2019年

2019年12月12日 和田憲一郎のビリビリ!とくる話

自動運転時代の道路システムレベルは?

 12月8日開催の日中省エネルギー・環境総合フォーラムに出席した。この会合は東京と 北京で毎年交互に開催されるものである。基調講演のあとに開催された「自動車の電動化・ スマート化分科会」にて、中国側からの講演者内容ではっとしたことがあり紹介したい。

 中国側の講演者は、清華大学の趙福全教授である。趙教授は清華大学だけでなく、 国際自動車技術会連盟会長も務めており、中国の自動車に関する識者の一人である。

 その趙教授が、自動運転はSAEを基準に、レベル0からレベル5まで定義されているが、 同様に道路システムも自動運転に対応して、レベルの設定が必要ではないかと説いた。 確かに、日本ではクルマのレベルばかり議論されており、道路レベルの設定については 議論したり聞いたことがない。思わずビリビリ!ときた瞬間であった。

 趙教授によれば、中国では道路システムをI0(低)からI5(高)まで6段階にレベル設定 しており、実証試験をする際には、車両のレベルに対応しながら進めているとのこと。

 講演後に個人的にお話を聞くと、自動運転はクルマのみならず、道路システム、交通システム などの都市づくりと合わせて考え実行しなればならず、それは各自治体の協力如何にかかっていると解説された。なるほどクルマのみならず、日本も考えたいアイデアである。

2019年11月11日 和田憲一郎のビリビリ!とくる話

 OK Boomer!

 最近ニュースを見ていて、一番笑ったのがこの言葉であろうか。

 ご存じない方のために少し紹介すると、ニュージーランド議会で、25才の 議員クロエ・スウォーブリックさんが気候変動について説明していた。 演説では、何十年も前から気候変動問題を認識していながら、政治的駆け引きに 終始してきた世界の首脳らの対応を批判した。「私の世代、そして私に続く世代には、 もうそんな余裕はないのです。2050年には私は56歳になります。そして、 この第52回議会の平均年齢は49歳です」と続けた。

 その時、議会にいたおじさんからヤジが飛んだが、彼女は平然と「OK Boomer!」 の一言で軽く受け流し、何事もなかったように演説を続けたのである。 OK Boomer!は、SNS「TikTok」を通じて流行しており、「ベビーブーマー」と 呼ばれる年配のおじさんやおばさんの、無自覚さや上から目線の態度をからかう言葉 として流行しているとのこと。

 ちなみに「ベビーブーマー」世代とは現在の55~73才を示し、それ以下では、 「ジェネレーションX」(39~54才)、ミレニアル(23~38才)と呼ぶそうである。 日本でも、若い人から「OK Boomer!」と呼ばれる人が続出するのであろうか。 おっと私も気をつけないと・・・。

https://www.youtube.com/watch?v=OxJsPXrEqCI

2019年10月11日 和田憲一郎のビリビリ!とくる話

吉野先生、ノーベル化学賞おめでとうございます!

 思い返せば、吉野先生のお名前を聞いたのは、2005年に私が突然、電気自動車の開発責任者に任命されたときからでした。任命されたものの、電気自動車のコア部品であるリチウムイオン電池のことは全くわからず、吉野先生の書籍を購入するとともに、講演会があると聞けば、幾度となく出掛けていきお話を聞いたものです。

 また、講演会の終了後には、素人の質問にも関わらず、懇切丁寧に教えていただいたことを昨日のように思い出します。当時は、携帯電話用のリチウムイオン電池は出来ていたものの、電気自動車用の大型リチウムイオン電池はまだなく、各社が開発にしのぎを削っている段階でした。しかし、その時も、吉野先生の開発実績が全てのベースになっていたように思えます。

 日本にもこのようなすごい人がいるのだなと驚くとともに、当時からノーベル賞間違いなしと言われておりました。しかし一方では、ノーベル賞はアカデミアの人が多いことから、民間研究所出身の方は 難しいのではとも言われておりました。それから約15年、今回ノーベル化学賞を受賞されたことは、本当に素晴らしく心からお祝い申し上げます。

