10月

2015年10月28日 和田憲一郎のビリビリ!とくる話

 「第3回 自動車100年塾」の開催について

 さて、ようやく段取りが整い、「第3回の自動車100年塾」を開催する運びとなりました。 自動車に関心のある方は、ご検討いただけると幸いです。

 この「自動車100年塾」は、自動車に関連した経験を持つ有志3名にて、今後の自動車産業のあり方を勉強する場を設けようと、この4月に結成したものです。

 第1回は、5月29日には、第1回として、東大・一橋大などで教鞭を取られ、政府系委員も多数歴任されている特定非営利活動法人 産学連携推進機構 理事長の妹尾堅一郎氏にご登壇いただきました。「ロボットとしての自動車、サービスとしての自動車 ~自動車産業生態系の観点から自動車の未来を考える~」というテーマにてご講演いただきました。

 また第2回は、9月7日に、著書「オープン&クローズ戦略」で有名な、東京大学政策ビジョン研究センター シニアリサーチャーの小川紘一様にご登壇いただきました。「IoT時代の自動車産業と日本企業の方向性 ~自動車産業にオープン&クローズ戦略が必要となった」と題して、ご講演いただきました。

 両講演とも、「企業の中にいると、このような発想がなかなかできなかった」「頭をハンマーで殴られたようなショックだった」など、たいへんな反響をいただきました。

 この好評の結果を受けて、第3回では、連続で学術系が続いたので、実務に強い方にと思い、日経テクノロジーオンライン『リアル開発会議』で有名な「開発の鉄人」こと、システム・インテグレーション社 代表取締役の多喜義彦氏にご登壇いただき、「開発の鉄人がリアルに語る 新事業・新商品開発の実際 ~ワープの時代 自動車はどうなる~」というテーマにてご講演いただくこととなりました。

 なお、今回は会場の都合により定員30名としております。申し訳ありませんが、先着順としておりますので、ご了承賜りたく、よろしくお願い致します。

・日時  11月27日(金)18:30-20:30

 また、今回ご都合悪い方も、次年度多彩な企画を準備しておりますので、次回よりご参加検討いただきたく、よろしくお願い致します。

http://www.carnorama.jp/auto100.html

2015年10月19日 和田憲一郎のビリビリ!とくる話

 「潮目が変わったのか!」

 年初めに、しばらくは燃料電池車(以下FCV)の話題が続くが、秋口からは流れが変わり、電気自動車/プラグインハイブリッド車(以下EV/PHEV)に話題の中心が移るのではと予想しました。これを聞いた多くの人は、当時毎日のようにFCVがメディアを賑わしていたこともあり、半信半疑だったようです。

 それを考えた背景として、多くの要素がEV/PHEV関連で同時進行しており、これが出現するのが2017~2018年であること。そして、一気に流れが変わる閾値(Tipping Point)がその時に来るのではと見立てを行いました。

 そして、2017年の東京モーターショーでは、既に量産車が出てくることを考えるとコンセプトカーを出すのは今年の東京モーターショーでないかと予測したのです。まさに、クルマの出現時期から逆算してトレンドの動きを予想しました。

 ところが、思いもよらぬことから変化が生まれました。VW問題です。
排ガス不正問題で窮地に立たされたVWが、ご承知のように、環境対応車をディーゼルから、一気に電気に軸足を移すと表明しました。(2015/10/13)

 これに堰を切ったかのように、連日関連する報道がありました。
まさに何か連動しているのではと「ビリビリ!」と思った次第です。

・トヨタ・・・2050年グローバル新車平均走行時CO2排出量を90%削減。
       つまり2050年までにガソリン車をゼロにする。(2015/10/14)

・ボルボ・・・今後発売する全てのクルマにPHEVモデルを準備するとともに、
       2019年までにEVの販売を開始する。(2015/10/16)

・ホンダ・・・今後のエコカーはPHVを主体に考える。(2015/10/17)

 それにしても、ここに来てなぜ急激にEV/PHEVに傾斜し始めたのでしょうか。
複数の要因があると思いますが、私の見立てとしては主に3つです。

1.自動運転技術の導入が早まりそうなこと
 無人、完全な自動運転のレベル4はまだまだ無理としても、半自動運転であるレベル3への技術開発が進んでいます。このレベルでは、運転責任はあくまでドライバーにありますが、ある一定条件下であれば、自動運転が可能な
 ところまで技術が進んでいます。そして、いよいよ法整備、保険など付帯条件の分野にまで検討が進み始めました。

 その時、EV/PHEVなどの電動車両がないと、せっかく機器を開発しても、載せるクルマがないというこになりかねません。

2.ガソリン車の収益に陰りが見えてきたこと
 円安にて一服ついていた日系自動車メーカーも、来期は減益予想となるところが複数出てきています。また中国の減速で大きなダメージを負っているドイツ、米国、韓国の自動車メーカーも同様の状態となっています。
 
 このような状況を打破し、他社との競争に打ち勝つためにも、いち早く次世代のパワートレインに切り替える必要性が出てきたのではないでしょうか。なお、ハイブリッドでは新鮮味もなく、その役目は難しいように思えます。

