12月

2025年12月25日 和田憲一郎のビリビリ!とくる話

   欧州委員会による自動車分野の規制緩和について私見

2025年12月16日、欧州委員会は自動車分野に関する新たな規制緩和案を公表した。本件について、一部報道では「エンジン車禁止の撤回」などの見出しが用いられているものの、実際の内容を正確に反映しているとは言い難いと思われる。今一度、欧州委員会の公表内容を整理してみたい。

1. 欧州委員会による主な提案内容
・2035年に内燃機関車の新車販売を原則禁止する方針を撤回する案を提示
・対案として、2035年以降、2021年比で90%のCO2排出量削減を課す新基準を提示
・残りの10%CO2排出量は、EU産の低炭素鋼の使用、またはe-Fuelやバイオ燃料によって補填する必要あり
・上記CO2排出量90%削減、およびEU産の低炭素鋼の使用、またはe-Fuelやバイオ燃料によって補填することを条件に、2035年以降もBEV、FCEVに加えて、PHEV、レンジエクステンダー、マイルドハイブリッド車、内燃機関車も引き続き販売可能となる
・「小型手頃な価格の自動車(Small Affordable Cars)」イニシアチブとして、全長4.2mまでのBEVを対象とする新たな車両カテゴリーを導入する
・EU域内で製造される上記小型BEVは「スーパークレジット」の恩恵を受けることができる
・社用車に関しては、大企業によるゼロエミッション車および低エミッション車の導入を支援するため、加盟国レベルで義務的な目標を設定すること

2. 規制緩和案に対する私見
このような規制緩和案を見ると、今回の案がEV推進策の後退なのかと問われると、とてもそうとは言い切れない。むしろ2021年比で90%のCO2排出量削減を課す新基準を設定し、かつ残りの10%も低炭素鋼の使用や、e-Fuel・バイオ燃料等の使用を義務付けるなど、かなり厳しい条件が付与されている。

ガソリン車の復権というにはほど遠く、CO2排出量を達成したときの「ご褒美」という意味合いでしかないのではないか。

なお、欧州委員会の公表は案であり、最終決定には加盟国や欧州議会の承認が必要となり、今後の審議には紆余曲折が予想される。