2020年

2020年10月7日 和田憲一郎のビリビリ!とくる話

クルマが先か、インフラが先か

 最近、燃料電池車(以下FCV)の将来性について聞かれることが多い。背景には、米国で二コラという会社が、FCVトラックを開発し売り出しそうとしているだとか、中国にてFCV開発企業に奨励金を出すなど、状況を気にしている人が多いようだ。

 しかし、ガソリン車と違って、EVやFCVはクルマ単独のスタンドアローンでは済まない。EVが出現した時も、クルマが先か、充電インフラが先かの議論があった。当時は、いくら試作車を見せても、充電インフラ企業はなかなか投資に踏み切れず、結果として日本では、クルマが先、インフラが後となった。もしくは自動車メーカーが自ら設置していった。

 一方、欧州などでは、i-MiEVやLeafが発売されたことを見て、充電インフラに関する年次計画を立て、インフラが先、クルマは後とした国が多かったように思える。

 さて、冒頭の話であるが、筆者は、FCVに関して、日本のみならず海外の国々でも、クルマうんぬんより、水素ステーションのインフラが先でないと発展しないのではないかと伝えている。というのは、EVであれば、家でも充電できるが、FCVでは水素ステーションがないと、どうにもならない。また経路充電(充填)のように、移動ルートにピンポイントにあっても不十分であろう。

 もし日本で普及させるためには、現在のように100箇所あまりではなく、例えば、EV向けのチャデモ式急速充電器が現在約8000基あることを考えると、少なくともその半分、4000基程度を2030年ぐらいまでに設置することが必要ではないだろうか。

 問題は、それを誰が設置し、どのようにして事業として運営し続けられるかであろう。筆者の勝手な考えでは、これもFCVを販売する自動車メーカーの領域のように思えてならない。

2020年9月14日 和田憲一郎のビリビリ!とくる話

もはやEVビジネスは資金力が決め手か

 報道によれば、米国ベンチャー企業のルーシッドモーターズが2021年にもEVセダン「エア」を発売するようだ。それほど有名ではなかったが、近年、モデルSで開発を指揮したピーター・ローリンソン氏をCEOに迎えて、開発を加速してとのこと。

 以前に幾度か、日本で新型EVを開発する場合、ベンチャー企業であれば、どれくらいの技術者と開発費が必要かと問われたことがあった。その時、あくまで、うどんで例えれば、素うどんレベルのEVで良ければ、技術者100人、開発費200億円と答えていた。

 なぜ日本でEVベンチャー企業が育たないのかと良く聞かれるが、日本では出資を募っても、10億円~20億円レベルがせいぜいであろう。しかし、これでは数ヶ月で使い切ってしまう。結果として、クルマは完成しない。日本でも、EVを開発してみたいと相談に来る人がいるが、技術者や開発資金についてそのように説明している。

 時代は変わり、最近のEVはパワートレインだけでなく、自動運転やIoTとの連携も必要となってきた。テスラのモデル3レベルのEVを開発するとなると、素うどんではなく、鍋焼きうどんレベルとなる。そして、EVベンチャーとして成功するためには、技術者500人、開発費1000億円以上を揃える必要があるように思う。

 今回のルーシッドも、どうやって開発費を捻出したのかと思っていたら、サウジアラビア系のファンドから10億ドル超の出資を受けているとのこと。さもありなんである。

 最近のEVはますます高度化しており、開始前に資金や高度な技術者をどうやって集めるかが鍵となる。このため、自動車メーカーを除いて、ベンチャー企業で存続出来るのは、ファンド、エンジェルなど巨額の資金が集まり、かつ高度技術者が募集しやすい米国と、政府系支援が受けられる中国に限られるのではないかと思ってしまう。もはやEV開発はそんな時代になったのであろうか。

2020年8月17日 和田憲一郎のビリビリ!とくる話

内部の視点、外部の視点

 COVID-19の影響により、世界各国で自動車産業が低迷しており、日本もその例にもれない。また、各国の自動車関係者も渡航が禁止されており、フラストレーションがたまる状況ではないだろうか。

 そのような中、8月に入って、中国や欧州から日本の自動車産業の現状や将来動向に関する問い合わせが複数届いている。この時期、なぜかと改めて考えてみると、自分の中では、中国、米国、欧州に比べて、日本の自動車産業はそれほど大きくない位置づけである。東京モーターショーにも、ドイツメーカー以外はほとんど参加していない。

