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2022年8月22日 和田憲一郎のビリビリ!とくる話

最近笑ったり、驚いた話題を2つ

イーロン・マスクがまたお茶目なことを8月17日Twitterに投稿した。”Also, I’m buying Manchester United ur welcome”。英国プレミアリーグのマンチェスター・ユナイテッドを買おうとのこと。クリスティアーノ・ロナウドが退団意向との噂があり、ここが底値と思ったのであろうか。

その4時間後、「これはTwitterで長く続くジョークだ。どのスポーツチームも買収していない」「とはいえ、もしそうするならマンUだろう。子供の頃から私のお気に入りのチームだ」と投稿。

マンU買収額は2800億円とも言われており、イーロンなら買えるかもしれないと、ニュース速報が流れたことに、思わず吹いてしまった。

もう一つが、中国ギガ上海にて8月15日、製造開始から3年で生産累計100万台を達成したことである。これには心底驚かされた。なぜかと言えば、電気自動車は自動車メーカーが生産したいと思っても、需要とそれに対応する電池供給が続かなければ、台数は大幅に増えないのである。

ちなみにアイミーブは全生産台数で約24000台、日産リーフでもこれまで約50万台強である。それを考えると、いかにテスラの販売台数の勢いがすごいかが判る。多くの自動車メーカーもEV化を推進しているが、このスピード感について行けないのではないだろうか。最近、世界と日本のスピード感が違うように思えてならない。

2022年7月25日 和田憲一郎のビリビリ!とくる話

 BYDの日本進出は黒船来襲に匹敵か

7月21日、BYDが日本で今後3車種のEVを販売するとの発表を聞いて、いよいよ来るべきものがきたと感じた。

BYDの強みは、これまで大量のEV生産・販売の実績、社内に豊富なソフトウェアエンジニアを抱えること、自社でリチウムイオン電池を生産できることにある。

ある意味、これはテスラにも当てはまり、王伝福氏、イーロン・マスク氏とカリスマ経営者が率いているところも同じであろう。

なぜ日本進出なのかとの問いに対して、私は3つを挙げたい。

1.日本市場のEV比率がまだ極めて低いこと
 国別でみると、日本市場は縮小したとはいえ、2021年の新車販売でも、中国、米国についで第3位(約445万台)に位置する。しかし、日本では、EVのシェアは0.5%に過ぎず、PHEVを合わせても1%である。ということは、これほど低いのであれば、これから伸びる可能性があると考えたのであろう。

2.EVバスでの経験が生きた
 BYDが日本にEVバスを持ち込んで以来、観光業者は価格が安く、世界で実績のあるBYDのEVバスを数多く導入してきた。BYDは、中国製車両が品質で厳しい日本で受け入れられるのかどうか慎重に検討してきたであろう。その結果、多くの導入実績から、例え中国製であっても、EVも日本市場に受け入れられると考えたのではないか。

 しかも、今回はテスラのようにオンラインではなく、約100箇所の販売代理店を構築しサービスを提供するとのこと。日本市場の顧客の実態にあった対面販売を採用し、橋頭保ではなく本腰を入れた戦略なのであろう。

3.日本の部品メーカーへのアプローチ
 もう一つ隠れた目的として、日本の部品メーカーへの関係深度があると思われる。BYDといえども、IGBTなど多くのパワエレ部品は日本企業に頼っている。ここでEVバスに続いてEV乗用車に進出することで、不足気味である半導体に関して、これまで以上に日系部品メーカーと繋がりを深めることができる、と考えたのではないだろうか。

 ひるがえって、日系自動車メーカーは、BYDの3つの強みに対する対応力が乏しい。BYDの正式価格はまだ公表されていないが、商品力は十分あり、リチウムイオン電池が自社生産であることから、意欲的な価格で攻め込んでくると考えられる。まさに、黒船来襲に匹敵するようなインパクトをもたらすのではないだろうか。

<ビーワイディージャパン株式会社のプレスリリース>
https://byd.co.jp/news/2022_0721_94.html

P.S.
乗用車の販売ならびに関連サービスを提供する100%出資子会社として、「BYD Auto Japan株式会社」の設立が同時に発表された。代表取締役社長に東福寺 厚樹氏が就任とのこと。東福寺さんとは三菱自動車時代に一緒に仕事をしたことがあり、この発表に驚かされた。

2022年6月27日 和田憲一郎のビリビリ!とくる話

 自動車産業の常識 vs.テスラの常識

最近話題になっていることの一つに、テスラがCCC(キャッシュ・コンバージョン・サイクル)で2021年度に初めてマイナスになったことが報じられた。

CCCとは、商品や原材料を仕入れてから、生産・販売して代金が手元に入るまでの平均期間を示したもので、テスラは2021年度に-15日になったとのこと。

自動車産業の平均CCCは日本で約55日、米国でもほぼ同様、中国は約75日とやや長めである。

私自身もこれまで、自動車産業は、材料手配から、生産・販売までを考えると、かなりの日数が必要なのは当たり前と思っていたことから、テスラがCCCで-15日になったことに驚かされた。

