2015年10月19日 和田憲一郎のビリビリ!とくる話

2015年10月19日 和田憲一郎のビリビリ!とくる話

 「潮目が変わったのか!」

 年初めに、しばらくは燃料電池車(以下FCV)の話題が続くが、秋口からは流れが変わり、電気自動車/プラグインハイブリッド車(以下EV/PHEV)に話題の中心が移るのではと予想しました。これを聞いた多くの人は、当時毎日のようにFCVがメディアを賑わしていたこともあり、半信半疑だったようです。

 それを考えた背景として、多くの要素がEV/PHEV関連で同時進行しており、これが出現するのが2017~2018年であること。そして、一気に流れが変わる閾値(Tipping Point)がその時に来るのではと見立てを行いました。

 そして、2017年の東京モーターショーでは、既に量産車が出てくることを考えるとコンセプトカーを出すのは今年の東京モーターショーでないかと予測したのです。まさに、クルマの出現時期から逆算してトレンドの動きを予想しました。

 ところが、思いもよらぬことから変化が生まれました。VW問題です。
排ガス不正問題で窮地に立たされたVWが、ご承知のように、環境対応車をディーゼルから、一気に電気に軸足を移すと表明しました。(2015/10/13)

 これに堰を切ったかのように、連日関連する報道がありました。
まさに何か連動しているのではと「ビリビリ!」と思った次第です。

・トヨタ・・・2050年グローバル新車平均走行時CO2排出量を90%削減。
       つまり2050年までにガソリン車をゼロにする。(2015/10/14)

・ボルボ・・・今後発売する全てのクルマにPHEVモデルを準備するとともに、
       2019年までにEVの販売を開始する。(2015/10/16)

・ホンダ・・・今後のエコカーはPHVを主体に考える。(2015/10/17)

 それにしても、ここに来てなぜ急激にEV/PHEVに傾斜し始めたのでしょうか。
複数の要因があると思いますが、私の見立てとしては主に3つです。

1.自動運転技術の導入が早まりそうなこと
 無人、完全な自動運転のレベル4はまだまだ無理としても、半自動運転であるレベル3への技術開発が進んでいます。このレベルでは、運転責任はあくまでドライバーにありますが、ある一定条件下であれば、自動運転が可能な
 ところまで技術が進んでいます。そして、いよいよ法整備、保険など付帯条件の分野にまで検討が進み始めました。

 その時、EV/PHEVなどの電動車両がないと、せっかく機器を開発しても、載せるクルマがないというこになりかねません。

2.ガソリン車の収益に陰りが見えてきたこと
 円安にて一服ついていた日系自動車メーカーも、来期は減益予想となるところが複数出てきています。また中国の減速で大きなダメージを負っているドイツ、米国、韓国の自動車メーカーも同様の状態となっています。
 
 このような状況を打破し、他社との競争に打ち勝つためにも、いち早く次世代のパワートレインに切り替える必要性が出てきたのではないでしょうか。なお、ハイブリッドでは新鮮味もなく、その役目は難しいように思えます。

3.次世代電池(エネルギー密度向上、全固体電池の導入)への目途が立ち始めたこと
 電池は、要素技術が生まれてから量産化まで、一声10年と言われます。2009年にi-MiEVが生まれてからはや6年が経過しました。2017~2018年を想定すると、既に各社からアナウンスされているとおり、300kmを走行可能とする電池など、次世代電池の登場が近づいているように思えます。

 また、2020年頃には、リチウムイオン電池の弱点であった有機系電解液を、不燃の電解質に変えた全固体電池が登場するかもしれません。

 ただ、残念なことは、このような状況に於いても、まだどの方向に進むか躊躇している日系自動車メーカーも多いように思えます。そうしている間に、ガソリン車で勝負できた市場でも、テスラなどの米国ベンチャー企業やドイツ自動車メーカーに市場を奪われていくのではと危惧します。

 「急激な構造変化の時代にあっては、生き残れるのは、自ら変革の担い手、チェンジリーダーとなる者だけである」とはP.F.ドラッカーの名言ですが、まだ先頭に立とうとしない今の自動車メーカーに、この言葉が当てはまるのではないでしょうか。

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