 なお、吉野先生が日本にてリチウムイオン電池を開発したにもかかわらず、最近では リチウムイオン電池および電気自動車とも、中国や他国に主導権が奪われています。 先達の栄光だけでは続かないことを身にしみて感じているこの頃です。

2019年9月10日 和田憲一郎のビリビリ!とくる話

 クルマのLCA規制について

 最近、欧州にて2030年にCO2排出量を評価する手法として、LCA(Life Cycle Assessment) 規制が検討されていることが話題となっている。LCAをご存じない方のために若干補足すると、 LCAはクルマであれば、エネルギーの生成過程、部品の製造過程、自動車の生産、 ユーザーの走行距離、廃棄、それに再利用まで、まさにクルマの上流から下流まで 全ての工程にてCO2を算出し、評価する手法である。

 私はこれを聞いて、別に反対はしないが「なんだかなぁ?!」と思ってしまったのである。 というのは、自動車メーカーに務めていた時、電気自動車のLCAを算出しようと試みたときがあった。 しかし、当時どれだけ分析してみても、なかなか確信が得られなかったのである。

 たとえば、電力構成は国によって異なる。もしくは他国から購入している場合もある。 自動車部品は、ほとんどの自動車メーカーが要求仕様図にて依頼しており、要求仕様を満たせば、 どの国で生産してもかまわない。 実際、最初は日本で生産していたが、途中から中国へ、その後ベトナム、タイ、カンボジアなどに 移設することは多々ある。そのような時、製造過程でどれくらいCO2を排出していたのか 把握することは極めて難しい。

 さらに、算出したLCAに対して5%削減しようとした場合、誰がその削減の責任を持つのであろうか。 おそらく参加者は勝手に、電力会社だ、部品メーカーだ、自動車メーカーだ、ユーザーだ、廃棄業者 などと言い出し、収拾がつかないであろう。極端なことを言えば、計算をやり直すことで、5%ぐらい 変動することは簡単である。

 このように、対象範囲が広く、関連企業が多くなればなるほど、誰も責任を取らないシステムがはたして有効なのかと思ってしまう。関連する全ての企業がブロックチェーンによりデータを 紐付けできるのであれば可能かもしれないが、中小企業、海外生産も考えると、それも 現実的でないと思えてしまう。やはり、なんだかなぁと思ってしまうのである。

2019年8月20日 和田憲一郎のビリビリ!とくる話

東京モーターショー、コンセプトの見直しが必要では!?

 第46回東京モーターショーは、10月24日~11月4日まで開催予定となっている。 しかし、最近の報道によれば、海外主要自動車メーカーは、メルセデス・ベンツ、 スマート、ルノーのみとのこと。 これではとても国際自動車モーターショーと言えず、国内モーターショーの位置になってしまう。 モーターショーが不振なのは東京に限らず、シカゴ、パリ、ジュネーブ、フランクフルトなど、 これまで盛況であった自動車ショーが軒並みローカルモーターショーになりつつある。

 理由はいろいろあるが、多くの人がクルマを購入から利用へとシフトしていることや、 クルマそのものの魅力、他社との違いなどが少なくなってきたこともあるであろう。 筆者の勝手な考えかもしれないが、1954年から65年間続けてきた東京モーターショーも そろそろ衣替えの時期に来ているのではないだろうか。

 その場合、もし「ショー」というものを今後も継続するのであれば、自動車のみならず、 サービスとして幅を広げることも一案であろう。XaaSと言われるものは、MaaS、IaaS、 SaaS、PaaS、DaaSなど、ほとんどAからZまであると言われている。

 これまでの慣習にとらわれず、モビリティ、XaaS、IoTなどの総合フォーラムを企画する ぐらい変貌しなければ、2021年には消滅してしまうのではないかと危惧する。 自動車は100年に一度の大変革期と言われるが、同様にモーターショーも大変革を求められている、 その時期ではないだろうか。

2019年7月29日 和田憲一郎のビリビリ!とくる話

荒天の予感と、中国のNEV修正案にビックリ!