 しかし、新車販売台数を国別でみると、2019年は、中国、米国についで第3位である。その後に、ドイツ、インド、ブラジル、フランスなどが続く。

 少子高齢化が進む日本であるが、海外からはまだ世界第3位の新車販売台数国である。言うまでもなく、海外での生産車両も多い。このため、特に日本の市場動向や技術動向に関して、まだまだ耳目を集めているのではないだろうか。

 COVID-19にて、日本の自動車産業は燦々たる状況にあるが、一方、海外は日本がどのように復活しようとしているのか、見つめていることも忘れてはならない気がする。外部の視点からは、まだまだ期待している声があるからであろう。

2020年7月20日 和田憲一郎のビリビリ!とくる話

今、日産新型EV「アリア」発表の意味とは

 日産自動車は先週の7月15日、オンライン(Youtubeも配信)による新型クロスオーバーEV「アリア」の新車発表会を行った。昨年の東京モーターショーでもコンセプトカーが展示されていたので、「あれっ、もうなの?」と思ったものである。

 しかし、聞いてみると発売は2021年半ばからとのこと。発表から発売まで1年もあることに驚かされた。一般的に、自動車会社はあまり早く新型車を発表することはリスクを伴う。デザインの陳腐化や、車両のスペック・新技術の内容をある程度公開せざるをえないからである。

 そのため、出来る限り発表と発売を近づけようとする。但し例外もある。量産型EVである三菱「i-MiEV」や日産「リーフ」の場合、早くから発表して、かつ発売時期を公表していた。というのも、EVという知名度を高めるとともに、これまでにない充電インフラ(普通充電、急速充電)の準備を進めるため、多くの企業の支援や期間が必要であったからである。

 しかし、既に充電インフラがほぼ整った現在、日産がこのように早く発表したのは、お家の事情があるのではないだろうか。前期の大赤字、また今期も新型コロナの影響で経営環境が厳しくなる中、花火を打ち上げて、世の中にアピールするとともに、日産社内、取引先に対しても、日産の意気込みを示す必要性に迫られてのことだと推定する。

 発売1年前ということは、まだ試作車段階のレベルであろう。開発目標(コスト、重量、電費、航続距離、冷暖房時の熱損失、各部品の信頼性など)は高く、かつ新機能がてんこ盛りため、達成度の多くは未達と思われる。

 そして、これから量産に向けて各部を詰めれば詰めるほど、マイナスの要素が増えてくる。またコスト・重量と、要求機能の向上など、二律背反なども増えてくるであろう。

 しかし、自動車会社は、失った信頼は、新しいクルマで取り返すしかない。今回、経営陣も不退転の決意で発表しており、開発陣も死にものぐるいで対応しているのではないだろうか。筆者の経験でも、二律背反は、新たなアイデアや小さな改良の積み重ねにより乗り越えられることも多い。

 新型EV「アリア」が、全世界の自動車会社からみて、「これこそ第二世代のEVだ、お手本だ!」と思えるようなクルマに、ぜひとも育てていただきたいと願わずにはいられない。

2020年6月22日 和田憲一郎のビリビリ!とくる話

ChaoJi(チャオジ)に中国は本気だ!

 先週金曜日の6月19日、「日中合同による次世代超高出力充電規格に関するイベント」に出席した。これは中国電力事業者連合会とチャデモ協議会が、日中共同にて開発中の次世代超高出力充電規格(プロジェクトコード:ChaoJi/チャオジ:中国語で超級)に関して、ChaoJi白書およびCHAdeMO3.0の発行を記念して行ったものである。

 当日は、新型コロナの影響も反映して、日中間によるオンライン発表であった。それにしても驚かされたのが、中国側は主催者である中国電力事業者連合会だけでなく、中国最大の電力会社である国家電網の幹部も多数参加して、意見を発表されており、このChaoJiに対する並々ならぬ意気込みが感じられた。

 なぜここまで気合が入っているのかと考えた時、背景としては以下であろう。現在、世界の急速充電規格は主に5つに分類される。日本発で国際規格となった「CHAdeMO」規格、このCHAdeMOと類似した中国の「GB/T 20234.3」規格、欧米にて採用が進む「CCS(Combined Charging System)」規格、ルノーなどが推奨しているAC急速充電規格、最後に米Tesla社が設定した「Supercharger」規格である。

