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2024年2月19日 和田憲一郎のビリビリ!とくる話

                                             ”The time is now”
先日、スウェーデン大使館主催の持続可能な社会を目指す活動「Pioneer the possible」に参加した。今年で3回目となるサステナビリティサミットである。

なぜスウェーデンなのかと思われるかもしれないが、スウェーデンは本国のみならず、日本に於いてもカーボンニュートラルゼロを目指す活動を続けている。日本企業と協力することで、グリーントランスフォーメーション(GX)を加速することができると考え、開催を続けているようだ。

当日はスウェーデン大使館関係者を始め、約100名の来場者が参加していた。開催挨拶で、駐日スウェーデン大使のペールエリック・ヘーグベリ氏は、地球温暖化を 1.5 度に抑えるチャンスを得たいなら、今後8年間でCO2排出量を半分に削減する必要があると力説し、もうあまり時間がない、「The time is now」と各企業に行動を呼びかけた。

その後、スウェーデン発祥の日本企業や、日本から中央官庁、地方自治体、企業から発表が相次いだ。中には、商用として各社の電気自動車を活用している例もあり、使用してみてのメリットや課題なども発表された。

それにしても、在日の大使館が継続して活動を行っていることに驚かされる。それだけ、日本政府や企業は追い込まれている証左ではないだろうか。

2024年1月15日 和田憲一郎のビリビリ!とくる話

 2024年、EVシフトは踊り場を恐れるな

最初に、能登半島地震および羽田空港事故により犠牲となられた方々に心よりお悔み申し上げるとともに、被災された方々に心よりお見舞い申し上げます。

さて、昨今、EVシフトについては、ポジティブとネガティブなニュースがある。

ネガティブな面で言えば、米国に於けるBEVの販売台数が、2023年10-12月はわずか1.3%増にとどまった。また米国インフレ削減法(IRA)では、2024年1月1日から控除を受けられる車種が、2023年の43モデルから19モデルに減少した。

理由として、2024年から重要鉱物および部品に対する適用割合がそれぞれ10%引き上げられたことによる。この結果、日産リーフも対象から外れた。控除対象から外れた車種は、年々引き上げられるハードルに対し、必死に要件を満たすよう努力するであろう。

さらに、欧州委員会は2023年10月4日、中国からEUに輸入されるBEVについて、相殺関税の賦課を視野に入れた反補助金調査を開始した。今後、比亜迪(BYD)、吉利汽車、上海汽車集団の中国EV大手3社に調査員を派遣すると報じている。

このような状況から、EVシフトは曲がり角を迎えた、もしくは減退していくと考えるのは早計ではないだろうか。もし日系企業にてEVシフトへの対応をスローダウンさせようと考えるならば、挽回のチャンスを失うのではと危惧する。

これまで、EVシフトは50%UP、100%UPなどと年々大幅な伸びを示してきた。しかし、2024年はややスローダウンする、いわゆる「踊り場」の年と考えることが望ましい。踊り場とは、再上昇のための準備期間である。

証左として、ポジティブな面では、中国2023年のBEV/PHEV販売台数は950万台となり、約38%の伸長となった。2024年も好調を維持し、20%増の1150万台が予想されている。欧州での2024年のBEV/PHEV新車販売台数は20%増の300万台と予想されている。

言うまでもなく、欧州「2035年の内燃機関車の新車販売禁止」規制や、バイデン政権によるIRA法案の旗は降ろしていない。EVシフトへに対しては、短期ニュースに対して、一喜一憂することなく、どう踊り場に対応するかを考えることが望ましい年となろう。

2023年12月21日 和田憲一郎のビリビリ!とくる話

ダイハツの試験不正に思う#2

2023年5月22日のブログ「ビリビリ!とくる話」にて、ダイハツのポール側面衝突試験について述べた。

その時、「助手席の試験を実施し、運席の試験を省略して報告書を提出したのであれば、当時余程不都合なことが生じていたのではないかと推察してしまう。またこれは試験部門のみならず、設計部門、認証部門も知っていないと出来ないことであろう」と指摘した。

さらに、「今回の件は、単に部品不具合などのリコールと異なり、自動車会社の存続を揺るがすほど大きな案件となるのではないだろうか」と懸念を示していた。

12月20日第三者委員会およびダイハツが公表した「認証試験での不正は1989年(34年前)からであり、新たに25の試験項目で174個の不正行為が判明し、すべての車種で出荷を一時停止する」とは衝撃的である。