 先週、三菱自動車工業、日産自動車、さらにはダイムラーなどの2019年第1四半期 決算発表があった。いずれも営業利益が大幅減少している。ダイムラーは排ガス対策 などで1600億円の赤字となったようだ。予想されていたとはいえ、かなりビックリ した方も多かったのではないだろうか。まさに荒天の予感である。

 そのような中、中国政府は2021~2023年までのNEV規制修正案を発表した。 これまで確定していた2019年、2020年に対して、多くの要素を変更する案である。 筆者が最もインパクトが大きいと思ったのは、新エネ車のクレジット変更である。

 これまで、例えば走行距離200kmのEVであれば、3.2クレジット/台得ることが出来たが、 今回の改訂では1.6クレジット/台と半減している。 PHEVは2割減少、FCVも半減しており、このような車両1台あたりの突然のクレジット変更は 自動車メーカーの企画担当者や開発担当者のやる気を一気に削ぐような気がしてならない。 年もまたぐと、クルマの価値が半減してしまうようなものである。

 NEV比率は2021年(14%)、2022年(16%)、2023年(18%)とこれまで同様に2%上昇を 提案しており、もし新エネ車の普及拡大を意図するのであれば、このレベルを上げても 良かったのではないかとも思える。 中国の自動車販売台数は今年上半期で対前年比12%減となっているが、一方、新エネ車は 53%増で推移している。

 何か政策担当者は、新エネ車の伸び率をどうすべきか迷いがあっての 提案のように見受ける。NEV修正案は8月9日までに意見を受け付けるとのことであり、 今後、年末の決定まで激しい議論が続くのではないだろうか。

2019年6月5日 和田憲一郎のビリビリ!とくる話

中国の貴州省訪問でビックリ!

 先週、中国の貴州省を訪問する機会がありました。中国の貴州省は重慶市や四川省の 南部に位置し、山が多く、中国の中でも最も貧しい省と言われてきました。 しかし、2014年に貴州省の貴安新区が中国唯一の「ビッグデータ新区」として 指定されると、急激に風向きが変わります。

 今では経済成長率が中国でも常に ベスト3に入るようになり、最も発展が著しい地域となってきました。 今回訪問の目的も「中国国際ビッグデータ産業博覧会」が開催されたことから、 展示会や関連設備を視察するためです。

 訪問して驚かされたことが大きく2つあります。 一つは、貴安新区には中国最大規模のデータセンターが多数設置されています。工事中で あったテンセントやファーウェイのデータセンターは、巨大な山を買い占め、その中腹に 多数のトンネルを掘り、中に数万台のサーバーが設置できるようにしています。 これは貴安新区が高原地帯のため、夏冬通して涼しく安定していること。また山岳地帯 で水が豊富であることや、カルスト地形で地震が少ないことなど、地の利を生かしたものです。

 このため、冷暖房のエネルギーは不要で、ファンによる送風だけで冷却しています。 日本のデータセンターとは比べものにならないくらい、巨大でかつ省エネルギーなデータセンター に驚かされました。

 2つ目は、ビッグデータを扱う「データサイエンティスト」の緊急育成システムです。 ビッグデータを集めても、それを分析し、切り分ける、いわゆるデータの料理人がいないと 話になりません。 このため、貴安新区では「大学城 双創園」を作り、省内12大学のデータ関係学部を集め、 18万人の学生・教員により「データサイエンティスト」を緊急育成するシステムを創っている とのこと。

 日本でも長崎大学にて学生130人を集め、データサイエンティストを育成する学部を新設する動きが報道されましたが、まさに桁違いの活動が既に行われています。

 スイスの有力ビジネススクールIMDの調査による「2019年の世界競争力ランキング」では、 日本はビッグデータの活用で調査国最下位と報道されました。今回訪問で、大規模な 取り組みを既に実行に移している姿を見て、ビリビリ!ときた次第です。

2019年5月15日 和田憲一郎のビリビリ!とくる話

CATLは中国の技術と生産設備で

 私どもが主催している一般社団法人 自動車100年塾のワークショップは、昨日 第17回目となり、基調講演には、新エネ車用電池で世界最大となったCATL (Contemporary Amperex Technology Co., Ltd.,寧徳時代新能源科技)の 日本法人 取締役社長である多田直純様を迎えました。

