートとは制御系、つまりバグとか最新のソフトを導入するレベルかと思っていたのですが、テスラはかなり大胆にいろいろな要素をアップデートさせているようです。

これは自動車会社の思想というより、ソフトウェア会社の思想でしょうか。

もう一つは自動運転に関してです。

テスラでもまだ初期段階の自動運転なのですが、それでも2014年の段階でモデルSにはカメラ・レーザーレーダーなどハードは既に取り付けて販売したとのこと。

しかし、ずっとソフトが完成しないので動かすことが出来なかったが、2015年10月なり、ソフトがかなり完成したので、ようやくハード&ソフトで自動運転機能の一部を作動させたとのこと。

これも自動車会社の発想ではなかなか実現難しいことです。ソフトを開発している1~2年の間にハードも進化してしまうことを考えると、早い段階で装着することのリスクを取れるものではありません。

2つのコメントを聞き、考え方がこれまでと違うとビリビリ!ときたものです。

なお、これに関して、2016年1月11日付けWSJにて、テスラは自動運転機能付きの車両で、オーナーが危険な状況で「手放し」運転している様子を撮影した動画が多く出回っていることを受けて、自動運転機能に制限を加えたと報じています。

また、最初のスピーカーであった富士重工スバル技術本部の執行役員も、スピーチ最後に、当社は自動運転に関して5段階あるが、アイサイトなど先進技術をもってしても、まだ当面はレベル2(場面を限定した上での部分的な自動運転)を目指すと言及しており、完全自動運転や人が乗っていない自動運転は視野に入れていないようでした。

自動運転はメディアによりオーバーシュートした感もあり、今年はさらに地に足のついた議論になってくるのかもしれません。