これから多くの事実が明らかとなってくるであろうが、筆者としては3つの要因があると思われる。
1.試験に対する認識の甘さ
 ダイハツは主に国内での販売であり、欧米での厳しい試験をあまり経験していない。このため、試験に対して不正をしても分らないと思ったのではないだろうか。海外で多く販売しているメーカーは、不正が発覚した際のインパクトを痛感している。

2.認証試験の位置づけに甘さ
 認証試験は、これまでに多くの事前試験を実施し、その後、改良を反映させた車両での確認であり、一発試験はあり得ない。もしこれが、報道されているように「認証は一発勝負であり、失敗は許されない」と考えているようであれば、これまで事前試験をあまり実施してこなかったのではないだろうか。開発プロセスやゲートシステムに誤りがあるとしか思えない。

3.開発責任者の権限の弱さ
 車両の開発責任者は、衝突安全性など、最も重視する項目であり、開発途中でどこまで出来ているのか、常に注視していたハズである。もし不都合が判明すれば、車両開発の中断、日程見直しなども出来たのではないだろうか。しかし、開発責任者の権限が弱ければ、経営幹部の意見に従う結果になってしまう。34年間も不正が続いていたということは、開発責任者の立場が極めて弱かったように思えてならない。

今回の不正は、ダイハツというブランドが消滅するくらい、大きくブランド価値が毀損している。もしこのまま生き残りを模索するのであれば、現在の経営陣、開発上層部を一新し、トヨタの小型車部門としてトヨタが直接経営することでない限り、生き残りは難しいと考える。

 

2023年11月20日 和田憲一郎のビリビリ!とくる話

      テスラに学び、独自の手法で実現するBYDのTMS

先般、BYD SEALに関して、私どもが主催している「一般社団法人自動車100年塾」のメンバーにて分解車両見学会を実施した。

BYD SEALはまだ日本では発売されていないが、e-Axleとして「8 in 1」 と呼ばれる8部品の統合や、電池パックと車体を一体化したCTB(Cell to Body)構造、多彩なマルチメディアを有するなど、魅力溢れるBEVとなっている。

その中で着目したのは、冷暖房をコントロールするTMS(Thermal Management System)である。筆者が見る限り、これはテスラがModel Yより採用したオクトバルブ付TMSを参考に開発したのではと思った。しかし、BYDの開発手法は、テスラのオクトバルブ付TMSを分解して、機能毎に分析し、再度、既存の技術(例えば9つの開閉弁)なども使いながら、構築しているように思えた。

おそらくBYDの技術者は、模倣するのではなく、どこまでテスラTMSに肉薄できるか悩んだのではないだろうか。その分、SEALのTMSサイズは大きくなっているが、寒冷地に於ける対応など、機能そのものは近づいたように思える。

近年、e-Axleが着目されているが、車両全体から考えると、冷暖房をコントロールするTMSをどう開発するかが、開発の上位に来るのではないだろうか。そしてTMSの良し悪しが車両の性能を決めてしまうことも多いと思う。

もっとも、自動車メーカーにとって、TMSを一新することは重い決断である。日系自動車メーカーでは最も苦手な領域と言えるかもしれない。BYDは道半ばとは言え、システムを一新してTMSでテスラに肉薄していることは、スピードと決断力の面でBYD恐るべしと思った。

2023年10月23日 和田憲一郎のビリビリ!とくる話

急速充電規格「NACS」に大切なもの

トヨタ自動車が、米テスラが採用している急速充電規格「NACS」を2025年から採用すると発表した。メディアでは、テスラによる車両データの収集を各自動車メーカーが懸念していると伝えている。しかし、筆者はもう一つ留意しなければならない点があると考える。

それは、テスラ車両とスーパーチャージャーは1対1の関係で良かった。しかし、今後北米にて多くの自動車メーカーがNACS方式を採用し、かつ今のスーパーチャージャーでは不足することから、他の急速充電器メーカーもNACS方式の急速充電器を製造するであろう。つまりn対nの関係になることを意味する。

充電時に、仕様書上はNACS規格を満足していても、充電できないなどのトラブルが発生することがある。このような時、多様なEVと急速充電の関係で最も大切なのは、相互接続性(Interoperability)である。これがうまく機能しないと信頼性を損なう。チャデモ規格では、チャデモ協議会が試験を実施し、各種急速充電器の認証を行ってきた。

今回のケースではn対nに対して、テスラが認証を行うとも考えにくいため、どうやって相互接続性(Interoperability)を担保するのか、その仕組みづくりが大切であろう。