 基調講演で印象的だったのは、CATLがTDKの子会社ATLからスピンアウトし、その後 2011年に設立されたことから、私自身は、日本の電池技術や日本の生産設備を使用して いるのかと思っておりました。しかし、創業8年目にして技術者が約5,000人となり、 全て自前の技術開発をしているとのこと。

 さらに、生産設備もセルオーダー後18ヶ月で完成・評価まで行うため、全て中国製の生産設備を 用いており、日本メーカーから設備導入の要望があるものの、スピードについていけないため 参入できていないとのことでした。

 想像を超えた展開に、まさにビリビリ!ときた瞬間でした。他にも多くの気づきがありましたが、 2019年に50GWhを越える生産能力となり、2024年には300GWh以上を目指す企業に対し、 日系自動車メーカー、日系電池メーカーはどう対応すべきなのか考えさせられた講演となりました。

 スピードにスピードで対抗するのか、はたまた異なる方向性を目指すのか、戦略の見直しを 迫られること必須だと思った次第です。

2019年4月25日 和田憲一郎のビリビリ!とくる話

多くの人は、見たいと欲する現実しか見ていない

 上海モーターショーから戻ってまいりました。今回の上海モーターショーを見て 真っ先に思い浮かんだのが冒頭の言葉です。 ご存知かもしれませんが、塩野七生さんが「ローマ人の物語」にて紹介し有名になりました。 古代ローマ帝国を築いたユリウス・カエサルの言葉として伝えられています。

 今回の上海モーターショーは、私なりにエポックメイキングなショーであったと思っています。 これほど数多くの量産車のEV・PHEV、さらに2年以内に上市となりそうな多数の コンセプトカーが展示されたことは過去になかったかと思います。 特に、中国大手自動車メーカー、中国新興メーカーによる斬新な切り口のEV投入、 ドイツ勢による、これまでとは打って変わった怒涛のEV・PHEV展示が印象的でした。

 ひるがえって、日系自動車メーカーといえば、一部にEV・PHEVを展示するものの、 その多くは既販車の展示でした。そのような状況の中で、日系自動車メーカー幹部、および 開発責任者は何を思ったのでしょうか。 冒頭の言葉ではありませんが、もし自分の都合の良いように物事を見て、見たくない現実 から目を背けて報告するなら、上層部は判断を見誤るのではないでしょうか。

 今回一番ビリビリ!きたこと。それは日系自動車メーカーが2年前の上海モーターショーと 比べて、あまり代わり映えしないと思ったのは私だけでしょうか。

2019年3月15日 和田憲一郎のビリビリ!とくる話

多産多死を許容する社会だろうか

 先週、中国浙江省の杭州を訪問し、数多くのスタートアップやベンチャー企業と 交流する機会を得ました。それにしても驚いたことがあります。杭州には多くの スタートアップがあるのですが、それに対し国や省が巨大なビル施設を準備し、 彼らはその中で活動を行っていることが多いのです。

 IoT、FinTech、AI、VR、ヘルスケア、バイオなど、ざっと訪問しただけでも、 それぞれが100から200のグループがあり、浙江省全体では1000を超えるスタート アップが活動しているのではないでしょうか。 昨年訪問した深センもそうでしたが、昨今の中国では、まるで「虎の穴」のように、 数多くのスタートアップが寝る間も惜しんで、新規ビジネス開発に取り組んでいます。

 ということは、中国政府からみると、数万のスタートアップがあっても、その中で、 アリババやテンセントのように、幾つか優れた企業が出てくればそれで良い。スタート アップは多産多死であることを前提に、許容する社会や国としての考え方で 取り組んでいるように思えます。

 なお、AIやVR向けビルを訪問した隣に、まだ実用化されていないにも係わらず、 隣に5G専用の巨大なスタートアップ用ビルがほぼ完成間近となっていました。もう 巨大な投資をしているのかと思うと、思わずビリビリ!と来てしまった次第です。 チャレンジしない日本、しにくい日本との差が広がっていくように思えます。

