2021年

2021年11月15日 和田憲一郎のビリビリ!とくる話

設計にも美しさが必要では

 先週、私共が主催する「一般社団法人自動車100年塾」にて、VW ID.3の分解・視察ツアーを開催した。緊急事態宣言が解除されたこともあり、昨年より多くの方々にご参加いただき感謝申し上げたい。

 さて、筆者の勝手な持論であるが、かねがね優れた商品には設計も美しさが必要であると思っている。クルマでいえば、エクステリア/インテリアのみならず、パワートレインなどの設計に対してもである。

 今回のVW ID.3はどうだろうかと視察したが、結論から言えば、それとはほど遠いものであった。バッテリーパックのレイアウトや、インバータなどパワエレ部品のレイアウトおよび内部構造など、大きく、重く、込み入っていて、思わずう~んと唸ってしまったのである。言葉は悪いが、設計的には「まだまだこなれていない」なと。

 昨年のテスラモデル3視察では、洗練された設計を見てきただけに、余計にそう感じたのかもしれない。ID.3はVWが本格的にEVシリーズとして開発したクルマであり、多くの制約の中で、エンジン屋さんが悪戦苦闘しながら、なんとかEVを設計したのではないかと想像した。

 しかし、VWの実力はこんなものではなく、次のID.4は大きく向上していると思われる。VWがいかにEVメーカーとして脱皮していくのか、楽しみに待ちたいと思う。

2021年10月25日 和田憲一郎のビリビリ!とくる話

EV用電池メーカーの戦略的育成が急務

 先週から、海外でのEVに関するニュースが相次いでいる。ロイターは、アップルがEV電池調達で、CATLおよびBYDとの協議が不調に終わったと伝えた。筆者の記憶でも半年以上前からの協議ではなかったかと思われる。代替えとしてパナソニックの名前も挙がっているとか。

 また、台湾の鴻海(ホンハイ)は、EV試作車3種類を公開した。裕隆汽車製造(ユーロン)と共同で設立した新会社「鴻華先進科技」が車両開発し、MIHと呼ばれる1000社を超えるサプライヤーと協力して開発を進めるとのこと。

 しかしである。どんな大きなメーカーや壮大なビジネス構想であっても、EV用電池供給先が定まらなければ開発・生産が出来ない。車両開発の前に、電池メーカーの選定と仕様決定、それに伴う投資判断が先となる。これらから推測するに、アップル、鴻海ともまともなEVを作るには相当の時間を要するのではないだろうか。

 実は日本も同様である。2020年のEV/PHEVの販売台数は、新車販売台数のわずか0.6%である。これを大幅に引き上げようとすると、廉価で大量にEV用リチウムイオン電池を開発・生産できることが必須となる。

 残念ながら、現在の日本には、パナソニックも含めて、そこまで電池を供給できるメーカーが存在しない。政府はグリーン成長戦略の一環として、「2035年までに新車販売で電動車100%を実現する」ことを掲げている。その実現のためには、国内のEV用電池メーカーの戦略的育成、もしくは合従連衡が喫緊の課題のように思われる。

2021年9月21日 和田憲一郎のビリビリ!とくる話

 EVバッテリー交換方式が一つのジャンルとして形成

 最近、普通充電器や急速充電などの充電インフラについてよく聞かれる。しかし、それとは別にEVバッテリー交換方式も一部では普及拡大している。昨年末、中国にてNIOやEVトラックにて採用が多くなっているとの情報があったが、改めて調べてみると、乗用車ではNIOのみならず、大手の北汽新能源なども採用している。

 さらに採用が急増しているのがEVトラックである。大型バッテリー(2mx2mx1m)を運転席と助手席の背面に設置し、クレーンで容易に交換できる構造としている。これまでは、ルートが決まっているEVトラック(例えば、鉱石が産出する山間部と港など)に対して、バッテリー交換方式が採用されてきた。最近では、その採用が北汽福田、上汽依維柯紅岩、華菱などトラックメーカー5~6社に拡大している。既に実績は1万台を超えているようだ。

 理由として、まず第一に車両価格の安さが挙げられる。バッテリーレス価格で販売するため、大型バッテリー搭載車両と比較すると価格差が大きい。トラック事業者はバッテリー交換費用のみを支払えば済むこととなる。

 また、EVトラック用のバッテリーは急速充電でも2~3時間と長い時間を要するが、バッテリー交換方式はわずか5分程度で可能となる。このため、EVトラックが走行するルートに、バッテリー交換ステーションを2~3カ所設置するだけで対応可能である。これは超急速充電規格ChaoJiにとっても脅威であろう。

 そして、バッテリー交換方式を可能にしているのが、電池を供給する世界最大の電池メーカーであるCATLの存在があるようだ。CATLがトラックメーカーを集め、バッテリーサイズ、取り付け方法など、EVバッテリー交換に必要な要件を標準化して進めたとのこと。