2023年9月25日 和田憲一郎のビリビリ!とくる話

欧州大手自動車部品メーカーの業態転換に驚き

最近ほぼ毎月、欧州大手部品メーカーとお話をする機会が多いが、その変わり身の早さに驚かされる。これまで内燃機関の部品をメインに開発・製造してきたと思われるような会社も、現在はその主流をEVシフト関連部品に重点を移している。

e-Axle(モータ、インバータ、T/M等)や自動運転関連の部品でも、既に20年以上の歴史がありますというように、まるでシニセのような品揃えである。この変わり身はある意味、欧州の自動車メーカーより早いのかもしれない。

さらに、特徴的なのは、欧州の自動車メーカーのみならず、中国の大手・新興EVメーカーとも結び付きを深めていることだ。これは中国市場に参入するとともに、近年、中国メーカーが欧州で生産を拡大していることにも関連があるであろう。

ひるがえって、日系自動車部品メーカーの動きは総じて鈍い。EVシフトが来るのは、まだまだ先との考えであろうか。しかし、日系自動車メーカーは、中国での販売鈍化に伴い将来撤退するかのような動きを見せ、日系部品メーカーも足元は浮足立っている。

チャイナリスクがあるとはいえ、業態転換に遅れた日系部品メーカーは、結果的にEVシフト分野で競争力を失っていくのではないかと危惧する。

2023年8月28日 和田憲一郎のビリビリ!とくる話

ワイヤレス給電は普及への道筋がついたのか

私どもが開催している「一般社団法人自動車100年塾」では先週8月24日、米国WiTricity CorporationのVP of Business Developmentである岡田朋之様を基調講演者としてお招きした。

その中で驚かされたことの一つが、WiTricityによるCharging Systemの製造である。これまでWiTricityはワイヤレス給電に関するパテント開発をメインとし、製造に関しては自ら関与せず、他社に任せるビジネス形態を採用してきた。

しかし、ここに来て方針を転換し、自らCharging System (Wall Boxや Ground Pad)を自社開発し、他社に販売する方法に2023年から切り替えるとのこと。

ワイヤレス給電の難しいことの一つに、相互互換性(interoperability)がある。これはワイヤレス給電付き車両と、今後各地に設置予定の充電インフラであるCharging Systemの互換性をどう保つかということである。

筆者が自動車メーカー時代に着手したワイヤレス給電開発でも、これが難題となり、解決の糸口は見つけられなかった。

しかし、2019年にWiTricityがQualcomm Haloを買収して、世界共通化を図った結果、今ではIEC、ISO、SAEなどの標準・規格を取得し、世界に於ける事実上のデファクトとなったようだ。

今後Charging Systemを世界的に広げようとすると、まだまだ課題はあると思われるが、規格争いで角を突き合わせることなく、初期から拡大だけに専念することが出来ることは歓迎すべきことである。

2023年7月24日 和田憲一郎のビリビリとくる話

中国の新エネルギー車購入喚起策に注目

中国国家発展改革委員会は7月21日、「新エネルギー車に関する購入喚起策」を公表した。国家発展改革委員会が発表したことから着目したものの、一般的な発表に比べて意外なのである。

今回の公表では、10項目の購入喚起策を挙げているものの、具体的な数値や目標は一切掲げていない。あくまで概念、項目だけなのである。

そして、なぜここで公表かと考えると、不動産不況が報道される中、中国経済の底上げと、先般、テスラなどを含む中国自動車メーカー16社が過当競争を避けることで合意したことへの政府支援ではないかと思われる。

この中には2.ガソリン車の段階的廃止加速や、4.新エネルギー車の充電インフラ促進なども含まれている。具体的にどのような政策が示されるのか、今後も注視していきたい。

発表された10項目は以下のとおり。
1.地方政府に対し年間自動車購入枠の拡大を奨励
2.ガソリン車の段階的廃止加速(乗用車、商用車含む)
3.中古車市場の開拓促進
4.新エネルギー車の充電インフラ促進
 充電システムのインテリジェント化、電池交換ステーションの拡充
5.新エネルギー車の充電に対する農村部の送電網向上
6.新エネルギー車の購入・利用コスト削減
7.公共部門における新エネルギー車の調達拡大
8.自動車消費のための金融サービスの強化
9.自動車メーカーに対する経済的かつ実用的なモデル開発を奨励
10.駐車場に関する供給スペース、立地環境の改善

<新エネルギー車に関する購入喚起策:原文>
https://www.ndrc.gov.cn/xxgk/zcfb/tz/202307/t20230721_1358538.html

