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2019年3月15日 和田憲一郎のビリビリ!とくる話

多産多死を許容する社会だろうか

先週、中国浙江省の杭州を訪問し、数多くのスタートアップやベンチャー企業と 交流する機会を得ました。それにしても驚いたことがあります。杭州には多くの スタートアップがあるのですが、それに対し国や省が巨大なビル施設を準備し、 彼らはその中で活動を行っていることが多いのです。

IoT、FinTech、AI、VR、ヘルスケア、バイオなど、ざっと訪問しただけでも、 それぞれが100から200のグループがあり、浙江省全体では1000を超えるスタート アップが活動しているのではないでしょうか。 昨年訪問した深センもそうでしたが、昨今の中国では、まるで「虎の穴」のように、 数多くのスタートアップが寝る間も惜しんで、新規ビジネス開発に取り組んでいます。

ということは、中国政府からみると、数万のスタートアップがあっても、その中で、 アリババやテンセントのように、幾つか優れた企業が出てくればそれで良い。スタート アップは多産多死であることを前提に、許容する社会や国としての考え方で 取り組んでいるように思えます。

なお、AIやVR向けビルを訪問した隣に、まだ実用化されていないにも係わらず、 隣に5G専用の巨大なスタートアップ用ビルがほぼ完成間近となっていました。もう 巨大な投資をしているのかと思うと、思わずビリビリ!と来てしまった次第です。 チャレンジしない日本、しにくい日本との差が広がっていくように思えます。

2019年2月18日 和田憲一郎のビリビリ!とくる話

ワイヤレス給電に関するワイトリシティとクアルコム

電気自動車関係者にとって、興味深いニュースが2019年2月11日に流れました。 米ワイトリシティ(WiTricity)が米クアルコム(Qualcomn)のEV/PHEV向け ワイヤレス給電事業「Qualcomn Halo」を買収すると発表したことです。

これについては、以前から噂になっていましたが、いよいよ現実になったようです。 あまりご存じない方のために紹介すると、ワイトリシティとクアルコムは近年 ワイヤレス給電の国際規格化で激しい争いを続けていました。各陣営とも自動車メーカー、 部品メーカーも巻き込み、さながらVHS vs.ベータのような様相でした。

筆者は以前に、米国ボストンのハーバード大学西側に位置するワイトリシティを 訪問したことがあります。ワイトリシティはMITから技術者がスピンアウトして独立した ベンチャー企業であり、ワイヤレス給電の原理原則の開発、ロイヤリティビジネスを メインとしています。会議室や廊下には、それまで取得したパテントが所狭しと掲げられて おり、あまりの多さに驚かされたものです。

一方、クアルコムは、元々ワイヤレス給電装置のチップビジネスを狙っており、自社では ワイヤレス給電機器は作らないと表明していましたが、ニュージーランド大学の研究者が 開発した「HaloIPT」を買収したあたりから、心変わりしたように思っていました。 今回の買収では、ワイトリシティが技術やライセンス権、1500件に及ぶパテントも全て 譲り受けるとのことで、これでEV/PHEVのワイヤレス給電規格争いにも終止符が打たれ、 普及に弾みがつくのではないかと思われます。

筆者の勝手な考えでは、新エネ車の伸展が著しい中国からワイヤレス給電が普及すると 見ており、第14次5か年計画(2021年~2025年)には、充電インフラ国家目標に、 ワイヤレス給電数も盛り込まれるのではないでしょうか。

電気自動車を開発していた頃、ワイトリシティのワイヤレス給電試作機を見て驚いた 経験があり、いよいよ実用段階を迎えるのかと思うと、感慨深いものがあります。

2019年1月21日 和田憲一郎のビリビリ!とくる話

パナソニックはフリーハンドを失った!