 そして、今回のChaoJiは、日中だけでなく、他の規格もChaoJiにハーモナイズする可能性があるからではないだろうか。中国にとっては、名前を中国語で超級とつけた経緯もあり、将来の世界統一規格を意識して、関係者の熱い思いとなったのではないかと思われる。

 日本にとっても、ChaoJiが拡大する市場は、おそらく中国が多いであろし、ビジネスチャンスとして日中共同開発にて進める価値は高いように感じた。

2020年5月25日 和田憲一郎のビリビリ!とくる話

米国大手レンタカー会社の破綻

 新型コロナの影響により、多くの企業が苦境に陥っているが、5月23日米国大手レンタカー会社「ハーツ・グローバル・ホールディングズ」(通称Herts)が米連邦破産法11条の適用を申請し、経営破綻となったことには驚かされた。報道によれば、米政府支援も得られなかったとのこと。

 筆者は、Herts #1Club Goldメンバーだったこともあり、米国出張時によく利用したものである。筆者の印象では、他のAVIS、Alamo、Budgetなどと比較して、若干高いものの、車種が豊富であり、サービスも迅速で、高評価していた。

 特に空港に着いた後、Hertsの巡回バスに乗ると、自分のカードを見せるだけで、借りた車両番号がバス内に表示され、Herts駐車場に着くと、その番号に行けば既にクルマのキーと借用書が置いてあり、そのままパーキングでチェックを受けるだけで、外に出て行けるなど本当に便利であった。

 実は、自動車会社から見れば、Hertsのようなレンタカー会社はとても重要であり、フリート車と呼び、市場で売れない場合、もしくは売れ残ってしまったクルマを大量に流す受け皿の役割を担っていた。しかし、今回Hertsが破綻し、他のレンタカー会社も同様であろうから、自動車会社にとっては、受け皿がなくなり、経営的に販売不況とともにダブルで苦境に陥ると思われる。

 IATA(国際航空運送協会)によれば、国際線の需要回復は2024年になるとの見通しも出ており、レンタカー会社、自動車会社も当面我慢の時期が続くのではないか。

2020年4月20日 和田憲一郎のビリビリ!とくる話

コラムと映画のシンクロニシティ

 長年あたためていた内容を、4月17日にアイティメディアより「電気自動車とはいったい何なのか、今もつながるテスラとエジソンの因縁」(下記参照)というタイトルにてコラム寄稿しました。

 これは、ニコラ・テスラとトーマス・エジソンによる、電力システムは交流か直流かという、いわゆる「電流戦争」の題材を扱ったものであり、ニコラ・テスラが現在の電気自動車に多大な貢献と影響力を及ぼしていることを書いたものでした。

 しかし、なんという偶然でしょうか。最近知ったのですが、二人の電流戦争については、ちかじか映画の公開があるのです。元々、映画そのものは2017年秋に収録されたものの、創業者がセクハラで訴えられるなどの騒動があり、再度一部を撮り直して、米国では2019年10月に「THE CURRENT WAR」というタイトルで公開されました。

 日本では2020年4月公開予定だったのですが、新型コロナのため、現在延期となっています。映画ではエジソンvs.テスラではなく、エジソンvs.ウェスティングハウスとなっている点も面白いところです。テスラでは、あまり馴染みがないと思われたのかもしれません。

 おそらく、今の状況では6月頃でしょうか。電気自動車および電力関係者にとっては見逃せない映画となりそうです。

<ご参考>
映画:エジソンズ・ゲーム
https://edisons-game.jp/

アイティメディアコラム:
電気自動車とはいったい何なのか、今もつながるテスラとエジソンの因縁
https://monoist.atmarkit.co.jp/mn/articles/2004/17/news007.html

2020年3月18日 和田憲一郎のビリビリ!とくる話

黄州寒食詩巻(こうしゅうかんしょくしかん)

 7年前より書道を習っており、日本で最大規模の書道展である第82回謙慎書道会展に出品したところ、初めて「褒状」をいただいた。ちなみに、謙慎書道会展では、下から「入選」「褒状」「秀逸」となっており、その上は少数の「特選謙慎賞」や「推薦顧問賞」がある。昨年入選だったため、一つ上がった結果となった。

 先生から無謀だと言われながらも書いたテーマは、蘇東坡(そとうば)の「黄州寒食詩巻」の一部である。ご存じない方のために少し紹介すると、蘇東坡は宋時代の著名な政治家・詩人・書家であり、人生の中で、時の政権と意見が合わず、幾度も左遷や追放の身となった経験を持つ。