3.次世代電池(エネルギー密度向上、全固体電池の導入)への目途が立ち始めたこと
 電池は、要素技術が生まれてから量産化まで、一声10年と言われます。2009年にi-MiEVが生まれてからはや6年が経過しました。2017~2018年を想定すると、既に各社からアナウンスされているとおり、300kmを走行可能とする電池など、次世代電池の登場が近づいているように思えます。

 また、2020年頃には、リチウムイオン電池の弱点であった有機系電解液を、不燃の電解質に変えた全固体電池が登場するかもしれません。

 ただ、残念なことは、このような状況に於いても、まだどの方向に進むか躊躇している日系自動車メーカーも多いように思えます。そうしている間に、ガソリン車で勝負できた市場でも、テスラなどの米国ベンチャー企業やドイツ自動車メーカーに市場を奪われていくのではと危惧します。

 「急激な構造変化の時代にあっては、生き残れるのは、自ら変革の担い手、チェンジリーダーとなる者だけである」とはP.F.ドラッカーの名言ですが、まだ先頭に立とうとしない今の自動車メーカーに、この言葉が当てはまるのではないでしょうか。

2015年10月8日 和田憲一郎のビリビリ!とくる話

「時代に逆行!」

 CEATEC JAPAN 2015(最先端IT・エレクトロニクス総合展)について、10/6の開催発表記者会見や、10/7の展示状況を見てかなりショックを受けております。

 というのは、CEATECは、家電・ITとクルマが融合するとてもユニークな展示会になるであろうと期待して行ったのですが、思いっきり外れてしまいました。

 開催期間は10月10日まであるので、ぜひご自分の目で見られることをお勧めします。私があれっと思ったことは、次の5つです。

1.行政の力の入れ具合が今一つ
 このような大きなイベントは、各省庁からも強力にバックアップしているハズなのですが、挨拶として演台に立ったのは経産省と総務省の課長補佐クラス。肩書が全てとは言いませんが、このような大きなイベントにも係らず、局長や課長でないことに、あれっと思ってしまいました。周囲からも、「この程度の力の入れようなの?」と声が漏れ聞こえておりました。

2.大手自動車メーカーが不参加
 これまで自動運転などで話題を振りまいていた大手自動車メーカーのトヨタ、日産とも不参加となっています。参加していたのはホンダ(発電装置がメイン)、マツダと米国テスラのみ。どのような事情があったのかは判りませんが、自動車メーカーがこのイベントから手を引いたような印象を受けました。

3.大手家電メーカーは昔のエレショーに回帰
 CEATECは、2000年まで”エレクトロニクスショー”(通称エレショー)として開催していました。今回、パナソニック、シャープなどは、テレビ・家電品などを多く展示し、昔の”エレショー”に回帰してしまったように見えました。しかし、4K、8Kのテレビをいくら展示しても、IoTとの繋がりはかなりギャップを感じてしまいます。

4.主要3メーカーが不在
 日立、東芝、ソニーの3社は、今回ブースすらありません。確かに、日立などはJR運行システムなどのインフラに力を入れており、B2Bがメインかもしれませんが、それにしても、B2Cが重要であることは言うまでもありません。

 米国のシリコンバレーでは、最近モノ作りへの回帰が著しいですが、日本の大手メーカーの発想力、技術力が弱くなってしまうのではと危惧した次第です。

5.電子部品メーカーは健闘
 それに対して、村田製作所、TDK、京セラ、ロームなどの大手電子部品メーカーはとても元気でした。それは説明員となっている技術者にも表れており、多くの技術者に話を聞いても、生き生きとして開発品のことを説明してくれ、とても頼もしく思った次第です。

 私の見立てでは、CEATECなどを契機に、電気・電子・ITを得意とし、かつクルマの技術力も高い日本から、新しいIoTが生まれてくるのではと期待していたのですが、今回はまだ時期尚早のようでした。
10月28日からの東京モーターショーに期待したいですね。

2015年9月19日 和田憲一郎のビリビリ!とくる話

 ここにきて、ドイツ自動車メーカーが一斉にプラグインハイブッド車(以下PHEV)に力を入れ、大量投入を計画しています。メディアでは、その理由として、欧州CO2 規制や、米国カリフォルニア州でのZEV規制などを挙げています。

 しかし、本当にそれが理由でしょうか。彼らは、もっと長期的な視点から戦略を組み立ててきているのではないかという視点から、彼らの頭の中を考え、私なりに シナリオを読み解いてみました。

 そのため、私なりの見立てをアイティメディアに寄稿しております。

http://monoist.atmarkit.co.jp/mn/articles/1509/18/news024.html

 私としては、少なくとも4つのシナリオがあると思っております。
詳細は上記コラムをご覧ください。

1.開発の余地があるPHEVとインダストリー4.0を連動させることで、日米に対して競争力が保てると判断した
2.最大市場である中国を死守するため、PM2.5など環境問題への対応と、今後実施される中国版ZEV規制を先取りして、PHEVの重点投入を決めた
3.政治の影響力が強い中国と、製造分野での関係を強化するため、インダストリー4.0の内容を中国に伝え、「中国製造2025」と補完関係を築いた。PHEV、EVについても、同様にすみ分けの戦略を考えた可能性がある
4.欧州におけるCO2排出規制、米国カリフォルニア州のZEV規制、さらには上述の中国版ZEV規制に対し、PHEV投入が有効であると判断し、集中投資を決断した