2019年1月20日の日経朝刊を見て、えっ!と驚かされました。トヨタとパナソニックが共同にて2020年を目処にEV用電池会社を設立するとのこと。

私の正直な感想を言えば「パナソニック、やっちまった!」と思ったのです。もしパナソニックの関係者の方がいれば、勝手なこと言って申し訳ありません。

というのは、私自身の考え方として、新エネルギー車の基幹部品を作る部品メーカーで最も重要なことは、独自性を保つことではないかと思っているからです。つまり、ビジネス的に繋がりはあるけれど、どの自動車メーカーにも属さず、フリーハンドで対応することが大切ではないかと。これは電池に限らず、モーター、インバーターでも 同様です。

もちろん、自動車メーカーと合弁会社を作れば、供給先が確保されるため、ビジネスは安定します。これは自動車メーカーも同様でしょう。しかし、他の自動車メーカーからみれば、その合弁企業とは、新車の仕様や将来展開などが漏れる懸念があるため、新規に取引を開始することを躊躇するのではないでしょうか。

今回の場合、パナソニックは、元々、日本ートヨタ、米国ーテスラ、中国ーテスラ(仮)+地場企業というように、三極に分けてコントロールしており、さすがと思っていました。しかし、今回の報道では、テスラ以外にはこの新会社を通して電池を供給するとのこと。

これは、せっかく松下幸之助さんの時代から、中国で良い評判を築き上げ、日本企業と言えども信頼の高いパナソニックに対して、日日連合であれば風圧が高まるのではないでしょうか。

収益面での懸念もあります。一般的に、自動車メーカーと電池メーカーとの合弁新会社は、利益を出さない、むしろ出させない「コストセンター」の位置づけにあります。利益が多く出るならもっと安く供給せよと自動車メーカーは迫るでしょう。

そう考えると、今回の件はトヨタに利があるものの、パナソニックは失うものが多いように感じてしまうのです。詳細は公表されておりませんが、悪手とならないことを祈るばかりです。

2018年12月19日 和田憲一郎のビリビリ!とくる話

 自動車100年塾の基調講演から学ぶ

私どもは2015年4月から、3ヶ月に1度の割合で勉強会「自動車100年塾」を開催してまいりました。昨日開催の「第15回自動車100年塾ワークショップ」では一般財団法人 日中経済協会 専務理事の杉田定大様から、「米中経済冷戦を見通す」というテーマにて基調講演を聞く機会を得たので、その内容についてご紹介します。

私の知る限り、杉田様は中国事情について最も詳しい方であり、昨日の講演でも、プレゼン資料は130ページに及び、驚きの内容でした。

かなり際どい内容も多かったのですが、頭に残ったキーワードが2つあります。
1.今回の冷戦激化は、2018年10月4日ハドソン研究所にて行われたPENCE副大統領による「対中政策全面見直宣言」が発端となっている
2.米中ハイテク冷戦が始まり「中国エマージング技術に対する対中シフト」が強化される

グループディスカッション後に、では今後、日本はどうすれば良いのかとの質問が出たところ、杉田様は「日本政府は米中間をうまく取りなす器用なマネはできない。それを前提にした上で、民間は知恵を出さなければならない。日本は現在、自動車1本足打法であり、早く他の産業を育成していかないと危ない」とのコメントをいただきました。

私自身はこれを聞いて、ビリビリ!と米中冷戦の深刻さを感じるとともに、日本は「したたか」な対応が必要ではと思ったものです。粘り強く、そう簡単には圧力に屈しない、しぶとさがこの時代に求められるのかもしれません。

2018年11月28日 和田憲一郎のビリビリ!とくる話

中国:雄安新区は未来の都市像であろうか

かねてより行きたかった中国雄安新区に、今週訪問することができた。ご存じない方のために少し説明すると、雄安新区は北京の南西150kmに位置し、北京首都機能の一部を補完することや、新たなイノベーションを集積した街として2017年に公表された新区である。

当初の人口は100万人、面積は長期計画として1770km2を想定とのことである。しかし、筆者が見たところ、新区があまりにも広大で、構想の1%も出来ていないように見受けた。今回はかなりゆっくりとしたスタートなのであろうか。

一番の目玉は、何と言っても、自動運転車しか街中を走行出来ないことである。新区近くの駐車場で止められ、EVシャトルバスに乗り換えて、新区の中に入ることができた。新しく出来た雄安新区市民サービスセンターの周囲では、自動運転車のアポロプロジェクトや、自動荷物運搬車のNEOLIXなどが実証試験を行っている。

ただ、筆者の印象として、初期で100万人、2035年頃には200万人を超えると想定している割には、都市計画は、オフィスビル、住宅地、碁盤目状の道路というように普通である。

私見であるが、せっかく世界の最先端テクノロジーを集めて、新しい街を作るのであれば、街の中に自動運転車や自動運転バスが走るだけでなく、もっと人の大量移動を可能にする新たな高速トラムや移動体がなければ、北京以上の渋滞になってしまうのではと危惧する。