2023年6月26日 和田憲一郎のビリビリ!とくる話

 GM、Fordによる急速充電規格変更に思う

今年6月上旬より、Fordおよび、GMがこれまで採用してきた急速充電規格であるコンバインド充電システム(以下CCS:Combined Charging System)から、テスラが採用する北米充電標準規格(以下NACS:North AmericanCharging Standard)に2024年より変更すると公表した。

最近は新興自動車メーカーのリビアン・オートモーティブまでもNACSに変更すると公表している。なぜ突然2つの巨大自動車メーカーが変更を申し出たのであろうか。両社ともその理由については明確にしていないが、推論として筆者の見解を述べてみたい。

過去を遡れば、急速充電規格が定まったのは約13年前である。日本発のCHAdeMO、中国のGB/Tに対抗する規格として、欧州主導にて米国がCCS1、欧州CCS2という規格が生まれた。急速充電プラグの中に普通充電口を内包したことから、CCS1とCCS2では形状が異なっている。

当時は、CCS規格に対して法規・規格部門を中心に立案されたが、今回の急激な方針変更は両社の営業、品質部門が起点ではないかと考える。

主な要因はおそらく2つと考える
1.CCS規格の信頼性に課題、さらにメンテナンスの弱さ
米国にてCCS1が設置されているものの、CCS規格の信頼性に課題があり、設置機器の故障率の多さにGM、Fordは危機を感じたのではないだろうか。以前よりCCS陣営に改善を申し入れていたものの、一向に改善されないことに嫌気を感じたと思われる。(米国ニュース報道によれば、カリフォルニア大学バークレー校の研究者がサンフランシスコのベイエリアにある675台のCCS急速充電器をチェックしたところ、ほぼ4分の1が機能していないことが判明したとある)

2.使い勝手でNACSに軍配
ユーザーエクスペリエンスの調査に於いても、NACSのほうが軽くて、小型化で、使い易いとの結果が出ていた。形状は見たら一目瞭然である。

今回の件で、北米はNACSが事実上の標準である「デファクトスタンダード」となるであろう。課題は欧州である。「少なくともCCSを設置」と欧州にて規定されているものの、米国にてCCS規格に対して不安が増したため、欧州でもCCSで本当に大丈夫なのかと議論が起こるであろう。

なお、中国では国家規格GB/Tとして制定されており、日本はCHAdeMO規格が95%以上もあることから、国・地域によっては既に固まっている場合、変更はない。しかし、日系自動車メーカーは各地でEVを販売することから、地域にあった充電規格に変更する必要が出てくる。

2023年5月22日 和田憲一郎のビリビリ!とくる話

ダイハツのポール側面衝突試験不正に思う

ダイハツが5月19日に発表した衝突安全に関する不正行為(ダイハツ・ロッキー、
トヨタ・ライズHEV車のポール側面衝突試験)に本当に驚かされた。

衝突試験は、地域・国によって多くの種別がある。前突試験、側突試験、ポール側突試験、後突頚部傷害保護試験、歩行者保護性能試験など多様である。

筆者もEV開発の前は内装設計を担当していたため、側突、特にポール側突試験は最も難しい衝突試験の一つであると認識していた。

国土交通省が定めるポール側突試験は、直径254mmの半球状の柱に、スピード32km/hにて、車体を75度に傾けて実施するものである。車両ダミー(MDB:移動台車)の側突試験に比べて、局所的に衝撃が加わることから、ボデー構造(サイドシル、ルーフ)、ドア内部の構造、サイドエアバッグ、天井のカーテンエアバッグなど、複雑な要素が絡み合う。

このため、設計段階からCAEを駆使して検討を行うとともに、試作車両などを用いた実車衝突試験では、社内基準(法規よりマージンを取った値)を満足することができるのか否か、設計・試験部門とも検討していく。

もし、今回説明のように、助手席の試験を実施し、運席の試験を省略して報告書を提出したのであれば、当時余程不都合なことが生じていたのではないかと推察してしまう。またこれは試験部門のみならず、設計部門、認証部門も知っていないと出来ないことであろう。

車両についていえば、助手席と運席はレイアウトが必ずしも同一でないこともあり、どちらかと言えば、ステアリングなどがある運席側が厳しい。

真因は判らないが、ダイハツは米国、欧州での販売からほぼ撤退しており、米国(NHTSA、IIHS)、欧州(Euro NCAP)など厳しい法規制に対して、実施する必要がなく、国内の衝突試験自体を軽んじていたようにも思えてならない。

今回の件は、単に部品不具合などのリコールと異なり、自動車会社の存続を揺るがすほど大きな案件となるのではないだろうか。事態の推移を見守りたい。