過去を紐解いてみると、テスラは2014~2015年にCCCで54日であり、その後、努力して低下させてきたようだ。

他社で強烈な企業はアップルであり、CCCは-74日とのこと。1996年は+70日であったが、スティーブ・ジョブズやティム・クックがCCC低減に向けて指示を出し、年々低下させてきたようだ。-74日ということは、仕入れ先に支払うはるか前に販売代金が入金されていることを意味する。

今まで自動車産業はCCCが長いことが常識であり、またCCCをマイナスにするよう目標を打ち出したことも聞いたことがなかった。

しかし、世界の優良企業はこれも目標を立てて取り組んできた。商品開発のみならず、このような別の指標に対しても行動してきた結果が、大きな差異となったのであろうか。

2022年5月25日 和田憲一郎のビリビリ!とくる話

自動車の再定義の時代が迫る

先般、日産自動車と三菱自動車が、共同開発した軽自動車タイプの電気自動車を今年夏に発売することを発表しました。

私が担当していたi-MiEVの発売が2009年ですから、12年目にしてようやく次期車の販売です。嬉しいと同時に感慨深いものがあります。クルマでいえば、1世代6~7年とすると、2世代が経過して発売されることになります。ここまで来るにはたいへんな努力があったであろうし、関係者の努力に敬意を表したいと思います。

ところで、日本ではまだHEVかEVかという話題がありますが、どうも海外では自動車の再定義が必要な時期が近づいているように思えます。

アイティメディアのコラムにも書きましたが、「ステアリングのない自動運転車」がまもなく出現です。このようなことを言うと、日本ではあり得ない、自動車として考えられないという声が必ず出ます。では、次の2つのビデオを見てから再度考えてみてください。

好むと好まざるとにかかわらず、これは夢物語でしょうか、それとも既に起こった未来なのでしょうか。

<ご参考>
https://www.youtube.com/watch?v=7GVL9Na1_9Q

https://www.youtube.com/watch?v=IxR_hvJ9Ngg

2022年4月11日 和田憲一郎のビリビリ!とくる話

Giga Texasにみるテスラのタイムマネジメント

米国時間2022年4月7日夜、テスラは「Cyber Rodeo at Giga Texas」と銘打ってGiga Texas工場のオープニングセレモニーを開催しました。

ちょうどライブ配信されていたので観ていたのですが、そこで感じたのは、工場建設もしかり、このような大規模なイベントも含めて、「タイムマネジメント」が徹底していると思ったものです。

ご存じのとおり、テスラはYoutubeにて、Giga Shanghai、Giga Berlin、Giga Texasを工場建設開始から完成、現在の進行状況までほぼ毎日ドローンにて公開しています。

私も毎日チェックしているのですが、今回のイベント準備が始まったのは確か3日前の4月4日頃でした。それまで何もなかったにもかかわらず、どれくらい前から準備してきたのか分かりませんが、あっという間にCyber Rodeoの準備が整ってしまいました。

驚かされたのは、外側だけでなく、工場内のディスプレイや生産設備にまでショーアップが施され、当日の映像などと連動していたことです。

日本の新工場では、まだ完全に完成していない段階でのお披露目など、想像できませんが、テスラの方々は楽しんで準備しているように思えました。それが証拠に、Giga Berlinではスーツ姿で硬い表情だったイーロンも、今回はいつものお茶目な姿に戻っていました。

孔子の格言「努力する者は楽しむ者に勝てない」を思い出してしまった次第です。

<ご参考>

Flying Through Giga Berlin
https://www.youtube.com/watch?v=7-4yOx1CnXE

Cyber Rodeo at Giga Texas
https://www.youtube.com/watch?v=fiwUE_2JhvY

2022年3月14日 和田憲一郎のビリビリ!とくる話

ついにNHTSAより自動運転車に関する法規案がリリース

 米国では多くの自動車メーカー(Waymo、Cruise、Argo AI、Tesla)などが公道にて自動運転車の走行を行っているものの、自動運転車に関する明確な法規はこれまで存在しませんでした。

 しかし、このたび米国運輸省道路交通安全局(NHTSA)が2022年3月10日、初めて自動運転車に関する連邦自動車安全基準(FMVSS)草案を設定しました。

 この報道に対して驚くと同時に、その内容に着目しました。草案では155ページの法規となっており、ざっとみただけですが、NHTSAがこの自動運転車に関する苦悩が感じられます。

 冒頭、NHTSAは、自動運転システム搭載車(ADS:Automated Driving System)の開発および配備の可能性については、不確実性が存在し続けるということは認識している。しかし、NHTSAはADSの新しい設計を見越して、この時期に措置を確定させることが適切であると述べています。

 またステアリングなどもないADSが存在することを想定し、”運転席”の定義として、「手動で操作する運転装置にすぐにアクセスできる指定された座席位置を示す」と、従来の考えを根本的に変えています。

 まだまだ驚くことが満載ですが、一つこのような基準ができることによって、米国では自動運転車の実現が近づいていくのではないかと予想します。

 おそらく、NHTSA法規を参考にしながら、欧州、中国なども自動運転車に関する法規が作成されていくのではないでしょうか。

https://jp.techcrunch.com/2022/03/11/2022-03-10-nhtsa-first-autonomous-vehicle-occupant-safety-standards/