 今後、EVトラックが全てバッテリー交換方式となることはないが、中国のようにルートが決まったところを、ほぼ毎日走行するトラックなどは採用が増加し、バッテリー交換方式が一つのジャンルとして形成していくと思われる。

 残念ながら、日本にはそのような電池メーカーもなく、同じルートを走るトラックも少ないことから、実現性は乏しい。

2021年8月16日 和田憲一郎のビリビリ!とくる話

デジャヴな米国自動車業界

現在、米国の自動車メーカー、ディーラーが空前の活況を呈しているとのこと。発端は半導体不足である。携帯やゲーム機器などに限らず、汎用品の多い自動車業界にも半導体不足の影響が及び、減産を余儀なくされている。これは日系自動車メーカーも同様である。

それにともない、販売可能なクルマが一気に少なくなってきた。いわゆる玉不足である。こうなると、日本とは商慣行が異なるためか、売り手市場となり、自動車メーカーはこれまで支払っていた値引きのためのインセンティブを廃止し、ディーラーは値引きではなく、通常価格にエクストラ料金を上乗せして販売し始めた。

いわゆる自動車メーカー、ディーラー丸儲けの構造である。以前にも、好評なクルマではこのような現象が幾度かあったが、今回はほぼ全般に及んでいることに違いがある。

しかし、ちょっと待って欲しい。米国自動車業界は2016年の1755万台をピークにここ5~6年は長期低落傾向が続き、自動車メーカー、ディーラーとも苦しんできた。これは人口が微増しているにも係わらず、ライドシェアなどを利用し、自動車を購入する人が減ったことなども影響していると思われれる。

今回の祭り(半導体不足)の後は、高値で買ったクルマと、中古車価格の落差などギャップに苦しむのではないだろうか。どこでも、祭りの後は寂しさがともなうが、はたして米国自動車業界はどうであろうか。

2021年7月19日 和田憲一郎のビリビリ!とくる話

織り込み済みのメーカーとサプライズのメーカー

欧州委員会は7月14日、ガソリン車など内燃機関の新車販売について、2035年に禁止する包括案を公表した。

これに対して驚かれた方も多いと思う。また欧州自動車工業会は「特定の技術を禁止することは合理的でない」と表明し反発している。

しかし、筆者から見ると、欧州委員会は、法案提出権を持つ実質の行政執行機関であり、このような重要法案に対して、事前に水面下で欧州連合理事会や、各国の市民代表である欧州議会に対して根回しをし、ほぼ法案通過の見込みがついたこと、また包括案の準備が整ったことから、公表に踏み切ったとみることが妥当ではないだろうか。

つまり欧州委員会は数か月前から事前交渉していたのであり、欧州自動車工業会はガソリン車業界に配慮して反発のポーズをみせているものの、VWなど大手自動車メーカーに表立った動きはない。本案は既に織り込み済みなのである。

ひるがえって、日系自動車メーカーはニュースに驚き、戦略の見直しを迫られている。欧州環境規制は、環境への配慮の面と、地域への戦略的な産業振興という面もある。包括案にて規制の前倒し競争は終止符が打たれ、一気にEV化が加速していくと思われる。

2021年6月28日 和田憲一郎のビリビリ!とくる話

 Tesla『シルクロード』スーパーチャージャー・ルート

最近驚いたことの一つに、Teslaが構築した『シルクロード』スーパーチャージャー・ルートがある。

これは、5000kmにおよぶシルクロードに、27か所のスーパーチャージャーを設置し、移動可能にしたとのこと。

歴史的ランドマークであるシルクロードに、中国でもなく、ドイツでもなく、米国の自動車メーカーが最初に設置したことで、その構想力や実行力に驚かされた。

計画ではこれに留まらず、最終的には上海からロンドンまでスーパーチャージャーを繋ぎ、『マルコポーロ』スーパーチャージャー・ルートを完成させるとのこと。

1200年代後半、マルコポーロが24年かけて旅をし、「東方見聞録」を完成させた道を、今度は現代人がクルマ(EV)で旅することができるのであろうか。なんとも夢のある話である。

Tesla China silk road PV
https://www.youtube.com/watch?v=A8UZhpifmfc

2021年5月17日 和田憲一郎のビリビリ!とくる話

 街作りやプラント作りにはプロセス開示も大切では

インターネットの発達により、COVID-19環境下でも、海外の街作りやプラント建設状況が公開されており、日本に於いても見ることができる事例が多くなってきました。

例えば、2018年末に訪問した北京南西に位置する新都市の雄安新区では、当時は地域全体の計画を示す展示場しかありませんでしたが、現在では巨大な雄安駅や、無数のオフィス・住居ビルが次々と建設されています。