2019年2月18日 和田憲一郎のビリビリ!とくる話

ワイヤレス給電に関するワイトリシティとクアルコム

 電気自動車関係者にとって、興味深いニュースが2019年2月11日に流れました。 米ワイトリシティ(WiTricity)が米クアルコム(Qualcomn)のEV/PHEV向け ワイヤレス給電事業「Qualcomn Halo」を買収すると発表したことです。

 これについては、以前から噂になっていましたが、いよいよ現実になったようです。 あまりご存じない方のために紹介すると、ワイトリシティとクアルコムは近年 ワイヤレス給電の国際規格化で激しい争いを続けていました。各陣営とも自動車メーカー、 部品メーカーも巻き込み、さながらVHS vs.ベータのような様相でした。

 筆者は以前に、米国ボストンのハーバード大学西側に位置するワイトリシティを 訪問したことがあります。ワイトリシティはMITから技術者がスピンアウトして独立した ベンチャー企業であり、ワイヤレス給電の原理原則の開発、ロイヤリティビジネスを メインとしています。会議室や廊下には、それまで取得したパテントが所狭しと掲げられて おり、あまりの多さに驚かされたものです。

 一方、クアルコムは、元々ワイヤレス給電装置のチップビジネスを狙っており、自社では ワイヤレス給電機器は作らないと表明していましたが、ニュージーランド大学の研究者が 開発した「HaloIPT」を買収したあたりから、心変わりしたように思っていました。 今回の買収では、ワイトリシティが技術やライセンス権、1500件に及ぶパテントも全て 譲り受けるとのことで、これでEV/PHEVのワイヤレス給電規格争いにも終止符が打たれ、 普及に弾みがつくのではないかと思われます。

 筆者の勝手な考えでは、新エネ車の伸展が著しい中国からワイヤレス給電が普及すると 見ており、第14次5か年計画(2021年~2025年)には、充電インフラ国家目標に、 ワイヤレス給電数も盛り込まれるのではないでしょうか。

 電気自動車を開発していた頃、ワイトリシティのワイヤレス給電試作機を見て驚いた 経験があり、いよいよ実用段階を迎えるのかと思うと、感慨深いものがあります。

2019年1月21日 和田憲一郎のビリビリ!とくる話

パナソニックはフリーハンドを失った!

2019年1月20日の日経朝刊を見て、えっ!と驚かされました。トヨタとパナソニックが共同にて2020年を目処にEV用電池会社を設立するとのこと。

私の正直な感想を言えば「パナソニック、やっちまった!」と思ったのです。もしパナソニックの関係者の方がいれば、勝手なこと言って申し訳ありません。

というのは、私自身の考え方として、新エネルギー車の基幹部品を作る部品メーカーで最も重要なことは、独自性を保つことではないかと思っているからです。つまり、ビジネス的に繋がりはあるけれど、どの自動車メーカーにも属さず、フリーハンドで対応することが大切ではないかと。これは電池に限らず、モーター、インバーターでも 同様です。

もちろん、自動車メーカーと合弁会社を作れば、供給先が確保されるため、ビジネスは安定します。これは自動車メーカーも同様でしょう。しかし、他の自動車メーカーからみれば、その合弁企業とは、新車の仕様や将来展開などが漏れる懸念があるため、新規に取引を開始することを躊躇するのではないでしょうか。

今回の場合、パナソニックは、元々、日本ートヨタ、米国ーテスラ、中国ーテスラ(仮)+地場企業というように、三極に分けてコントロールしており、さすがと思っていました。しかし、今回の報道では、テスラ以外にはこの新会社を通して電池を供給するとのこと。

これは、せっかく松下幸之助さんの時代から、中国で良い評判を築き上げ、日本企業と言えども信頼の高いパナソニックに対して、日日連合であれば風圧が高まるのではないでしょうか。

収益面での懸念もあります。一般的に、自動車メーカーと電池メーカーとの合弁新会社は、利益を出さない、むしろ出させない「コストセンター」の位置づけにあります。利益が多く出るならもっと安く供給せよと自動車メーカーは迫るでしょう。

そう考えると、今回の件はトヨタに利があるものの、パナソニックは失うものが多いように感じてしまうのです。詳細は公表されておりませんが、悪手とならないことを祈るばかりです。