 そのような中にあっても、希望を失わず、明るく、持ち前のエネルギーにて、数多くの優れた書を書いたようだ。「黄州寒食詩巻」も、1082年、黄州(現在の湖北省黄岡県)に左遷された時に書いたものであり、逆境の中、秘めたる闘志が発露したと言われている。

 考えてみると、テーマ選定時は、新型コロナウィルス発生前であり、まさか現在のような状況になるとは夢にも思わなかった。しかし、蘇東坡の如く、どんな逆境にあってもくじけず、勇気をもって立ち向かうことが必要であり、今の状況に相応しいのではないだろうか。

 第82回謙慎書道会展は、新型コロナの影響により中止となり、作品の完成形を見ることは出来なかったが、気を取り直して、改めてチャレンジしたい。

ご参考:蘇東坡の黄州寒食詩巻
http://y-tagi.art.coocan.jp/411.htm

2020年2月25日 和田憲一郎のビリビリ!とくる話

 山川異域 風月同天

 新型コロナウィルスはまだまだ収まる気配はないが、日本から中国に支援した物資に書いてあった言葉が、中国でたいへん話題になっているようだ。

 「山川異域 風月同天」という言葉であり、意味は「別の場所に暮らしていても、自然の風物はつながっている」とのこと。

 この言葉は、約1300年前に、大和朝廷の長屋王が中国・唐代の高僧、鑑真和上宛に送った1000着の袈裟の一部に刺繍された言葉であり、ぜひとも日本に来て仏教を教えていただきたいと願ったとのこと。

 これに感動した鑑真和上は、日本に行くことを決心した。しかし、5度の渡航を試みるも失敗し、ついには失明してしまう。それでも諦めずに、6度目にして成功して、日本の地にたどり着き、仏教を広めるきっかけとなったようだ。

 これに関して思い出すのが、ちょうど1年半前に国立新美術館にて開催された、「生誕110年 東山魁夷展」である。東山魁夷氏は、1971年に唐招提寺から鑑真和上の像を安置する御影堂障壁画を製作するように依頼され、熟考の末、それを引き受けた。展示会には、その後10年に渡って製作した数々の壁画が飾ってあった。

 解説によれば、東山魁夷氏は壁画を受諾後、数千枚に及ぶ下絵を描き構想を練ったとのこと。そして、設置場のレイアウトはよく計画されており、鑑真和上の御厨子を取り囲むように、出身地である揚州、渡航の間に滞在した桂林、そして中国を代表する黄山の絵が描かれている。これ以外にも、失明のためかなわなかったが、鑑真和上が見たかったであろう日本の海や山の数々の風景画が描かれていた。

 考えてみると、鑑真和上は艱難辛苦の末、6年の歳月を経て来日した。また時代は違えども日本を代表する東山魁夷氏が10年の歳月をかけて鑑真和上の像を安置する御影堂障壁画を製作している。まさに歴史は繋がっていると思わずにはいられない。

 知性あふれる先達、そして8文字かもしれないが、時空を超える漢字の力強さを改めて知った次第である。

ご参考:
https://www.afpbb.com/articles/-/3266316

2020年1月20日 和田憲一郎のビリビリ!とくる話

自動運転の冗長性は?

 先週、東京ビッグサイトと青海展示棟にて開催されたオートモーティブワールド2020に参加して、はっとしたことがある。

 自動運転関係ブースの方と話をしていて、自動運転の制御システムに於いても冗長性が必要になるのではとの話になった。

 冗長性とは、ある部品や制御が壊れても、別の部品や制御にて対応できるように、最初から二重、三重の対策を講じておき、信頼性を高める方法である。

 それで思い出すのが、筆者が電気自動車の量産開発に着手した際、これまでのガソリン車とは異なることから、航空機で採用されている冗長性を詳しく検討したことがあった。

 言うまでもなく、航空機はトラブルがあっても、最悪の事態を避けるため、電源、油圧、制御系など、ありとあらゆるところに多重の冗長性が配慮されている。

 さて、自動運転車の場合、実証試験段階ではそれほどではないが、実際に量産車を考え始めると、ソフト・ハードともどこまで冗長性を考えるか、相当悩むのではないだろうか。

 冗長性を多用すればするほど、部品点数、制御は複雑となり、レイアウト成立性やシステム開発が難しくなっていく。また自動運転車のコストも大幅に上がっていく。いよいよそのような段階に来たのだろうかと、思わずビリビリ!きた次第である。