より辛口に言わせていただくと、新区構想は素晴らしいものの、モビリティに関しては、EVや自動運転車など、今ある技術、もしくは延長上の技術を集めて、新しい都市を創ろうとしているように見受けた。

このため、かなりビリビリ!とくるのではと期待して行ったのであるが、出発前に観た映画「ボヘミアン・ラプソディ」のほうがよっぽどビリビリ!ときた次第である。いずれにしても、雄安新区は着手したばかりであり、どう変化していくのか再度訪れてみたい。

2018年10月23日 和田憲一郎のビリビリ!とくる話(特別編)

一般社団法人 自動車100年塾 海外視察のご案内

今回は特別編として、自動車100年塾海外視察のご案内をさせていただきます。

一般社団法人 自動車100年塾では、かねてからご案内のとおり、初めての海外視察を 計画しました。今回は訪問先として中国を選びました。大きなイベントに合わせて、中国の今を 見ることができる良い機会と思いますので、ぜひともご参加賜りますようお願い申し上げます。

なお、会員でなくとも参加可能です。
自動車100年塾にご参加の方は昨日案内が届いており、重複となることご容赦願います。

詳細は以下の自動車100年塾HPをご参照ください。

リンク先:
http://www.auto100y.org/

2018年10月11日 和田憲一郎のビリビリ!とくる話

CASEはMaaSではない

ソフトバンクとトヨタとの記者会見が話題となっているが、筆者がとくに気になったことについて述べてみたい。

近年、自動車メーカーは、独ダイムラーのツェッチェCEOが提唱したCASE、つまりC(Connected)、A(Autonomous)、S(Shared)、E(Electric)が将来の進むべき方向を示唆すると受け止め、トヨタもこの路線で動いている。

一方、自動車業界にとらわれることなく、公共交通機関、バス、タクシー、カーシェアなどをシームレスに繋ぎ、予約と決済ができるモビリティのサービス化、いわゆるMaaS(Mobility as a Service)が欧州を中心に進展してきた。

今回の会見を聞いていて、トヨタはCASEの話をしたがり、逆に言えばMaaSの話は避けたく、ソフトバンクはMaaSの話をしたかったが、トヨタの意向を理解して抑えていたような印象を受けた。

話は逸れるが、9月中旬にコペンハーゲンにて開催された第25回ITS世界会議に筆者も参加した。ある発表者が、世の中にはMaaSと自動運転車やライドシェアをごっちゃにする人がいるが、MaaSの定義は「さまざまな形態の輸送サービスを、アクセス可能な単一のモビリティサービスに統合したもの」であり、自動運転車やライドシェアなどと区別する必要があると説いていた。European MaaS Allianceも同様な定義の位置づけである。

そして、話を今回の記者会見に戻せば、トヨタがMaaSの話をしようとすれば、マスター(主)とスレーブ(従)の関係が生じることを説明しなければならない。今回設立の新会社が、もしソフトバンクを中心としたMaaSプラットフォーマーになるのであれば、セカンドレイヤーとしてライドシェア企業などが位置し、クルマを提供するトヨタはサードレイヤーの位置付けになる。

さらに言えば、セカンドレイヤーとなるライドシェア企業の代表格である滴滴出行、UBERなどもソフトバンクが大株主であり、結果的にトヨタは2段階下に位置する構図となる。このような状況は説明しにくく、トヨタは意識してMaaSの話を避けたのではないだろか。

ただ、将来はMaaSプラットフォーマーが自動車も含めたMobility全体をコントロールすると予想されている。そのような中、記者会見の際に、握手したソフトバンク孫正義会長が自信あふれる姿に見え、トヨタの豊田章男社長が(ここで握手して良いのであろうかと)やや不安げに見えたのは筆者だけであろうか。

2018年9月27日 和田憲一郎のビリビリ!とくる話

 ITS世界会議からMaaS世界会議へ

デンマークのコペンハーゲンにて9月17日より開催された第25回ITS世界会議に出席しました。数多くの自動車ショーは参加したことがあるものの、正直申せば、この会議は初めてなのである。