また、プラントでは、テスラの独ギガベルリンや、米国ギガオースティンなどもリアルタイムではありませんが、かなりの頻度で状況公開しています。

ということは、これらの街作りやプラント建設は、単に進捗状況を知らせるだけでなく、投資家や、今後ここで働くことになる多数の人々にイメージをもってもらうことも目的としているのではないでしょうか。また言うまでもなくファンづくりの意味もあります。

ひるがえって、日本では何か新しい街づくりやプラント建設があったとしても、完成まで公開することはほとんどありません。静岡に建設中のトヨタWoven Cityなども同様です。

ここ数年、日本が他に後れを取ってきていることと、このように情報公開をためらい、殻に閉じこもっている考え方が影響しているように思えてなりません。

ご参考に、代表的な事例を2つ紹介します。

雄安新区:
https://www.youtube.com/watch?v=qqfoa98yQN4&t=276s

Tesla Giga Berlin:
https://www.youtube.com/watch?v=dM3C1Ay7qzs

2021年4月21日 和田憲一郎のビリビリ!とくる話

欧州発によるPHEVの終わりの始まりか

 実は、4月17日ロイターの報道に驚かされました。グリーンファイナンスに関するEU規則草案にて、2025年以降メーカーがPHEVを「サステナブル投資」に分類することを禁じるため、投資意欲を減退させる可能性があると報じたものです。

 まだ草案段階にも係わらず、これを報道することに驚かされるとともに、もし実現するとPHEVにとっては致命的になると思ったからです。

 欧州自動車メーカーは反発しているものの、2028年までの欧州製造計画では、EVが86車種製造される予定であるのに対し、PHEVはわずか28車種に減っているとのこと。現在、販売比率が50:50であることを考えれば、欧州自動車メーカーは草案を見通して、既に軸足をPHEVからEVに移しているようにも見えます。

 思い返せば、昨年9月に米加州のニューサム知事が、2035年に州内で販売される新型車は「ゼロエミッション車」を義務づけると発表した時、これで多くのガソリンスタンドが廃業となることから、結果的にPHEVも減るのではと思いました。

 しかし、それは米国の話であり、欧州ではまだ大丈夫との思いがあったのですが、まさかCO2規制やLCAではなく、サステナブル投資にてPHEVが規制の対象になるとは予想もしませんでした。まさに、欧州発によるPHEVの終わりの始まりなのでしょうか。

 欧州の動きを受けて、中国はもともとPHEV比率が少ないことから、NEVのPHEVクレジットを下げるなど、PHEVの価値(ポジション)を下げるかもしれません。

 日本では、これからPHEVだと思っている自動車メーカーもあると思いますが、世界は想像以上のスピードで動きつつあり、必死にくらいついていかないと生き残れないような気がします。

2021年3月22日 和田憲一郎のビリビリ!とくる話

米国のEVに対する新政策

 EVに関する報道が多いので、日頃それほど驚かないが、先日、米国上院議員で院内総務を務めるチャック・シューマー氏が、メディアのインタビューで明らかにしたことに驚かされたので、少し紹介したい。

 骨子は、バイデン政権にて、エンジンからバッテリーへの動力源の転換を目的とした「Cash for Clunkers 2.0」が実施されるかもしれないとのこと。”Clunkers”とはとはポンコツ車を意味するもので、2009年には既に
「Cash for Clunkers」(燃費の悪い旧式車から低燃費車への買替補助制度)が行われた実績を持つ。

 大きな柱は以下3つのようだ。
・EVの購入者に現在適用されている税控除額は7500ドル(約81万6000円)を上回る。
・内燃エンジンの製造を段階的に取りやめ、EVを生産するために工場や施設を
 改修する企業に、170億ドル(約1兆8500億円)を支給する案を盛り込む。
・充電インフラに450億ドル(約4兆9000億円)を投資する。

 まだ未確定のためか、それほど大きな記事ではなかったものの、上院議員で院内総務を務めるシューマー氏が言い始めることで現実味を持つ。トランプ政権とは異なり、一気にEV化を推し進めようとする政権としての意気込みであろうか。それにしても、掛け声だけの日本はどうするのだろうか。

2021年2月15日 和田憲一郎のビリビリ!とくる話

アップルカーの条件

 アップルが販売する、いわゆるアップルカーについて、話題のためか、意見を求められる機会が多い。筆者は当事者でないので、真偽は不明であるが、もし2024年~2025年に販売しようとすれば、少なくとも本年度中に相手先を決め、取り掛かる必要があるように思えてならない。

 そのため、もし筆者がアップル自動車事業の責任者だった場合、どのような条件を考えるのか、彼らの頭の中を想像してみた。

 まず、アップルはクルマに関して、調査・研究はしているものの、実際にクルマを開発・製造したことはない。このため、iPhoneのように、自社開発し、製造はEMS大手の鴻海精密工業(フォックスコン)などに製造委託するという訳にはいかない。

