BYDの振り落とし戦略を考える
2025年5月23日、BYDは期間限定の「ワンプライス」または補助金プロモーションによる値下げを発表した。報道によれば、一部車両において最大34%の大幅な価格引き下げが実施される。この突然の価格改定は、BYD単体の株価に留まらず、吉利汽車、理想汽車、小鵬汽車といった他の中国自動車メーカーにも影響を及ぼし、各社が競争上の必要性から値下げに踏み切るとともに、株価の大幅な下落を招いている。
なお、BYDが価格戦略を大規模に実施するのは今回が初めてではない。2024年2月には、「ガソリン車よりも安い電気自動車(電比油低)」というスローガンの下、BEVおよびPHEVの価格を大幅に引き下げた。この施策により、新興EVメーカーのみならず、ICEやHEVを販売する日米欧の自動車メーカーも価格競争に巻き込まれ、販売台数の低下と収益悪化に直面した。日産自動車は工場閉鎖も表明している。
さらに、2025年に開催された上海モーターショーでは、日系自動車メーカーが出展したBEVが話題となった。しかし、BYDの今回の値下げ発表により、BEVおよびPHEV市場における競争力が低下する可能性があり、各メーカーは再び価格を引き下げざるを得ない状況に追い込まれるであろう。
BYDのこのような価格戦略は、市場全体の競争環境を大きく変化させる要因となる。自社の収益悪化を伴う可能性があるにもかかわらず、競合他社を市場から撤退させることを目的とする「振り落とし戦略」の一環として、この施策を推進していると考えられる。
それほどまでに、中国市場における新エネルギー車の競争は熾烈であり、特に日系自動車メーカーがこの流れに適応できるかどうかが、今後の市場での生き残りの鍵となるのではないか。