しかし、今回は「モビリティのサービス化」を示すMaaSに関連する案件が数多く、発表されると聞き及んで参加したことが背景にある。

さて、それにしても、ビックリ!である。当会議はITSのみならず、自動運転、環境対応、輸送ネットワークなど約200あまりのセッションが開催されたが、その中でもMaaS関連は50を超えて議論された。

会議形式は、1つのセッションが、3~4人の発表者と1人のモデレーターで開催することが多く、90分にて個々の発表や議論を行うものであり、内容の濃いものが多かった。

参加者は、企業関係者、大学の先生、それに各国や市の産業振興、都市計画などの官僚が多かったように思える。参加国は約100カ国に及び、これだけ産官学の人が集まり、MaaSに対して議論する姿は圧巻であった。

もはや、ITS関連と同じくらいセッションが多いことから、ITS世界会議というより、MaaS世界会議と独立した会議に設定しても良いのではと思ったものである。

印象に残った言葉として、発表者の一人が最後に、「MaaSはこれまで作り上げたきた世界を ”REINVENT”する」と結論づけたときである。これはMaaSの進展が、モビリティに留まらず、都市交通、都市計画までも拡大し、現在の世界を再発明するとの予見であり、思わず、ビリビリ!ときた瞬間であった。

今回の会議にて確信したことは、まもなく日本にもMaaSの大波が押し寄せてくるであろうということである。さて、我々はこれに立ち向かうことができるであろうか。

2018年8月29日 和田憲一郎のビリビリ!とくる話

交通渋滞はなくならないと思っていないだろうか

先般、中国の杭州市にて、アリクラウドの「ET都市ブレイン」を導入し、これまでの激しい交通渋滞をほぼ解消したとのニュースが流れました。

杭州市といえば、上海の南西に位置し、中国では古都と呼ばれているところです。筆者も何度か訪れたことがありますが、日本で言えば京都のような場所でしょうか。その半面、交通渋滞がひどく、あまりのクルマの多さに閉口した記憶があります。

それが、杭州市とアリクラウドが連携して「ET都市ブレイン」を導入し、AIが全ての信号と約3600台の交通監視カメラを管理してるとのこと。つまりAIが交通量と信号の点滅時間を制御して、交通渋滞をほぼ解消したようです。

さらに、交通事故が発生した場合は、救急車が迅速に走れるよう、AIが救急車が行く先々で信号が自動的にグリーンになるよう変更を行い、到達時間を半減したとか。なお、アリクラウドは中国のみならず海外でも展開予定のようです。

このような話を、本日、アカデミアの先生と話をした際、なぜ日本では出来ないのかとの議論になりました。確かに国の違いや人権の問題もあるが、日本に於ける最大のネックは行政、民間も含めて縦割り意識が強く、情報を他に渡さない風潮があるのではとの結論になりました。

確かに、例えば、高速道路では多くの走行記録が残っているにも係わらず、結局それらを活用することもなく、捨ててしまっていることが多いようです。

我々はなんとなく、渋滞などなくならないと思ってしまいがちですが、一方ではAIを活用して解消しようとしているところもあります。これまで当たり前と思っていたことが、ひっくり返される、そんな時代になっていると、思わずビリビリ!ときた次第です。

2018年7月30日 和田憲一郎のビリビリ!とくる話

日中共同による急速充電新規格について

本日リリースのコラムにも書きましたが、日中共同にて急速充電の新規格を検討しています。それも従来の50kW程度のものではなく、超高出力と呼ばれる350kW以上を目指しているようです。実現方法としては、DC充電ピンサイズの拡大や、ピンを中空にして液冷とするなど技術的革新も考えているとのこと。

確かに、昨今は空飛ぶ自動車であったり、大型EVバス、大型EVトラックなどが話題にのぼっており、よくよく考えると商品のみならず、それらへの充電はどうするのか、両輪として配慮しなければなりません。

今回の取材を通して、以前に私が携わっていたEV初期段階から、EV化が空飛ぶ自動車や、大型EVバス、大型EVトラックなど、これまでとは異なる別次元に引き上がっていく時代がきたのかと、思わずビリビリ!きてしまいました。

せっかく日中共同で新規格を作るのであれば、パートナーを増やし、世界標準となるよう目指していただきたいものです。以下にコラムを記載しますので、ご一読いただけると幸いです。

日中共同による急速充電新規格は、世界標準となるのか :
http://monoist.atmarkit.co.jp/mn/articles/1807/30/news007.html