 つまり、候補となる自動車メーカーは製造委託というより、ある意味、共同開発のパートナーとして扱う必要があるのではないだろうか。その場合、ジョブシェアや責任範囲など、調整に相当時間を要すると推察される。

 では、候補自動車メーカーを考える時、どのような条件を設定するのであろうか。筆者は少なくとも下記3つの項目は必須と考える。

1.EVに関する量産経験を有すること
 これはとても大切である。アップルは初年度でも10万台、数年後にはテスラに匹敵する年間50万台以上を想定しているであろう。そのため、少量しか生産経験がない自動車メーカーでは、経験不足とみるのが妥当ではないだろうか。

2.自動運転で数多くの知見・経験を有すること
 アップルは当初は完全自動運転でないにしても、将来は自動運転を視野に入れていると思われる。その場合、アップルが元自動車エンジニアを集めて調査・研究していても、やはりクルマとしての挙動など、どうしても自動車メーカーとのタイアップが必要となる。そのため、自動運転に関する知見・経験があることを求めるのではないだろうか。これは自動車メーカーとの共同開発エリアになろう。

3.電池供給を自らの判断でコントロールできること
 実はこれが最も重要かもしれない。アップルはモノ作りは自ら手掛けないため、電池メーカーからの供給を受けるであろう。しかし、EV化が急激に進展するにつれ、世界的にどの電池メーカーも余裕がなくなってきている。

 つまり、優先的に電池を確保し、コスト的にも安価で抑えようとすれば、自動車メーカーにて電池ボリューム、価格をコントロール出来ることが望ましい。そう見渡すと、例えば、自動車メーカーでありながら、元々電池メーカーであったり、電池部門を社内カンパニーとして内包していたが、現在は外部に出して独立させているところもある。いずれも自ら電池生産ボリュームをコントロール可能とみるべきであろう。

 このように考えると、世界中で候補となる企業は限定されるのではないだろうか。ただし、これはアップルの思惑だけで決まるものではなく、候補企業の考え方にもより、これからどのような選択となっていくのか、楽しみである。

2021年1月18日 和田憲一郎のビリビリ!とくる話

日本型スマートシティの未来とは

 最近、スマートシティについてたびたび聞かれる。しかし、聞かれるたびに、特に日本型スマートシティは「なんだかなぁ・・・」と思ってしまうのである。

 世界中でスマートシティと呼ばれるプロジェクトは40以上と言われている。有名なところでは、中国の北京南西に位置する「雄安新区」であろう。また米国オハイオ州コロンバス市は全米のスマートシティコンテストに優勝し、一躍有名となった。

 コロンバス市は訪問したことがないが、雄安新区は以前に訪問したことがある。当時は展示場など数か所の建物だけであったが、最近のニュースによれば、雄安新区駅もほぼ完成し、駅のプラットホームは高鉄(日本の新幹線)路線が約20本もあるとか。上海虹橋駅並みの巨大な駅である。

 さて、筆者が思うスマートシティは、最初に都市計画と都市交通がセットで計画されるべきと思っている。雄安新区などは、都市計画のグランドデザインを描いた上で、空港、高鉄、高速道路、地下鉄など、最新の都市交通システムを載せている。

 とろこが、日本で進めるスマートシティは、土地の狭さもあるのかもしれないが、そのようなことはほとんど反映されていない。静岡で進める「Woven City」でも、あくまで実証試験都市という位置づけのためか、そこにたどり着く都市交通は配慮されず、域内で運行するモビリティ、IoT、MaaSなどが検討されているのみである。

 他のスマートシティ、例えば、東京港区竹芝地区で進めるスマートシティも、浜松町の駅が隣接するためか、IoT、ビッグデータ、ネットワークの拡張に主眼が置かれている。

 結局、日本で行っているものは、スマートシティというより、スマートタウン、町内という意味でのスマートブロック、もしくはスマートビルに留まっているように思えてならない。冒頭「なんだかなぁ」とつぶやいたのはその理由である。

 日本でも過去に大きな都市創造は行われた。例えば、長岡京から、平安京への遷都である。長岡京が設立10年で度々の水害にみまわれ、急遽、東側に平安京を遷都実施した。中国長安をモデルに設計され、条坊制(いわゆる碁盤目状)を本格的に施行したことは有名である。

 このように考えると、各地に複数のスマートシティ実証試験都市として創るよりも、東京付近ではなく、少し離れたところに、人口20~30万人程度が住める都市構想をぶち上げてはどうだろうか。

 地方は疲弊しており、活性化も含めて、実際に日本型スマートシティをリアルワールドとして創ることで、見えてくる課題や未来形もあるのでないだろうか。