2022年2月9日 和田憲一郎のビリビリ!とくる話

EVやインフラを学びたい方に朗報です

 昨今、EVや充電インフラがブームになるにつれ、正しい基礎知識を多くの方に身につけていただくことが、日本の将来にとって有益ではと思っておりました。そのため、EVや充電インフラの基礎の基礎を学ぶことのできるオンデマンド教育講座を何とか開催できないかと企画を温めてまいりました。

 本件の実現に向けて、日頃コラムを寄稿しているアイティメディアの方々と、長い期間、詳細な調整を行ってきた結果、日本を代表する方々からも基調講演の快諾をいただき、「EVアカデミー2022」として告知をリリースする運びとなりました。

 当該オンデマンドセミナーは有料となりますが、自動車関連企業にお勤めの方、また今後EVや充電インフラに参入を考えている企業の方にとっては、基礎の基礎を学ぶことのできる、またとない機会ではないかと思います。

 さらには、この4月から新入社員となる方にとっても、このような基礎知識を身につけておくことは将来役に立つのではと思っております。企業の責任者の方々、基礎を学びたいと考えておられる方、周りの方々にご紹介していただけると幸いです。

https://monoist.itmedia.co.jp/mn/special/mo220190/index.html

2022年1月31日 和田憲一郎のビリビリ!とくる話

幸運の女神には前髪しかない

 この格言は、ギリシア詩集から来ているようだ。意味は、幸運(チャンス)の女神は前髪しかないため通り過ぎた後、あわてて捕まえようとしても後ろ髪がなく掴む場所がないとのこと。

 髪があまりない私が言っても説得力はないが、せっかくのチャンスが来ても、じっくりと考えていると、チャンスを掴むことはできないというは確かな気がする。

 さて、今年は1908年にT型フォードが誕生して以来、ちょうど114年目。まさに時代が「自動車」から「モビリティ」へと大変革が起きようとしている。これはリスクでもあり、またチャンスでもある。

 おっと、幸運の女神は、今、目の前を通り過ぎていこうとしている。

2021年12月20日 和田憲一郎のビリビリ!とくる話

 社会インフラは2つが限界

急速充電の協議会であるCHAdeMO協議会が発足した2010年当時、関係者でよく「社会インフラは2つが限界ではないか」と話していた。

どういうことかと言えば、既存のガソリンスタンドがあり、CHAdeMO協議会では、電気自動車用の急速充電スタンド設置を積極的に進めていた。但し、狭い日本ではこのような社会インフラは2つが限界ではないかと考えていたのである。

その後、燃料電池車用の水素ステーション設立の話も持ち上がってきた。これでは、ガソリンスタンド、急速充電スタンド、水素ステーションと3つが存在し、将来はたしてどちらが生き残れるのかと懸念していた。

現在は、関係者の努力もあり、国内の急速充電器基は8000基に達している。先週、トヨタが2030年にEVのグローバル販売350万台を目指すと公表した際、「急速充電器も2025年ぐらいを目がけて全国の販売店に設置する」と言及している。

トヨタは国内の販売店舗が約6000店あり、これら全ての販売店に急速充電器を設置するとなると、2025年にはこれまでの設置数と合わせて14000基に達する。

一方、水素ステーションは整備中も含めて現在170カ所に過ぎない。今後の方向性として、ガソリンスタンドが減少し、急速充電スタンド1極になるのか。はたまた中国のように、電池交換スタンドがガソリンスタンドに次第に取って代わっていくのか、やはり社会インフラは2つが限界かなと思ってしまう。

2021年11月15日 和田憲一郎のビリビリ!とくる話

設計にも美しさが必要では

 先週、私共が主催する「一般社団法人自動車100年塾」にて、VW ID.3の分解・視察ツアーを開催した。緊急事態宣言が解除されたこともあり、昨年より多くの方々にご参加いただき感謝申し上げたい。

 さて、筆者の勝手な持論であるが、かねがね優れた商品には設計も美しさが必要であると思っている。クルマでいえば、エクステリア/インテリアのみならず、パワートレインなどの設計に対してもである。

 今回のVW ID.3はどうだろうかと視察したが、結論から言えば、それとはほど遠いものであった。バッテリーパックのレイアウトや、インバータなどパワエレ部品のレイアウトおよび内部構造など、大きく、重く、込み入っていて、思わずう~んと唸ってしまったのである。言葉は悪いが、設計的には「まだまだこなれていない」なと。

 昨年のテスラモデル3視察では、洗練された設計を見てきただけに、余計にそう感じたのかもしれない。ID.3はVWが本格的にEVシリーズとして開発したクルマであり、多くの制約の中で、エンジン屋さんが悪戦苦闘しながら、なんとかEVを設計したのではないかと想像した。

 しかし、VWの実力はこんなものではなく、次のID.4は大きく向上していると思われる。VWがいかにEVメーカーとして脱皮していくのか、楽しみに待ちたいと思う。